AIIB設立〜我が国ODAを批判してきた人達の対応

かつて、日本の海外援助が激しく批判されていた時期があった。フィリピンやインドネシア、そして韓国など独裁政権を支援しているとの批判だった。それだけではない。ダム建設など大規模なインフラ事業では住民移転が必要で、土地の強制収用やら従前の生活破壊など、かなり強い非難を浴びていた。もちろん環境問題でも文句は多い。

日本共産党は、もちろん日本のODAに批判的であった。西側陣営にばかり支援しているとか、軍事政権を支援しているとか、日本の企業のための支援だとか、援助の過程が秘密主義であるとか、などである。

日本の左翼勢力だけではない。欧米諸国も、日本の援助はヒモ付きだと言って、日本企業がなるべくODAで受注できないよう、ケチをつけてきた。

日本を含めた国際融資機関は、環境団体やNGOの批判をかわすため、実態はともかく、環境を重視し、透明性を高め、借入国には様々な注文をつけるような仕組みを作ってきた。特に日本は国内左翼やら国際的なNGOに文句を言われないよう、自ら色々な縛りをつくって、環境やら民主主義やら、借りる側からすると余計なお世話というような援助をするようになっている。

さて、中国が設立しようとしているアジアインフラ投資銀行であるが、既存の国際機関よりも透明性が高く、環境問題に配慮し、人権を尊重し、腐敗を排除し、受注業者ではなく借入国の経済を優先するようになると、果して誰が思っているだろうか。

これまで散々日本のODAに対して厳しい目で見てきた欧米のNGOが、英国やドイツが参加する事になるAIIBに対して、より厳しく監視するようになるだろうか。日本に脱原発を呼びかけたドイツは、AIIBが原子力発電所に融資することには反対するだろうか。

また、同じく日本政府の借款を批判してきた国内の左翼は、どのような態度を取るだろうか。

現在でも中国は、世界中の途上国に金を貸しつけ、国際的な基準などは無視して中国業者がインフラを整備している。それに対する左翼側からの批判はあまり聞こえず、話題にしているのはむしろ保守系のメディア、評論家たちである。

まだ、アジアインフラ投資銀行が一体どのようなプロジェクトに、どのような基準で融資するのかは不明である。しかし、これに参加を表明した、普段は人権とか環境とか主張する西側諸国の、あきれたダブルスタンダードを見る事ができる日は近いだろう。