戦争につながる中国の赤い舌(九段線または牛舌線)

中国の赤い舌

「中国の赤い舌」というのは、南シナ海で中国が領有権を主張する境界線のことであり、九段線または牛舌線(Cow’s tongue)と呼ばれる。図で明らかなように、南シナ海のほぼ全域を占める。

この境界線は、もとは破線で書かれていて、線の数が九つあるので九段線と称されているが、牛の舌のような形をしている事から牛舌線とも呼ばれ、日本では赤い舌と表現されているものだ。

この線は、もとは国民党の中華民国が1947年に設定したものだ。国民党を追い出した中国共産党はこの境界線を踏襲して、1953年から国内の地図に九段線を明記するようになった。

中国本土から遠く離れた海域で領域を主張しても意味がないように思うかもしれない。昔はそうであった。中国は貧しい国で海軍力もなく、日米安保があれば中国の領有権主張は中国脅威論にはならなかったのである。

しかし、この海域では既に軍事衝突が発生している。1988年、中国はスプラトリー諸島海戦でベトナムに勝利し、ベトナムが実効支配していたヒューズ礁やジョンソン南礁などの岩礁を奪い取った。現在、中国はこれらの岩礁を埋め立て、人工島を建設している。中国の赤い舌は、戦争を引き起こす危険性を有しているのである。

中国は急速な勢いで軍事費を増大させている。20年ほど前から軍拡が顕著になり、10年前にはドルベースで日本の防衛費を超えた。その後は急速な経済成長を背景に日本を遥かに上回る金額を軍備拡張につぎ込んでいる。

さて、中国が九段線で南沙諸島の領有権を主張してから60年以上が経過している。そして、その時間的な経過をもって、さらなる領有権の根拠としているのだ。

上の図には中国が軍事上の制海権確保の目標とする第一列島線と第二列島線も示している。これも今はまだ夢物語として放置していると、何十年か後には、中国側の主張が長く反論されなかった事を根拠に太平洋の島々の領有権を主張するようになるかもしれないのである。