ナチスに協力した米国企業

第二次世界大戦中のナチスドイツ軍は世界中から嫌われているが、その兵器は極めて優秀で、ミリタリーファンにとってナチスドイツ軍の人気は非常に高い。実際、戦車や戦闘機の完成度は、当時に日本軍とは比べものにならない。

これは、当然ながらドイツの科学力、技術力が極めて高かった事が最大の要因であるが、実はアメリカ企業もナチドイツの兵器には大きな役割を果している事はあまり知られていない。

例えばGMである。GMがドイツに所有していた工場では、Ju-88やMe-262の重要な部品を製造していた。Ju-88(ユンカース88)はドイツ空軍の中距離爆撃機で、Me-262(メッサーシュミット262)はドイツ空軍が実戦配備した世界初のジェット戦闘機である。また、GMの工場ではナチスドイツの軍用トラックも量産していた。

GM以外にもフォードやクライスラーもナチスドイツの工場で自動車を生産しており、これを通してナチスを支えてきた。米国企業がナチス下のドイツで工場を所有していたばかりか、軍需品まで製造していた事は驚きであり、知らない人が多いのではないだろうか。

これら企業がナチスの思想に共感して工場を維持したと考えるのは、あまりにも陰謀論的過ぎるだろう。単に多国籍企業として利潤を最大化するための行動を取っただけであり、いわゆるホロコーストについて承知していたとは考えにくい。

日本は1940年に日独伊三国軍事同盟を結び、歴史上は自ら侵略者側についたとされている。しかしながら、アメリカ企業がドイツで自動車を製造していた時代である。当時の世界情勢の感覚では、悪のグループに入った、という認識は無かったのではないだろうか。

なお、戦後になって、GMは米国政府に対し、戦争中に連合国の爆撃によって被害を受けたドイツ国内の工場について被害の賠償を請求しており、実際に賠償金を受け取っている。

参考図書:『クルマが鉄道を滅ぼした(ブラッドフォード・C・スネル)』