悪夢の戦争シナリオ〜鮮韓中露 vs 日本

朝鮮半島危機が継続しているが、戦争は起きず話し合いの解決となる可能性が最も高い。主要なプレーヤーは誰も戦争を望んでいないからだ。

半島危機の勝者は北朝鮮

しかし戦争というのは意図せず発生してしまう事もあり、様々なシナリオを想定した準備を怠るべきではない。

そのうち、今日紹介するのは北朝鮮が勝利するシナリオだ。

米朝戦争が勃発した場合、北朝鮮は国家消滅するというのが大方の見込みで、事実そうであろう。しかし場合によっては北朝鮮が勝利するシナリオもある。それは、北朝鮮が中露を味方につけ、韓国に中立もしくは北朝鮮寄りの立場を取らせた上で日本を攻撃する場合である。

北朝鮮が韓国を無視して日本を攻撃した場合、特に首都圏を攻撃した場合にはアメリカのレッドラインを超えるため、即座に北朝鮮が消滅するというのが一般的な予想である。しかし、このシナリオでは中露の動向を無視している。

日本の首都圏が北朝鮮の攻撃を受け多数の死者が出た場合、中国が火事場泥棒として尖閣を奪取しようとする事は間違いない。日本が混乱している時こそチャンスであるからだ。ロシアも同様であり、2011年東北地震の際にロシア空軍が活発に活動したように、日本周辺で軍事行動を起こす可能性が高いだろう。

中共が画策する多正面作戦に日本は対応できるのか

そうすると、同盟国アメリカの行動も決断を迫られる事になる。

日本は当然、中国の侵略に対抗する事になるが、アメリカとしては北朝鮮と中国を同時に敵にまわす行動は避けたい。ロシアとも紛争は避けるべきだ。結果として中露による日本侵略は容認したまま北朝鮮を潰す事になる。

このままだと北朝鮮の敗北(そして日本も)として終了するシナリオであるが、日本の被害の程度や韓国の動向次第では米国が身動き取れなくなる可能性もある。

韓国人の多くは日本での被害を歓迎するだろう。北朝鮮が、真の敵は日米であり韓国ではないと宣伝し、実際に日本だけを攻撃した場合、北と南の臨時同盟が成立するかもしれない。在韓米軍がそれを阻止するかもしれないが、蝙蝠外交が得意な韓国は日米を裏切る事を躊躇しない。韓国が混乱に乗じて対馬侵攻に着手する可能性だってあるのだ。

対馬を所望していた李承晩〜韓国による対馬侵略の可能性

また、被害の程度によっては、日本本土への攻撃が開戦の理由にはならないというプロパガンダが成立する可能性もある。湾岸戦争でイスラエルは40発近いミサイル攻撃を受けたが、イラクに反撃する事はなかった。日本ではたとえ民間人が多数死亡しても戦争反対を叫び続ける勢力が必ず残る。

北朝鮮の対日攻撃で中国・ロシアが日本に敵対し、韓国が北朝鮮の側につく。この状況では、アメリカが全面対決を避け、対北開戦に踏み切らない可能性もあるのだ。そうであれば、北朝鮮の完勝と言えるだろう。むろん、日本の完敗である。

北朝鮮が核ミサイルを配備するようになれば、このような悪夢のシナリオも考慮しなければならない。しかし、核兵器を搭載していないミサイルであっても同様の事態に至る可能性はある。むしろ100%アメリカの報復が正当化される核攻撃よりも、命中精度が低く威力も小さい単なるミサイル攻撃の方が北朝鮮にとっては都合が良い選択かもしれない。

湾岸戦争でミサイルを打ち込まれたイスラエルの教訓

北朝鮮ミサイルに対する避難訓練が相次いで実施されている。国が都道府県に訓練実施を呼びかけているためだ。

メディアでは頭を手で覆ってしゃがむ場面が映し出され、無意味ではないかという意見も紹介されている。今回、襟裳岬を越えていったミサイルは着弾まで約14分であった。そもそも10分弱で着弾するミサイルに対して避難の実効性はあるのかという疑問はある。

しかしミサイル対策訓練は、批判もあるが重要である。わずか数分の行動余地であっても瞬間の判断が出来るかどうかが生死を分ける事もあるからだ。また着弾後の行動も分秒を競う対応で負傷者の命を救えるかもしれない。ほんの少しであっても命が救えるなら、睡眠の邪魔になるアラートであっても十分な意味がある。

もう一つには、非常事態におけるパニックを防ぐために日頃の訓練が必要だという点だ。今は北朝鮮が挑発している段階で、国民もそれほど心配していないが、日本への攻撃が明確になれば、アラート時のパニックによる間接被害が心配である。

1991年の湾岸戦争では、イラクのフセイン大統領がイスラエルに39発のスカッドミサイルを打ち込んだが、死者はわずか14名で、そのうちミサイルによる直接の死者は2名であった。残りの死亡者のうち、7名は防毒マスクによる窒息死、そして5名が心臓麻痺である。

39発のミサイルが着弾してこの程度の死者であったのは、イスラエル国民の国防意識が高かった事も要因の一つである。一方で上記の心臓麻痺による死亡の他、ヒステリー症を発症した者が大勢いた。ミサイルが落下してくるという緊張状態に精神に異常をきたす者が多かったという事である。

ヒステリーを発症した者の数は、イスラエルにパトリオットミサイルが配備された後は激減した。ミサイル迎撃体制が整った事で市民のパニックが収まった事が理由の一つとされている。

日本で心配される事態は鉄道駅など人が集中する場所での将棋倒しといったパニックによる被害だ。核兵器でなければ、固い建物に避難する事で生存率は高まるだろう。屋外であれば、頭を手で覆ってしゃがめば、怪我で済むかもしれない。これには冷静な行動が必要であり、ミサイル訓練は地震の防災訓練同様に、被害の軽減に重要なのだ。

ちなみに湾岸戦争でイスラエルに配備されたパトリオットミサイルは、イラクのミサイル弾頭を一つも破壊できなかったばかりか、パトリオットミサイルの破片による被害も発生したらしい。その後パトリオットミサイルはPAC-3へと改良され、命中率はかなり優秀になったとの事だ。

憲法に大学無償化明記はあり得ない

教育の無償化を大学まで適用させるため、憲法に記載させようと主張する連中がいる。日本維新の会だけではない。安倍首相までその可能性に言及している。

結論から言うと、とんでもない暴論であり、維新にあっては人気取りの、自民にとっては政局優先の主張であり、必要性が無いばかりか、有害ですらある。

そもそも教育無償化という言葉自体がまやかしである。教育には金がかかる。第一に先生達に払う給料を誰かが負担する必要がある。校舎や教材もそうだ。それは納税者であり、国民だ。義務教育だって無償ではない。国民はそのための税金を払っているからであり、たとえ何らかの事情で税金を払っていなくとも、他の目的に使えていたであろう資源を教育のために使われている事情には違いはない。

「教育」とは、必ずしも高校や大学だけで実施されているものではない。サッカー選手になるために海外の有名クラブに所属するのも立派な教育だ。棋士になるため高校進学しない人もいるだろうが、将棋の勉強だって教育だろう。家業を継ぐために進学をしない人達は、その後は教育を受けない人生を送るわけではあるまい。

多様な生き方がある中(これは現代だけの話ではなく、ずっと昔からそうだ)で、伝統的な高校・大学だけが教育と思ったら大間違いだ。料理学校だって大学になり得るし、コンピューターゲームや落語漫才等の芸能、果てはアダルト女優だって教育に成り得る。

冗談で言っているのではなく、国が「大学」の授業料を負担するという制度が出来たとたん、ありとあらゆるジャンルの大学が登場するのは間違いない。今だってカタカナで一体何を教えているのか、果して大学教育と言えるのかも不明な学部が沢山ある。教育無償化の流れの中で、あれもこれも教育という有象無象の教育者が乱立するだろう。

もちろん文科省が何らかのコントロールはするだろうが、加計騒動で露呈したように彼等は左翼の言いなりで、アナーキーな状況を止める事は出来ない。吉本大学だって認可するだろう。気紛れな世論の中にあって、「物理」が教育で、人を笑わせる技術の研究が教育でないと果して主張できるのか、はなはだ怪しい。

教育は、内容によって必要な費用が異なる。人件費だけで済む場合もあれば、実験のための費用や装置などに高額な費用が必要な教育もある。宇宙工学のため宇宙ステーションの滞在費用だって場合によっては必要な教育費だ。それを、どうやって国家が負担できるのか。しかも公平にだ。

人件費ですら、教育内容によっては大きく異なる。アメリカで有名な教授の授業を受ける場合と、日本で無名のポスドクの授業を受けるのでは、必要な金額は天と地との開きがある。

金太郎飴のような同水準の教育なら国の負担も考えられようが、義務教育を超える教育は内容によって質も量も全くバラバラで費用や期間を公平に設定する事は不可能である。

以上の事は憲法以前の問題であり、まして憲法に記載するなどとんでもない話だ。

中国のずるさに負けて領土を奪われたフィリピン

スカボロー礁はルソン島の西側に位置し、古くからフィリピンの漁民が漁場としており、フィリピンの排他的経済水域の中にある。2012年、スカボロー礁に中国の漁船団が侵入した事件を大きな契機として、それまで比較的良好だったフィリピンの対中感情が一気に悪化した。

普段は穏やかなフィリピン人が激昂したのは、中国の侵略の仕方を見れば納得できる。

2012年4月、スカボロー礁に侵入した中国漁船をフィリピン海軍が検査したところ、絶滅危惧種のサンゴなどを持っていたため、逮捕しようとした。ところが中国海警局の船が現れ、逮捕を阻止しようとして、両者が睨み合うという事態に発展した。両国の緊張関係は約2ヶ月ほど続き、両国では激しい抗議行動が起きた。

この緊張を緩和しようと努力したのがアメリカで、同6月、米中高官がアメリカで会談し、フィリピンと中国の両国が同地域から撤収する事が合意された。

さて、フィリピンは合意にもとづいて撤収したが、中国はそのままスカボロー礁に居残り、結果として実質的な支配を確立していった。その年のアセアン会議では南シナ海問題が話し合われたが、議長国が親中国家のカンボジアであり、フィリピンの意見は通らず、ASEAN史上初めて共同声明が発表されなかった(中国はアセアン加盟国ではない)。

それまでもこの環礁では度々小競り合いが発生し、何とか収まってきた。危機は何度も回避されてきたが、それは中国にとっては侵略の時間稼ぎであった。そして2012年4月には、中国にとっては機が十分に熟したと判断したのであろう。

その後は最近のニュースに見る通り、中国は昨年からスカボロー礁の埋め立て開始の動きを見せており、ますますこの地域の実効支配を強めている。

スカボロー礁への中国による侵略は、フィリピンだけでなく周辺国も含めて中国への警戒感を強める契機となり、日米同盟の強化とアジア諸国の日本への期待を高める効果をもたらした。

しかしながら、安倍政権は尖閣諸島周辺での日本人による漁業も認めないなど、緊張を避けるほうにばかり動いており、結局とのところは中国の南シナ海における侵略を黙って見ている状況だ。安倍政権であっても中国の横暴を止める事が出来ないという事は深刻に受け止めるべきであろう。

一方でフィリピンではアキノ前大統領からドゥテルテ大統領に代って以降、政権も国民世論も、以前ほど強烈な反中姿勢を見せなくなっている。ドゥテルテ大統領の人権への姿勢をアメリカが問題視していることから、せっかく日米の側についていたフィリピンが中国依存へと移りつつあるようだ。

親中・平和主義者の顔に泥を塗る中華人民共和国の侵略癖

インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーは社会主義思想の持ち主であったが、東西冷戦の時代にあって非同盟・中立を掲げ、1949年には成立直後の中華人民共和国を国家承認し、1954年には中国との間で「平和五原則」を結んだ。西側諸国の多くが中華民国(台湾)の方を正式な国家として扱っていた時代の事である。

ネルーはもともと親支那の人間であった。彼は1939年の一時期、支那に滞在しており、その思いを強くしたようだ。インドと同じく列強の植民地となっているところに同情したのであろうか。社会主義的な思想が影響したのかもしれない。逆に日本に対しては帝国主義、ファシスト国家として批判的であった。

さて、上記の平和五原則の中では領土・主権の相互尊重が謳われており、そこでは当然ながら領土問題の合意が前提となる。中印両国の間で懸案となっていた領土問題はアクサイチンと呼ばれるカシミールの東側の地域と、チベット南部の地域だ。ネルーはアクサイチンをインド領に含む地図を中国側に贈呈し、平和五原則を締結した。

しかし中国は1956年にはアクサイチンに道路建設を開始し、1958年には地図にアクサイチンを中国領として記載する。これは1962年の第一次中印戦争の要因ともなるが、戦争の結果、この地方を中国が実効支配することになった。

ネルーは平和主義者であり、成立したばかりの中国を国際社会の中に受け入れさせる上で一役買ったが、結局裏切られて領土を侵食されたのだ。

平和主義者を取り込み、平和と友好を実現すると即座に裏切って侵略をする。そして実効支配を既成事実化して後、また平和攻勢を仕掛け、次なる侵略の準備を進める。これが中華人民共和国の姿であり、不思議なことに、みんな知っているのに、みんな騙されるのである。