「共謀罪」法案でも不完全なテロ対策

「共謀罪」法案に野党とマスコミが反対している。「テロ等組織犯罪準備罪」の事であるが、実際には適用要件が厳しく、野党らが妄想しているような乱用は不可能な法案である。

共謀罪に反対する際に挙げられる論理の一つとして、世界中の国で共謀罪が導入されていながら、テロが続発しているという現状がある。イギリスでは共謀罪がありながら、過去3ヶ月に3度もテロリストの襲撃で一般市民が犠牲となった。

ロンドンで6月3日に発生したテロでは、犯人が当局の監視対象であったらしい。ヨーロッパで発生するテロでは、当局が危険思想の持ち主と知っていた人物が、結局テロを決行したという例が多い。つまり、ある人物がイスラム過激主義に傾倒している事を知っていたとしても、事前にテロを防止する事が出来ない状況が続いているのである。

これは、共謀罪には限界がある事を示している。つまり、個人の思想信条だけでは、たとえテロを肯定するような過激な内容であっても、当局は逮捕できないのである。

日本で成立を目指している法案よりも、はるかに適用要件が緩いイギリスでもそのような状態である。共謀罪によってあたかも個人の思想を理由に逮捕されるかのように宣伝されているが、共謀罪を持つ欧米各国の現状を良く見るべきであろう。

野党やマスコミは、相変らず安保法案や秘密保護法案の時と同様に現実離れした妄想を撒き散らしている。

昨年7月26日、相模原市の障害者施設を一人の男が襲撃し、戦後最悪と言われる殺害事件が発生した。

犯人の男は、障害者は社会にとって害悪という特異な思想を有していたが、おそらく同じ考えを持つ人間は、日本に少なからず存在するであろう。

さて、そのような思想の持ち主達が一同に集まったとする。障害者は社会の不要物であり、除外しなければならない、という考えを持つ者達である。やがて酒の席で相模原事件の犯人を英雄として持ち上げ、自分達も同じ事を・・・などと異様な会話で盛り上がる。

ある者はメンバーが全員移動できるよう、ハイエースを購入した。ある者は日曜大工用にホームセンターでハンマーやチェーンソーを購入した。ある者は全国の障害者施設マップを作成し、経営主体やら定員などの情報を集めた。

土日は障害者施設の周辺でピクニックである。会話の中で正義感が高揚し、自らの命を賭けてでもやり遂げるという意志で結束する。

そして、襲撃の日。

さて、このようなテロ行為は、日本の国内法で一体どの時点で防ぐ事が出来るのだろうか。今回の共謀罪が適用できる可能性は低い。第一に組織犯罪ではない。計画内容は不明確で準備行為も日常の活動と区別がつかない。このケースでは、施設に侵入した段階でしか逮捕は出来ないのだ。

しかし計画段階での逮捕を諦めて良いというわけではない。テロ等組織犯罪準備罪の適用は困難ではあるが、条件が成立する可能性もある。

野党の反対やマスコミの宣伝、国会では浮世離れした妄想が蔓延しているが、現実に起き得る脅威についてもっと想像力を働かせて議論すべきであった。