日本の歴史教科書では、かつてアイルランドで大飢饉が発生して、それがアメリカ大陸への移民を促進した事になっている。それは事実なのだが、当時のアイルランドの政治情勢については、あまり詳細には教えられていない。
アイルランドは17世紀にイングランド王国総司令官クロムウェルの侵略を受けイングランドの植民地となった。その後1801年にはイギリスとアイルランドが合併し、長くイギリスの統治が続く事になる。その後、アイルランドは20世紀に入ってからの独立戦争を経て、1922年には一応、独立する事になった。
アイルランドは100年以上もの間、イギリスの支配下に置かれる事になったのであるが、その間の顕著な出来事としては、ジャガイモ飢饉による人口減が挙げられる。アイルランドは18世紀後半から、じゃがいもによる栄養改善により人口が増加していた。しかしながら、食事がジャガイモに偏っていたため、1845年からの4年間にわたるジャガイモ不作により、約100万人が命を落した。ジャガイモ不作は欧州各国でも発生したが、それがアイルランドでは大飢饉となったのはイギリスの統治に責任があったと言われている。
さて、アイルランドではもともとアイルランド語というものが話されていた。ところが、現代においてアイルランド人は主に英語を使用している。アイルランド語に加え、英語も公用語だからである。アイルランド語はイギリスがアイルランドを統治していた約100年の間にほぼ消滅してしまっていたのである。イギリスによる統治下において学校教育の場でアイルランド語が禁止されていた事と、英語を話す方が社会生活の中で有利だった事が原因である。
韓国人は、日本による統治時代、ハングル文字と朝鮮語を奪ったと主張している。第二次世界大戦終了時に日本語を理解できる朝鮮人の割合が3割程度に過ぎなかったにもかかわらず、である。一方、アイルランドとは異なり、現在の朝鮮・韓国では日本語は使用されていない。朝鮮語が公用語である。韓国において日本語の使用が優先されるようになったのは終戦直前のわずかな期間であり、朝鮮総督府は基本的にハングル語の普及に尽力し、教育水準を向上させてきたのである。
左翼の先生達は、「日本は植民地支配で言葉まで奪った」などと韓国の主張を一方的に教育しているようだが、もっと世界史を隅々まで見て、広い視野で歴史を教えるべきであろう。