憲法9条という経典

共産党は、自衛隊が嫌いである。共産党だけではなく、左翼は一様に自衛隊に対して否定的で、災害時の自衛隊の活動すら苦々しく思っている連中である。

左翼が自衛隊を嫌悪するのにはいくつか理由がある。

第一に、旧日本軍が戦時中に一般市民を虐殺してきたという左翼自身の主張の延長で、旧日本軍の生まれ変わりとしての自衛隊も同じような野蛮な集団だと思い込んでいるためである。実際には旧日本軍は規律が厳しく、国際法を遵守してきたのだが、左翼は軍事に対する嫌悪感から、戦争中の従軍記や戦記ものはあまり読まないため、そのような話は右翼の妄想として片付けてしまう。逆に戦争中の支那・英米による対日プロパガンダや戦後の朝鮮・韓国による捏造をそのまま信じ込み、日本軍は極悪非道であったという偏見が意識に刷り込まれている。このため、同じ嫌悪を自衛隊にも持ち込んでいるのだ。

第二に、憲法9条に対する盲目的信仰が理由である。左翼の思考回路としては、憲法9条改正に繋がるいかなる動きも徹底して拒絶する傾向にある。自衛隊が国民の支持を得る事が、改憲への支持に繋がる事を極度に恐れているのだ。

この発想は、尖閣や竹島、北方領土に対する考え方にも影響している。領土を巡る軍事的緊張が改憲への道となる事を恐れるため、「辺境の小さな島ぐらい譲ってやれ」等という暴論を平然と主張するようになる。憲法9条のためなら、他国に侵略されても日本の主権が犯されてもかまわない、と思っているのである。また、日米安保に対する姿勢も同様だ。米軍への協力が憲法改正の理由になる事を恐れている。

本来は平和的解決が原則としてあって、そのために憲法やら法律、軍隊を論じるべきなのに、左翼の場合は憲法9条が神聖不可侵のものとして存在し、護憲を最大の目的として国際関係やら国内政治を論じているのである。

上記の二点は極論な左翼像ではない。実際に、かつて共産党シンパだった私自身が若い頃に有していた思考回路である。両親もそうだったし、毎日のように読んでいた赤旗新聞もそのような論調であった。

第三の理由としては、自衛隊を貶める事が中国の利益になる、という点である。さすがにこの発想は私にはなかったが、左翼の中には完全に中国の利益のために活動している連中もいる事は確かである。