鏡に向かって怒り狂う韓国民

2016年は激動の一年であったが、最後に韓国で不思議な民衆運動が勃発した。11月から12月にかけ、朴大統領の辞任を求めて大規模なデモが発生し、12月には大統領の弾劾訴追が決定され、韓国の政治が機能不全の状態になってしまった。

日本でもニュースで大きく取り上げられたが、韓国人が一体何に対して怒っているのか、客観的な視点で見ると理解できない人が多かっただろう。特定の民間人が国政に関与したというのが問題のようだが、どうして手のひらを返したように、突如として韓国人が一斉に怒り出したのか、なかなか理解に苦しむ出来事であった。

確かに朴大統領の疑惑は問題であったが、国民が怒り狂うほどのものではないし、デモで権力の座を引き摺り下される程度のものでもない。疑惑の内容というのはあまりに馬鹿らしいので、ここでは言及しない。要するに、弾劾訴追の原因自体にはニュース価値はない程度のものである。

韓国民が怒ったのは韓国人の社会そのものである。朴政権発足後の韓国は経済が停滞し外交も失策続きで、しかも韓国の威信を失墜させるような出来事が相次いだ。セウォル号沈没、大韓航空機ナッツリターン事件、リッパート大使襲撃事件、韓進海運破綻、サムスンGalaxy Noteの爆発など、プライド過剰の韓国人にとっては堪えられぬものであった。

プライドと言えば、韓国製品が世界市場を席巻し、韓流文化が流行する事で近年の韓国人は民族の優秀性に有頂天となっていた。世界の中での優秀民族、一流国家としての自己陶酔していたのが、最近の良くない出来事で不満が高まっており、そこに経済悪化が重なったため怒りが沸騰するには何かのきっかけがあれば良かったのである。

セウォル号を沈没させたのは朴大統領ではないし、韓国製スマホを爆発させたのも朴大統領ではない。韓進海運の破綻については政治の失敗もあるかもしれないが、基本的には韓民族そのものの特性により起された事件ばかりである。無責任な船長、傲慢な経営者、暴力に訴える愛国者、利益優先の企業など、韓国社会自体が韓国人を失望させているのである。だから気の毒なのは韓国大統領であり、大統領に向けられている不満は、実は自分達自身への不満なのである。