参議院議員選挙は、自民党が過半数を取れず、民進党が健闘した結果となった。本当なら自民圧勝となるはずであったが、自民党の驕りと失策、そしてメディアの偏向報道により、取れるはずの議席を取れなかった。
今回の選挙では野党が憲法改正を争点に据えたが、結果としては、いわゆる改憲勢力が参議院の3分の2を占め、憲法改正の発議が可能となった。
選挙前には必死で3分の2阻止を訴えていた野党であるが、選挙後には安倍首相が改憲を争点にしなかったことなどを理由に、憲法改正が信任されたわけではないと主張しはじめている。
主要メディアも同様であり、国民が憲法改正に賛成した選挙ではないのだから、憲法改正の発議は国民の信を得てからすべきなど、おかしなことを言っている。おそらく、このような連中は、今回改憲勢力が3分の2に到達しなかったら、「国民が憲法改正反対の審判を下した」などと主張していたことであろう。
憲法改正を決めるのは、現憲法下では国民投票であり、国会ではない。国会は発議するだけだ。そして、おそらくその発議を最も恐れているのが、実は安倍首相である。
私は憲法9条は廃止すべきとの立場であるが、残念ながら国民世論は憲法9条維持派が多数である。つまり、今の状態で憲法9条改正の国民投票を実施したら、それは否決される可能性の方が高い。
もし憲法改正が国民投票で否決されたらどうなるか。安倍政権は即退陣を決めることになり、安倍首相の下で安定している現在の自民党政権は崩壊するだろう。
これはEU離脱に関するイギリスの国民投票を見れば分かる。残留派が敗北した6月23日の国民投票の結果を受け、キャメロン首相は辞意を表明した。EU残留に関する国民投票は首相が言い出し、しかもEU残留を訴えていたのだから、EU離脱の決定により、退陣を余儀なくされたのだ。
私が野党の指導者なら、今回の選挙結果を奇貨として、むしろ憲法9条改正の是非を国民投票に委ねるべく、憲法改正発議を与党に挑発する。国民投票に持ち込み、反対派が勝利すれば自民党政権を一気に壊滅させることが出来るからだ。
ただ、憲法9条を対象にした場合、公明党が反対する可能性がある。これに対しては、憲法96条に定める国会発議を成立させるため、野党議員の中からわざと造反者を出しても良いし、国会での投票ではうっかり賛成票を投じてしまっても良い。あるいは国民に信を問うため、本当は反対だが、国民投票を成立させるためあえて賛成した、と主張しても良いかもしれない。また、そもそも憲法96条で定める国会議員の3分の2以上の賛成とは、改正案への賛成ではなくて発議への賛成だと主張しても良い(事実、憲法の条文はあまりにも曖昧で解説書がないと理解できない)。
もちろん、国民投票の結果として憲法改正が決まってしまう可能性もあるが、そこは賭けだ。今後、中国共産党の軍事行動が続けば続くほど、北朝鮮がミサイル開発を進めるほど、憲法9条改正の機運は高まる。であれば、この段階で国民投票を実施し、憲法改正を否決すれば、今後しばらくは憲法改正の話題は消えるし、しかも政権奪取の可能性が高まるのである。
ただ、現在の安倍政権には相当な策士がいるようで、憲法改正発議への挑発にはのらりくらりと躱すであろう。政権崩壊のリスクがあまりにも高いからである。また、そもそも博打に打って出るような度胸のある指導者は野党にはいない。