12月7日、金星探査機「あかつき」が金星の周回軌道に投入された。2010年に軌道への投入が失敗し、その後5年を経て再投入に成功したという事で、日本の宇宙開発技術の良い面も悪い面も見せてくれたプロジェクトであった。
「あかつき」の軌道は金星に最も近い高度が約400kmで、最も遠い高度が約440,000kmという、非常に潰れた楕円形である。素人考えでは、そのまま宇宙空間に消えてしまうのではないかというくらい潰れているが、約13日で元に戻るらしい。成果を期待したい。
宇宙開発ということでは、最近では宇宙ステーション補給機「こうのとり」が国際宇宙ステーション(ISS)に物資を輸送している。
ISSは、アメリカとロシア、日本、カナダ、そして欧州の主要国を含む計15カ国の参加で開発が進められた。中国とインドは参加を希望したが、実現していない。
ISSの軌道は高度は300~400kmで、ロシアのプログレス補給機と米国のスペースシャトルで建設された。ISSには日本のモジュールである「きぼう」がドッキングされている。
ISSには最近まで日本人宇宙飛行士の油井氏が滞在していた。油井氏の地球とISSとの間の往復にはロシアのソユーズが利用された。スペースシャトルではない。ソユーズである。スペースシャトルは2011年のアトランティス号を最期に運用が中止されている。現在、人類を宇宙に送る方法は、ロシアのソユーズ、そして中国の神舟しかないのだ。
支那人というのは、その歴史を見ると覇権を唱える時期というものを実に心得ているものだ。近年は巨大化した経済力を背景として、自らを覇権国と認めるよう、様々な場で西側諸国に踏み絵を踏ませてきている。今年だけでもAIIB設立やSDRへの元の採用という成果を挙げている。特にAIIBは、一体誰が中国に平伏し、誰が反抗するのかを判断する重要な仕掛けであった。成功しようが失敗しようが、中国にとっては覇権国としての現在位置を確認するという意味で、外交上の勝利である。
そして、次の国際宇宙ステーションは、中国が主導権を握るべく活動するだろう。現在のISSは2024年までの運用継続が予定されており、その運用終了前に次期宇宙ステーションの話題が出るだろう。そして、その時は中国が仕切り役となり、自分が次世代の覇権国であることを認めさせるような動きに出る事は確実だろう。
宇宙ステーションの開発費用は膨大だ。NASAはISSの開発・運用に2010年までに約6兆4,400億円を投資している。日本は同時期までに約7,100億円だ。アメリカも日本も財政状況は厳しい。2024年の運用終了以降も宇宙開発に投資が継続できるか不透明である。
昨日はインドの新幹線に日本の円借款を破格の条件で供与する件について記述した。政府や世論が、新幹線で中国に勝った負けたで一喜一憂している間にも、中国は次の時代に向けて確実に歩んでいる。
日本は長期的視点で投資を考えるべきだ。中国製の新幹線と意地の張り合いをするのにゼロ金利の融資をするくらいなら、儲けは出ないが技術革新に貢献する宇宙開発に金を使った方が良いのではないだろうか。