百田発言の本当の間違い

自民党の勉強会で百田氏が発言した内容が、マスコミの反発を受け大きな騒動になった。朝日新聞は百田氏の「ツバルなどはくそ貧乏長屋」という発言を取り上げ、安倍政権と結びつけて報じており、安倍政権のダメージとなった。

小国を侮辱するかのような百田氏の発言に注目される事が多いが、本当に深刻な問題は、百田氏の認識が根本的に間違っている点にある。

百田氏の発言の本質は、軍隊を持たない国が何故軍隊を保有していないか、という点だ。9条信者たちが、世界には軍隊を持たない国が多数あるとして例示する中に太平洋の島々やコスタリカ、そしてアイスランドがあり、これに対して反論したものだ。

貧乏長屋という表現にある背景は明白で、要するに盗まれるようなものが何もないような貧乏国家は侵略されることもないし、戦争にまきこまれる事もない、だから軍隊を持っていない、という発想だ。

しかし、これは根本的に間違っている。

軍隊を持たない国は、侵略されても何も盗られるものが無いから軍隊を持たないのではない。その国を取り巻く様々な国際情勢や国内事情が要因となって、軍隊を持たないのである。

具体的に言うと、太平洋はアメリカ軍が圧倒的に支配している地域であり、ロシアや中国など侵略的傾向のある国からは遠く離れているから、太平洋諸国に軍隊は不要なのだ。戦争に備えるという事は、隕石が直撃する事に備えるという程度に非現実的な話なのである。

現在軍隊を持たない国は、アメリカが世界の警察官として機能している限りは侵略の心配がない国である。あるいは、戦略的に重要でない国家である。また、そもそもツバルのように人口が1万人程度であれば、軍隊の持ちようがない。

ある国の平和は、その国だけで決められる話ではない。ツバルは軍隊を持たない平和な国かもしれないが、それも国際環境に左右される話であり、一国だけが望めば実現されるようなものではない。第二次世界大戦では、太平洋の島々が日本軍に占領されたり、米軍の基地となったりした。

保守系の人間が、もし百田氏のように「貧乏だから平和」という発想で9条信者らと論争しているのだとすれば、「貧しくても平等で軍隊もない国」を理想とする左翼と同じ発想で言い合いしているだけに過ぎない。だとすると恐しい事である。

日本は中国やロシアから見れば太平洋に出るためには邪魔な存在であり、日本列島の軍事的な戦略価値は高い。このため、日本が日本だけの意思で平和である事は出来ない。現状ではアメリカとの同盟により戦争の危険性を減らす事が最善なのである。