中国主導で設立される予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、日本は参加しない方針であるが、これに不満のある参加賛成派が焦って正体を現わし始めているようだ。
当初、AIIB参加に対して中立的であるように偽装していた評論家や専門家も、反対派の正しい意見に対して説得力のある論調を維持できなくなってきている。AIIB参加が日本の国益になることを説明できず、また不参加による不利益も上手に説明できないのだ。結果として「中国とは仲良くすべきだから」という本音の論調が目立つようになってきた。
すこし参加賛成派の意見についてコメントしてみよう。
(1)参加しなければアジアのインフラ事業に日本が参加する機会が減る
これまで何度か指摘したように、インフラ分野で日本企業が受注できるチャンスは、そもそも非常に低い。日本の円借款事業でさえ日本企業は受注できないのである。インドはニューデリーの地下鉄建設に円借款を利用したが、採用されたのは韓国の車両である。ちなみに日本の高い技術が必要な事業であれば、何もAIIBを経由する必要は全くない。
(2)日本がメンバーとなって内部から正しいルールをつくるべきだ
AIIBをまともな機関にする義務が、どうして日本にあるというのか。暴力団から市民を守るため、暴力団の企業に出資して監視しようと言っているようなものだ。そもそも中国主体の組織に日本の意見が反映されるはずがない。
(3)世界で日本が孤立する
日本が参加していない国際組織はいくらでもある。孤立と言えば、アジアで孤立しているウイグル、チベット民族のために何かしてあげるべきではないのか。イジメに加わらない事は孤立とは言わない。
(4)手続きが煩雑で硬直的なADBなどの国際機関の代わりとなる
日本の円借款やADB、その他の国際機関が手続きに時間がかかるのは、環境重視、透明性確保、民主主義、投資効果、貧困解消への貢献など、審査すべき事が多いためだ。これらは現在の日本の価値観を反映させているものであり、これを放棄する事はできない。審査が甘くてもインフラ開発のスピードを重視すべきという主張が左翼の側から出る事には驚きである。
(5)アメリカ型の押し付けでないアジア型の国際金融機関が必要
ここまで来ると正体が見えてくる。要するに西側の開発援助は大企業優先・国民いじめの間違った援助であり、中国による開発援助はアジアの国情にあった本物の援助、という発想だ。まともな人間なら相手にしない論理であるが、左翼は本当にこのように考えている人達がいる。
(6)日中関係改善のために参加すべきだ
そう、これがAIIB参加賛成派の本音である。日本の国益を考えた場合、AIIBに参加する意義はない。AIIBが何のための組織なのか、海外におけるインフラ投資とは何なのか、開発援助の仕組みはどうなっているのか、など知らないが、とにかく中国を喜ばして日中関係を良好なものにしたい、というのが賛成派の大きな動機なのである。
(7)安倍政権に打撃となるから参加すべきだ
露骨な形では出ていないが、このような発想をしている人達もいるだろう。
(8)日本の国力を削ぎ、中国の覇権を確立させるために参加すべきだ
最近の反日政治家、反日評論家の無理筋と言える「バスに乗り遅れるな」論を見ていると、本当は中国の対日工作が深刻な状況にまで到達しているという事なのかもしれない。