感染蔓延が政権支持率低下の理由である事を理解できていない菅政権

武漢コロナウイルスへの対応には、大きく二つの対立する思想がある。一つはウイルス撲滅を優先する考えであり、もう一つは経済活動を重視する考えだ。

アメリカでは両者の思想が民主党と共和党の政策の違いとして顕われ、両者の争点が非常に明確であった。一方、日本ではコロナ対策についてそのような基本原則の議論はせず、最適解を追求していった結果、ウイルス撲滅か経済優先かという論争はそれ程活発ではなかった。

今年になって東京五輪では人の命か五輪か、という点が公論化されたが、無観客試合という事で曖昧な決着となった。しかしながら、日本の新規感染者数が世界トップクラスとなった現在、菅政権が経済活動優先主義の影響を濃く受けている事が明確となっている。

現在の感染拡大は、昨年5月の緊急事態宣言と同じ事をすれば確実に封じ込める事ができある。同じ事が出来ない理由は国民が自粛しないからだが、大手企業など政府が直接指導・要請が可能であるはずの組織も自粛していない。昨年の自粛期間中は閉店していた店も、医療崩壊した今では客で賑っている。

手段はともかく、昨年と同程度の行動制限を同程度の期間でも実施すれば、今日のような医療崩壊は発生していないはずだ。しかし現政権はワクチン接種による免疫のみに期待し、ある程度の感染拡大は許容するコロナとの共存姿勢を見せている。経済界と経済活動優先を主張する保守派の声だけを聞いているのだ。

現在営業している店舗や飲食店、観光業界などは、本来は菅政権を支持すべきであろう。厳しい行動制限をしない事による受益者だからである。また、それらを利用している消費者も同じく政権支持者であるはずだ。ロックダウンしないおかげで生活を楽しんでいるからだ。ところが実際はそうではない。自分達は経済優先の菅政権の恩恵を受けながらも、感染拡大と医療崩壊を憂いてワクチン一辺倒の菅政権を批判しているのだ。随分理不尽な話だが、それが国民の民度であり、実態であるのだ。

残念な事に、保守派論客の多くが経済優先主義だ。初期の頃は、日本人は民度が高いからロックダウンは不要と言い、感染が拡大してくると諸外国と比較して死亡率は無視できると言い、医療崩壊した昨今ではマスコミの偏向報道に文句を言っている。中には当初から武漢肺炎はただの風邪などと主張する人もいたくらいである。

ワクチン接種率はまだ低いままであり、その効果が出てくるのは8割近い接種率が必要であろう。それは次回の衆議院選挙後の話であり、それまでに医療崩壊を原因とする死者のニュースは増え続け、経済活動を優先して厳しい行動制限をしなかった政権には選挙での審判が下るであろう。