現在の安倍政権は、民主党時代の反動という要素もあるが、憲法9条改正の期待を背負って登場した政権である。安倍首相は2013年末には靖国神社を参拝し、当初は従軍慰安婦問題などで正しい歴史認識に沿った動きを見せ、保守層の支持を磐石にした。
外交面では、中国包囲を想定した外交を続け、一定の評価を得ている。
安保法制に関する議論では、憲法問題も含めて左翼やメディアの大攻勢の前に厳しい状況が続き、さすがに支持率も低下したが、保守派の強固な支持に支えられ、無事法案を通す事が出きた。本ブログでも安保法制に関しては安倍政権を支持してきた。
しかし、安保法制後の安倍政権は、民主党から政権を奪取した直後と比較すると、おかしな方向に進みつつある。第一に韓国との従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意であり、これは保守層の切り捨てを意味した。思えば尖閣諸島に対する安倍政権の対応は弱腰のままだし、対中国の緑化事業継続も決めるなど、当初からの支持者を落胆させている。
外交面では、米国の存在など複雑な事情もあるかもしれないが、不思議なのは経済政策である。
昨年(2016年)末、カジノ法が採択されたが、これは高い支持率があって可能であったものである。事実、世論調査ではギャンブルに対する警戒感から反対意見が多く、必ずしも国民の支持を得られているものではない。カジノ推進勢力が政権の貴重な支持率を削りとって法案を成立させたのである。憲法改正期待の支持率を、ある種の勢力の実現のために利用しているのだ。
極めつけは移民政策である。安倍首相自身は移民でないとは言っているが、ある種の利益集団の圧力を受けて外国人を流入させようとしている事は明白だ。国内の低所得層の雇用よりは、特定企業集団が必要としている外国人労働者の雇用を優先している。その政策を後押ししているのは、政権の高い支持率である。
あまり陰謀論というものは考えたくはないが、安倍政権の背後にいる利益集団が保守派をうまく利用しているとすれば、かなり優秀な集団だ。
安倍首相は民進党に対する痛烈な批判をしてネット右翼の喝采をあびているが、これも謀略の一環であろう。民進党をバカにする事で保守層の目を逸らしているのだ。その裏で着々と進むのは、外国人労働者を必要とする利益集団の権益拡大であり、毎日の生活に苦労しながらも安倍政権を支持している者達の切り捨てである。
民進党を徹底的に叩いて保守派を満足させる一方で、共産党を放置する事により保守派に危機感を抱かせ自民党以外に支持できない状況を作り出し、その結果として実質的に保守派勢力を抑え込み、背後にいる利益集団の利益を極大化しようとする。これが安倍政権の真の姿なのではないか。
もちろん安倍政権の支持率は保守派の支持だけではない。しかし、保守層が他の党派に流れる事を完全に阻止している状況にある事は確かである。
投資先が、出資者が知らされていた以外の事業に金をつぎ込んでいたとしたらどうだろう。大半の投資家は、事業内容が何であれリターンがあれば良いのかもしれないが、人によっては企業の理念の惚れて投資する、という場合もあるだろう。
政治も同じであり、GDPが増えれば何でも良いというものではない。
残念ながら、日本の保守勢力にとって自民党以外の選択肢はない。自民党より右寄りの政党は安倍政権が潰すからだ。次世代の党が良い例である。民進党は共産主義勢力の側に追いやられ、維新も寄せ集めの状態だ。幸福の党や日本第一党は自民に投票しない保守層を分裂させるため、上手に利用されて終わりとなる。
あまり良い状況ではないが、とりあえず以下の点には注意すべきだろう。(1)政権の民進党叩きは目眩しである。(2)一部のネットで言われているような安倍政権による在日追放はない。(3)各種の利益集団は、それぞれ安倍政権の高支持率を自己な目的達成に利用しようとしている。(4)保守派の勢力はわずかであり、国民の大半は右でも左でもない。