ミャンマーからは撤退するがサハリンには残る日本のエネルギー開発

ミャンマーには日本政府と三菱商事及びENEOSが参加する天然ガス事業があるが、2月には三菱商事が撤退を表明し、ENEOSも5月2日に撤退すると発表した。同事業はミャンマー南部沖のイェクダンガス田で天然ガスを産出するもので、産出量が減少しているとは言え、人権弾圧をしている国軍の資金源になっているという事で批判を浴びている案件である。

採算性の低下という経済環境の変化が撤退の主たる理由と思われるが、欧米企業が天然ガス事業から撤退する中、国際社会からの圧力と同国の人権問題も大きな理由だろう。

天然ガス輸出はミャンマー国軍の主要な資金源とされており、欧米や日本が撤退しても中国の支援で事業は継続されるだろう。ちなみに韓国のPOSCOが同国で展延ガス事業を継続しているが、一応は西側民主主義国なので目立った行動は出来ない。

ミャンマーとは結びつきの強い日本ではあるが、3月に米国がミャンマー軍のロヒンギャ迫害をジェノサイドと認定したばかりであり、人権抑圧国家であっても中国の影響力に対抗するため一定の関係を維持するという日本の独自外交を維持するのは困難だという事だ。

一方で日本はサハリンにおける石油・ガス事業からは撤退はしない方針である。日本が撤退すると中国が権益を握る事になり、日本の権益を脅かすというのが理由のようだ。また政府はエネルギー安全保障を強調しているが、それなら韓国に倣ってミャンマーの天然ガス事業も維持しておかなければ整合性が取れない。

現在の日本政府が、資源開発においてミャンマーからは撤退しロシアからは撤退しない理由は、正義とか人権といった理由ではない。それが理由ならロシアによるウクライナ侵略はミャンマーの人権弾圧より罪が軽いという事になってしまう。エネルギー供給国の多様化こそ必要なのに、ミャンマーを切り捨ててロシア依存を強めようというのだから、国益ですらない。本当の理由は経済的利権でありミャンマー派はロシア派より弱かったという事だ。

ドイツはロシアからの天然ガス輸入で国際的な批判を浴びたが、ミャンマーはじめ世界の人権抑圧国家に厳しい経済制裁を課している欧米世論はダブルスタンダードを許さない。ウクライナが感謝した国に日本が含まれていないと大騒ぎした連中が居たが、対ロシア制裁に関して日本はドイツと同じ立場なのである。

ドイツ、そして日本が経済制裁の抜け道を塞がないなら、それ以上の支援をウクライナに与えなければならない。当然それには軍事支援も含む。ロシアに支払う天然ガス代金も軍事費に化けるのだから。