統一教会の教義と米国リベラルのクリティカル・レイス・セオリー

現在、米国社会を分断させている主張の一つに、クリティカル・レイス・セオリー (Critical Race Theory)というものがある。これは制度や社会の中に人種差別が組込まれているという理論だが、究極的には現在を生きる白人はかつての白人がやった人種差別についての罪を背負っている、という結論に行きつく。

リベラル派が支配的なアメリカでは大学など教育機関で積極的に人種差別問題などを取り上げた教育を実施しており、クリティカル・レイス・セオリーもその中に含まれる。過去の人種差別時代に形成された法制度や社会が現在も続いて人種差別を助長する要因となっている。特に問題ない理論のようだが、実際にこの理論を説明しはじめると、白人の歴史がいかに差別主義であったかという歴史への罪悪感、そして過去の人種差別の上にある現在の社会システムに生きる白人も人種差別という装置の一部という現在における罪悪感を白人に強制するものであることが分かるはずだ。

先祖の罪を子孫に負わせる。これは日本においては大日本帝国の時代を否定する左翼リベラルの常套手段であるが、アメリカにおいてもリベラル派によって過去の罪を清算すべき白人グループと、その補償を受ける有色人種グループに分割する基本原則となっている。

日本では左翼により日本がかつてアジア諸国に対して犯した罪の重さが繰り返し強調され、現代日本人に対して贖罪意識を植えつけている。毎年8月15日が近づくたびにメディアや左翼団体は戦前の天皇制日本の極悪非道ぶりを主張し、日本は加害者、アジア諸国は被害者という潜在意識が日本人の意識に刷り込まれていく。

そして、その潜在意識を最大限に利用しているのが、現在話題となっている統一教会(世界平和統一家庭連合)である。統一教会の教義は、韓国は神に祝福された国であり、日本は罪深きサタンの国であるというもので、日帝支配40年は韓民族弾圧の時代であり、現在日本人はその罪を清算しなければならない、とするものだ。

統一教会の教義はキリスト教の聖書が基本となっている。キリスト教はもともと人類には原罪があるという思想であり、キリスト教系団体の布教は多かれ少なかれ罪悪感を芽生えさせる事と救済を求めさせる事がセットになっている。皮肉な事であるが、米国リベラルが採用しているクリティカル・レイス・セオリーとは、保守派が大切にするキリスト教価値観そのものなのである。

そして日本における皮肉とは、左翼が日本人の潜在意識に植えつけた罪悪感を、左翼の敵であるはずの統一教会が救っている構図である。