北朝鮮は前回の核実験(9月3日)から軍事的挑発を止めている。いつものパターンだと、短距離ミサイル実験などの小さな挑発から始めて徐々にエスカレートするという戦略を取るだろう。ただし中国共産党の党大会(10月18日)前後に軍事行動を起こすという報道もあり、自衛隊も緊張でかなり疲労してしまうのではないかと心配だ。
さて、衆議院選挙では北朝鮮問題があまり話題になっていない。外交や国防については政府批判をせず、政府を信用するという姿勢なら評価するが、野党の選挙戦術とマスコミの倒閣路線が北朝鮮問題を議論しないように仕向けている。
議論するとすれば、現政権の対応についてであろう。戦争というのはあり得ない選択肢だから、いずれは外交決着するはずであるが、そこに至る方法論と最終的な終着点についてはいくつか意見があるはずだ。野党やその支持者たちが主張する話し合いやら外交的解決というのは、その具体的な内容が明確でないと意味がない。
現在、北朝鮮と一番対話しているのは、実はトランプ大統領である。これまで西側諸国の品のある政治家は北朝鮮の野蛮な咆哮をずっと無視してきた。日本に対する罵詈雑言は金日成の時代から常軌を逸していたが、「またキチガイが何か言っている」程度に聞き流してきた。北朝鮮は一所懸命にメッセージを送っているのに、黙殺を続けてきたのだ。
トランプ大統領は歴代まれに見る下品な大統領であるが、実は人情味豊かで愛情に溢れている人物だ。普通の紳士ならシカトするはずのトラブルメーカーに対しても、きちんと喧嘩に応じているのだ。おそらく金正恩は現在幸福の絶頂であろう。悪口を言えば返事が必ず返ってくるのである。
安倍政権は経済制裁により北朝鮮を対話のテーブルにつかせようとしている。左翼は安倍首相の強硬路線を批判しているが、そもそも安倍政権が最初に着手したのが北朝鮮との対話であった。2012年、北朝鮮が米朝合意を破棄し核保有を宣言した後でも対話を続け、2013年に北朝鮮と国際社会が緊張を高まったにもかかわらず、2014年にストックホルム合意を結んだのだ。
その後の経緯を見れば、制裁を緩和する方式の対話がもはや不毛である事は明白であろう。
さて、対話の結末であるが、北朝鮮の核保有を一部容認する形の決着もあり得る。その時に激昂する国内世論を収める事が出来るのは安倍首相だけであろう。