となり町戦争~ウイグルの悲劇

中国の新疆ウイグル自治区は、日本人にとっては中国の西の辺境の地というイメージが大半であろう。私の子供の頃は、「中国は多民族国家で、チベットやウイグルなどの民族は各自治区で民族自決権が与えられ、民族と文化が尊重されている」と理解していたものだ。

最近では「チャンネル桜」などの報道により、中国政府のウイグル族に対する弾圧が知られるようになってきている。例えば、学校ではウイグル語教育が禁止されている。また、ウイグル族はイスラム教徒が大半であるが、18歳以下のウイグル人がモスクに入る事を禁止するなど、宗教弾圧も進めている。

中国ではウイグル人女性を出稼ぎという形でウイグル自治区から中国の諸都市に移住させ、漢民族の男性と結婚させているそうである。他民族を男を弾圧し、その民族の女性を娶って自民族の混血を進めるというのは、征服王朝がやってきた侵略と同じだ。ウイグルの文化や誇りを消し去っていこうとする中国の政策に、日本の左翼は何も危機感を感じないのだろうか。

2009年にウイグルでは大規模なデモが発生し、中国共産党により弾圧される事件が発生、多くのウイグル人が犠牲となった。その後、ウイグル人に対する弾圧が継続しているが、当局の情報統制のため詳細は伝わらない。

日本共産党は、巧妙にもウイグル族の抵抗をイスラム・テロに結びつけようとしている。もちろん、露骨な形ではないが、赤旗では今年(2014年)発生した昆明駅の殺傷事件について、「ウイグル族のテロ」という中国側の発表を報道している。あくまで中国側の発表を正確に伝えたというだけで、日本共産党の主張は見られないが、ウイグルの問題はテロリストの問題という印象を与えようとしているようだ。

しかしウイグル人のテロリスト扱い赤旗だけではない。多くの一般紙が中国側の発表を引用する形式の報道により、そのような印象操作に結果として協力している。

そもそも、ウイグル問題については、集会や言論の自由がなく、西側ジャーナリストの取材が制約されている、というだけでも糾弾に値するはずだ。ところが、情報が絞られている事を良い事に、マスコミは中国批判は抑えている状況だ。

ウイグルでの出来事は、どこか他人事のように思える。「となり町戦争」といった雰囲気である。