六韜三略と現代支那の戦略

周の文王が太公望に次の質問をした。「文伐の方法は?」文伐とは軍事力を直接行使せずに討伐する事である。これに対し、太公望は12の方法を列挙した。

  1. 相手の要求に対し、相手が喜びそうな対応をして驕らせる。
  2. 相手の忠実な部下を味方にして、分断させる。
  3. 相手の側近に賄賂を渡し、味方にする。
  4. 美人を送るなどして相手を娯楽に没頭させる。
  5. 相手の部下を、その上司より厚遇する。また相手が信頼している部下が交渉に来ても合わず、他に人間と会う事で、その部下を疑うようにさせる。
  6. 相手の優秀な人材を自分の味方につける。
  7. 相手の部下を買収し、仕事をサボらせ、蓄えを減らさせる。
  8. 相手国の君主と仲良くし、君主自らこちらに協力的になるようにすれば、その国は必ず負ける。
  9. 相手国の君主を誉めて良い気にさせて、投了したふりをすれば、その君主は思いあがって政治をしなくなる。
  10. 相手国に対してへりくだって心をつかみ、何でも言うように行動して味方と思わせれば、時期が来た時にあっさり滅ぼせる。
  11. 相手側の部下に、今より好条件で待遇する事を約束して、当方の人間を相手国組織に送り込んで工作すれば、もうその国はもたない。
  12. 相手国の乱臣をこちらの味方につけて、君主を困らせておく。

これは「六韜」のうちの「武韜」に「文伐」として記載されているものである。もとは漢文で、ネットを見ても色々な現代語訳があるが、ここではなるべく短くなるようにまとめた。

この内容から導き出されるのは、「自分と親しくしようとする者には下心がある」というもので、人間不信に陥るので日常生活ではあまり意識しない方が良い。しかし国家間となれば、この文伐を無視する事は出来ない。特に漢民族の血をひく今の中華人民共和国は、「六韜」を現代的に解釈して実践している。

日本が嫌韓に夢中になっている一方で、中共による対日融和工作が進んでいる。それは、日中友好、国内世論の分断、政治家やオピニオンリーダーの篭絡、親中派の育成、国家の混乱など、様々な形で進行していると理解すべきである。