蓮舫議員の二重国籍問題について

二重国籍問題で話題となり、民進党の党首となった蓮舫議員は、私が共産党支持を止めるきっかけともなった政治家である。民主党が政権を獲った2009年の冬、事業仕分けが大きな話題となったが、科学技術の予算まで削減する内容に驚いた。それまで政治には無関心であったが、この事業仕分けをきっかけに反民主党になり、政治ニュースに関心を持つようになった。

民主党への批判は、事業仕分けで中心的な役割を果した蓮舫議員への嫌悪につながった。「二番ではダメですか」という発言に非常に不快なものを感じたのだ。それ以来、いろいろと政治のことを考えるようになり、最終的には共産党シンパを止めてネット右翼に転向したのだった。

この時、蓮舫議員の父親が台湾人であることは知っていたが、それは全く問題ではなかった。事業仕分けを不愉快に感じた多くの国民も同様であろう。帰化人であるか、親の片方が外国人であるかとは関係なく、あくまで政治的主張に関する不同意により蓮舫議員を支持しない。そのような人が大半であったはずだ。

彼女の二重国籍疑惑が騒がれた時、マスコミの擁護は徹底していて、最初は「二重国籍状態であるはずがない」、次に「台湾は国でないから問題ない」、そして彼女の嘘が明白になってくると、「この問題で騒ぐのは差別主義者」とまで来て、ついには「二重国籍で何が悪い」まで到着してしまった。

私もこの疑惑が報じられた当初は、「二重国籍状態であるはずがない」という感想だった。しかし次々と破綻する蓮舫議員の主張から二重国籍であった事が明確となった。当然、それは問題視すべき事態なのだが、マスコミや左翼陣営は「差別主義者」やら「排他的」あるいは「ヘイト」など、問題をすり代えて逃げ切ろうとした。

さて、国の三権は、その名が示す通り国の権力機関である。特に行政府の場合、大臣ともなれば一般国民が有しない巨大な権限を保有する。実態は官僚が全てコントロールしているのかもしれないが、それでも法律の執行機関の長として、大臣は様々な権限を行使する。法務大臣ともなれば死刑執行にサインをする事も、しない事もできる。外国人に特別に滞在許可を与える事も可能だ。外務大臣などは公約に無いような約束を外国政府と交わす事もある。それぞれの大臣が、様々な許認可を一般国民あるいは外国企業に与え、または与えない。

国家権力を乱用した挙句、実は別の国の国籍も持っていました、といって他国の国民として守られるような事が許されて良いわけはない。ペルーのフジモリ元大統領はペルー国大統領としての権限を最大限に行使し独裁的な政治を行なったが、日本国籍を保有しているという理由で、一般の日本国民同様に日本国政府から庇護されたのだった。

政治家が他国の国籍を保有して良いわけはなのだが、そもそも日本は二重国籍を認めておらず、それは一般国民も同様だ。一部、海外に移民した日本人には特別に日本のパスポートも与えているし、日本の国籍を取得しても事情によって元の国籍離脱が出来ない事態ということも有り得るが、それは例外として認められてているに過ぎない。

蓮舫議員が国会議員でありながら、また大臣も務めながら二重国籍状態を放置していたとあれば、本来は議員辞職に値する大不祥事である。選挙における経歴詐称という問題もあるが、その場しのぎの発言で二重国籍疑惑をかわしてきた蓮舫議員の姿勢も政治家として大きな問題だ。しかしマスコミは問題を日本社会の閉鎖性やら排他性やら、あるいは純血主義やらの問題にすりかえ、蓮舫議員に対する批判を封殺しようとしている。

不思議なのは自民党であり、この問題を不問とする姿勢が見られる。台湾国籍というのは中国共産党との関係もあって政治的に話題とするのが難しいからだろうか。フジモリ元大統領を保護したのは保守派の人達である事が関係しているのだろうか。

今回の騒動が起きる以前は、蓮舫が台湾人だった、という事を問題とする者はいなかった。私もそうだし、多くの保守派の評論家もそうだ。日本国籍を取得したのだから日本人で当然だからだ。ネットで騒ぐ連中もいたかもしれないし、元台湾人であるからダメという主張をする人達もあったかもしれないが、極めて少数の意見であった事は間違いない。一方、民進党の政策や蓮舫の党首としての発言、そしてマスコミの論調から判断すると、実は故意に二重国籍状態を放置し、外国人でも日本の政治に介入可能な状態を目指しているのではないかという戦略が見えてくる。

この問題は、民進党党首の過去における経歴問題ではなく、現在進行中の、日本への間接侵略が進みつつあるという問題なのである。

二重国籍者だったフジモリ元ペルー大統領

アルベルト・フジモリ氏は3度もペルーの大統領に選出された日系人で、2009年に禁固25年の刑を言い渡され、現在服役中である。1990年の大統領就任から2000年11月に日本に亡命するまでの10年間、ペルーにおいて治安回復と経済発展という優れた実績を残してきた。

フジモリ元大統領は、2000年の三期目開始直後の汚職疑惑で立場が急速に悪化し、訪問先の日本からFAXで大統領の辞任を表明し、そのまま日本に滞在。亡命生活をおくる事になった。

その際に話題となったのが、フジモリ元大統領の二重国籍問題である。何と、ペルー大統領に3度も選出されながら、日本国籍を保有していたのである。ペルーでは二重国籍自体は認められているが、二重国籍の者は大統領になる資格はない。例外的に、ペルーを植民地としていたスペインとの二重国籍保有者は認められるが、日本の国籍を有するペルー国民は大統領にはなれない。

この二重国籍の話にペルー国民は驚愕し、そして呆れた。当時の私も憤りを感じたニュースだった。法を執行する最高責任者としてペルーの大統領を2期と少々努めておきながら、不正疑惑で身の危険を感じると実は日本国籍も持っていました、という理屈で日本に滞在するとは、卑怯で恥知らずであり、日系人の評判を貶めるものである。私は今もそう思っている。

例えフジモリ氏の日本国籍が正当なものであったとしても、ペルー大統領として10年間も政治権力の座にあった人物である以上、ペルーの法に従うべく速やかに帰国すべきであったのだ。どうしても不当逮捕の危険性があると言うなら、日本国籍を理由にするのではなく、政治亡命という形にすべきであった。

ある国で政治家としての権限を行使してきた人物が、法律上の身の危険があるからという理由でもう一つの祖国に簡単に逃げるような事を許してはならない。もちろん、独裁者からの弾圧から逃れるという意味での亡命は有り得るが、二重国籍を隠蔽しておく理由にはならない。

現在、フジモリ氏は79歳で、まだ刑務所の中におり、刑期が終了する時には95歳になる。罪状は軍特殊部隊が25人の民間人を殺害した事件に関与した事であるが、本人はそれを否定している。ひょっとしたら冤罪という可能性もあるが、大統領の任期中、独裁的な傾向で権力を行使してきた事も確かである。

フジモリ元大統領の登場により、国内テロと国内経済の低迷というペルーの構造的な問題が劇的に解決されたという功績は歴史に残すべきだろう。しかし同時に、二重国籍を隠して大統領の職に就き、様々な国家権力を利用した挙句、実は日本国籍も持っていましたなどと言って、日本国内で日本国民として5年間も保護されていたという点は、政治家として恥ずべき事であると、私は思うのである。