「共謀罪」に助けられる左派勢力

国会で6月15日に成立した組織犯罪処罰法は、「テロ等組織犯罪準備罪」を規定したもので、重大犯罪については準備段階で犯罪が成立するものである。重大犯罪は多岐にわたり、テロはその一つに過ぎないが、わざわざ「テロ等」と呼称しているくらいであり、テロの防止に一定の効果があると期待される。

テロが事前に防止される事で助けられるのは、実は法案に反対していた左派勢力である。テロが現実に発生した場合には、特殊な事情が無い限りは与党の支持率が上がり、野党、特に「リベラル派」と呼ばれる勢力の支持率が下がるからだ。不謹慎な発想ではあるが、一般論としてはそうなるだろう。

テロが全く発生しない平和な状況は、日本の平和が戦後70年以上もアメリカの軍事力で維持されてきた状況と同じで、空想的平和主義が蔓延し、「ヘイトよりラブ」と言った友愛思想が広がりやすい。

欧州では2015年のパリ同時多発テロ以降、イスラム系移民の大量流入にも拘らず同様なレベルの組織的なテロは発生していない。これは欧州がテロ対策を強化し、テロを計画段階で防止しているためだ。

時々ヨーロッパで「テロを計画したとしてテロリスト○名を逮捕した」というニュースが流れるが、これが共謀罪成立による逮捕なのかどうかはニュースだけでは不明だが、逮捕によってテロを未然に防止し、治安を維持している。

このため、これまで発生したテロは個人による突発的な通り魔事件ばかりである。結果として欧州では極右政党が伸び悩み、リベラル政党が政権を維持する傾向が続いている。同様に日本における平和の継続は野党にとって救いとなるだろう。

さて、上記に記載した「特殊な事情が無い限りは」の意味であるが、例えば右翼団体がテロを起した場合には、メディアが自民党政権と結びつける事は確実であり、その場合は野党の支持率が上昇するだろう。ただ我が国では右翼団体のテロは希少であり、可能性としては低い。

実際に起こり得る話としては、東京五輪などの国際舞台の場で、イスラム過激派など外国勢力によるテロが発生した場合は政権の不手際となり、与党側の打撃となるだろう。

テロ等準備罪は厳密な意味では共謀罪ではない。このため欧州のように「テロを計画しただけで」逮捕とはいかない。そもそもテロ防止が同法の最大の目的でもなく、これでテロが防止できるというわけではない。政府の説明が不十分であるため同法で国民が安心してしまっている恐れもある。政府は本法案成立で安堵する事なく、テロ防止に本格的に取り組むべきであろう。