日本の森林を買い漁る中国の緑化を日本の税金で進める奇怪

中共政権が「西部大開発」と呼ばれる中国内陸部への大々的なインフラ投資を開始したのは2000年の事である。沿岸部と内陸部の格差是正を目的とした経済計画であるが、西域の漢化を進め、辺境地域における漢民族支配を確立し、西部における国防上の懸念を無くすという政治的な動機による計画でもある。

驚いく事に、日本政府は江沢民政権が打ち出した西部大開発を円借款や無償などで支援した。その内容は緑化事業で占められており、それまで沿岸部で実施したような土木インフラではないため、「地球環境」や「砂漠化防止」という魔法の言葉で、なんとなく問題とはならなかったのである。その金額は2000年から2006年まで約1100億円に達する(ただし「承諾額」なので実際の供与額はこれより小さいはず)。なお、日本が新規の対中円借款を中止したのは2008年である。

同じ時期、中国に対しては約8,600億円の円借款を供与しているから、約13%は西部大開発に向けられたものであった。円借款以外にも、無償資金協力や技術協力が続けられたが、ここでは割愛する(ググるのに疲れた)。

日本が支援したのは緑化であったが、中共が重点的に投資したのは鉄道による地域統合などのインンフラ整備だ。そして、大西部開発はシルクロード構想へと、中国による覇権に結びついている。要するに日本は、環境とか緑化の美名のもとに、中共によるウイグル、チベットなど小数民族の弾圧と中国の覇権拡大に貢献してきたのである。

さて、最近話題となっている日中緑化交流基金が活動を開始したのは2000年で、中共による西部大開発の時期と一致している。この日中緑化交流基金が直接植林を行うわけではなく、国内のNPOなどに2000万円を上限として資金供与するものだ。これが本当に植林に利用されたのか、外部からは確認しようがない。この基金の助成額は2000年からの10年間で49億円に達している(日中緑化交流基金のHP)。

表向き対中ODAを止めておきながら(完全には中止してはいない)、別チャンネルで中共の政策に協力を続けているのである。

近年、中国企業による日本の森林資源の買い漁りが活発化している。日本の国防にとって深刻な状況にあり、政府は本格的な対策が必要だ。水資源として重要な本土の森林だけではなく、離島の森林も保護しなければならない。

中国における緑化は、中国が自らの資金で実現しなければならない。中国の環境保全は、大国となった中国が自ら果すべき国際的な義務である。その義務の一部を日本が肩代りすることは、中共による小数民族弾圧と覇権国家化を間接的に支援する事と同じである。

政府は、補正予算で100億円を日中緑化交流基金に支出する予定である。PM2.5などの越境汚染を軽減できる、など正当化するような報道もあるが、砂漠に木を植えても、沿岸部で森林破壊を進めているのだから、日本への便益はない。そもそも中国による環境破壊を和らげるために日本の税金を使うなど、納税者をバカにし過ぎている。

日中緑化交流基金を活用している団体には、「○○日中友好協会」というローカルの親中団体が多い。「日中友好」を組織的に進めている団体は、日米の間を裂き、中国による日本の間接支配を目指しているものだ。これらの団体活動を日本の税金で継続させるのはおかしな話だ。