経済産業省が画策する日中経済協力と習近平国賓来日

現在、政府が推進しているインフラ輸出の方策として、「第三国連携」というものがある。日本企業はどうしても高コスト体質なので、価格競争力のある他国企業と組んでインフラ輸出を実現しやすくしようとするものだ。この場合の他国企業とは、輸出先の国とは別の国の企業のことで、このため「第三国」という呼称を使っている。

現在、海外に事業展開している会社の多くが、進出先の会社だけではなく様々な国の企業と連携している。民間ではあたり前のことであるが、政府が税金で後押しするインフラ輸出では日本企業への裨益が求められる。政府支援の目的が日本の経済発展にあるのだから当然だ。しかし100%日本連合ではインフラ輸出がうまくいかないのが現状であり、経済界の要望もあって第三国連携というものが進められている。

さて、価格競争力があり、一定の技術力のある企業と言えば、何と言っても中国企業である。国の資料では第三国として米国やトルコ、インドなどが例示されているが、中核となるのは中国企業との連携だ。官民連携の名のもと、日本の税金で事業の調査を実施し、円借款で中国企業とそれと組む日本企業に受注させるのが第三国連携の目的である。

この第三国連携を主導するのが、持続化給付金の件で電通など民間企業との癒着が話題となっている経済産業省である。

ここで「日中第三国市場協力フォーラムについて(経済産業省2019年10月)」という資料を見てみよう。

2018年10月の第1回日中第三国市場協力フォーラムでは、北京の人民大会堂で安倍首相が挨拶をしている。日本政府として、中国政府とともに後押ししていく、との事。その年はトランプ政権がウイグル人強制収容所問題を取り上げ、国際社会の関心も高まっていたので、日本の行動は特異であった。ちなみに中国共産党は、次の年にイタリアの一帯一路参加を実現させている。

中国との第三国連携を進めている企業として資料に記載されているのは、伊藤忠、千代田化工、新日鉄、東芝、日本通運、三井物産、丸紅、吉本興業、みずほ銀行などである。

同資料によると、2020年春にも第2回の日中第三国市場協力フォーラムが都内で開催される予定であった。事務局長として和泉総理補佐官、経団連の久保田事務総長が予定されている。これは、当然ながら予定されていた習近平の国賓来日を前提としている。

中国企業との「第三国連携」は、具体的な事業を抱えている経済界にとっては中断できない相談である。したがって現状で習近平の国賓来日が白紙になりそうに見えても政権が財界に屈する可能性は高いのである。