2014年2月、ロシアがクリミアに軍事進攻し、クリミア半島を制圧、3月にはクリミア編入を強行した。アメリカとEUは経済制裁を発動、日本もこれに応じている。
日本では北方領土問題の進展と中露離間を期待して今秋予定されているプーチン大統領の来日を重視する意見がある。これを背景に安倍外交の成果を見せたい自民党政権はロシアへの経済制裁には消極的な様子である。
2014年7月17日、マレーシア航空の旅客機がウクライナ上空で撃墜された。親露派による誤射が原因とされるが真相は究明されていない。アメリカとEUは追加の経済制裁を決め、日本も追随する事になった。
この撃墜事件によってプーチン大統領の訪日も中止の可能性が生じている。ロシアがウクライナ国内における親露派の支援を明確な形で止めない限り、安倍首相とプーチン大統領が日本で会談するというのは有り得ないだろう。
一方、ロシアが欧米の経済制裁に屈服して譲歩した状況でプーチン大統領が訪日した場合には、ロシアが日本に譲歩するような話、特に領土問題については、進展は期待できない。プーチン大統領も、ロシアの国内世論に配慮する必要があるからだ。
今のロシアはソ連崩壊後の疲弊したロシアではない。経済力、軍事力とも回復しており、日本に領土問題で譲歩する必要は無い。むしろロシアは海軍力を増強させており、原子力空母や原子力潜水艦、駆逐艦その他の艦艇を多数建造中だ。また、フランスからミストラル級強襲揚陸艦を購入する予定で、日本列島の周辺は軍艦だらけになってしまう。
ロシアがクリミアを編入したのは、黒海艦隊が黒海を経由して地中海に進出できるようにするためである。ロシアの太平洋艦隊や北方艦隊が機能するためには、太平洋に進出できなければ意味がない。北海道はクリミヤ半島よりは広いが、第二次世界大戦ではソ連が占領していたはずの土地である。北方領土の四島を返還する事は、軍事的に考えられない。
現在、日本国内の論調は、プーチン大統領に対する批判とウクライナへの同情は控え目だ。むしろ、ウクライナの側を批判する人達もいるが、これが北方領土問題進展への期待から来るものだとしたら、全くの見当違いである。
ウクライナでも中国の影響力が増大しつつある。高速鉄道は韓国製だ。一方、日本はウクライナ支援のため既に1500億円の支援を表明している。日本が北方領土期待でウクライナを失望させるような行動をすれば、1500億円が無駄になるばかりか、友好関係を傷つける事にもなる。