【赤旗】社会主義みたまま3

30年前の記事である。社会主義国ハンガリーに、非社会主義国オーストリアから買い出しに来てるよ、社会主義すばらいしい、という内容である。その数年後、東ドイツから西ドイツに亡命する人々が、ハンガリーを経由してオーストリアに流れ込み、ベルリンの壁崩壊につながるとは、歴史とは不思議なものである。

河邑 生活物資がそれなりに安くて豊かなことについては、政府の政策的な手当てが大きい。実際には、ハンガリーはこの時期いちばん苦しいときだった。他の東欧諸国も同様だが73年の石油ショックで非常な打撃をうけて、そこからくる経済困難を乗り切るため、一部の物価も上げざるをえないし、政府の各種補助金もいくつか削るということがやられている。80年いらい、経済建設の目標も「生活の維持」であって、「生活の向上」はかかげてこなかった。そのなかでも、食糧、家賃、交通費などは、政府が価格保障をきちっとしている。
その基礎には、ハンガリーの農業生産が成功していることがある。穀物生産は一人当たり千四百キロだ。だいたい千キロ以上なら国際的にみて高水準というから、かなり高い生産性をあげているし、それを基礎にして肉の生産も一人当たり百四十キロ、国内消費は七十六キロだから、半分くらいは輸出にまわせる余力をもっている。
-オーストリアから買い出しにくるということだが、ほじょきん 政策で安くしている品物を買っていってしまうとなると矛盾はでてこないか。ベルリンの壁ができる以前に、東ドイツできわめて安く得られている生活必需品を西ベルリンからきて買い占めていくというような例もあったからね。
河邑 なるほど、そういうことはあるかもしれないな。しかしハンガリー側はそれなりに心得て対応しているのではにか。ネメト政治局員は、オーストリアの国民が「ハンガリーの社会主義の優位性を利用している」のだといっていた。
白井 ルーマニアの場合、まわりがみな社会主義国だからそういうことはない。しかし物によってはときどきおこる。一時期、農業で不作がつづいてたいへんだっととき、ユーゴから買いにくる人を国境で制限するようなことはあった。
実際、生活必需品は安い。とくに食料品はね。八百グラムのパンが百円ちょっとだからね。私の妻は日本の物価感覚になおすために、値段を公定レートで円に換算したあと、さらに二倍していた。つまり物価は日本の半額かそれ以下だ。
佐々木 賃金はそう高くはないが、食糧などの基本的な生活必需品の値段、それに家賃などは、日本などと比べたらはるかに低い水準におさえられている。普通にきちっと働いている限り、なんら生活の心配はない。