核弾頭搭載の弾道ミサイル実験はあり得るか

前回記事では、北朝鮮の次回のアクションについて分析してみた。東京上空のミサイル通過と日本領海への落下が次回の突破ラインと予想しているが、より重要なのは大気圏内への再突入だ。たとえ日本のEEZや領海内に何かを落下させても、直前に燃え尽きたとなっては核ミサイルが完成した事にはならない。

では大気圏再突入の次は何であろうか。そこで対話が成立せず、北朝鮮が暴走するとしたらどこまで行くだろうか。国際社会が尚も軍事的解決に反対するかもしれないと北朝鮮が判断するギリギリの線が何かという事だ。

その一つとして考えられるのは、大気圏での核実験、それも弾道ミサイルに積んで飛ばし、大気圏に再突入させて爆発させる実験だ。今迄これをやった国は三カ国しかない。米国、ソ連、中国である。

日本の左翼の中には、北朝鮮の核実験も悪いがアメリカも散々核実験をやってきたでないか、と変な形で北朝鮮を擁護する者がいる。この論法でいくと、北朝鮮の立場からすれば、既に米露中が実施した事と同じ事をして何が悪いという事になるだろう。

米国、ソ連、中国の場合は中距離ミサイルによる実験だったが、北朝鮮が上記の実験をするには北太平洋まで飛ばす必要があり、必然的に長距離ミサイルとなる。中距離ミサイルだと日本近辺で核爆発となってしまうからだ。方向としては、8月29日のミサイル軌道に似たものとなるだろう。太平洋で海しかないところと言えば、日本と米国の間であろう。

長距離弾道ミサイルで核爆発を起せば、北朝鮮は歴史上ICBMで大気圏再突入させての核実験を成功させた最初の国となる。

ただし陸地が全くないエリアであっても貨物船や中国の漁船は通航している。太平洋で核爆発を起こすような事があれば、国際社会から強烈な非難を受ける事になり、国連の集団安全保障が発動されるだろう。

このため、上記のシナリオには無理があるが、核兵器による報復能力がある事を証明する事ができればアメリカとしては全てのミサイル発射施設を一気に潰すしかないため、可能性としてはゼロではない。

北朝鮮が核弾頭つきの弾道ミサイルを発射する可能性は非常に低いが、国際情勢の中でそれを強硬しても米国による軍事行使が正当化されない雰囲気であれば、可能性はゼロではない。