在日韓国人の中には戦後に密入国してきた者が少なくない。民主党が在日朝鮮韓国人に選挙権を与えると主張した際、「在日の人々は強制連行されてきたのだから」という事を根拠としたため、ネットで次々に反論され、逆に在日韓国人が本当はどうして日本にいるのかについて正しい理解が進んだ。
しかしながら、ネットの一部の情報だけで、あたかもほとんどの在日が密入国してきたかのように勘違いする者もいるようだ。ネット情報の弊害であり、大半の在日韓国人は終戦前から日本にいた人達の子孫だ。
間違った情報で韓国批判をすると本当のヘイトスピーチになってしまう。正しい理解が必要だ。
さて、今回は法務省がかつて作成した「密入国白書」の紹介だ。出入国管理白書の事であるが、昔のマスコミはあえて「密入国白書」と呼んでいた。それだけ関心が深かったのだ。
戦後に出された出入国管理白書は、昭和34年以降おおむね5年おきに発行されてきた。
白書の統計には、朝鮮半島から密入国した者のうち、検挙された者の数が示されている。朝鮮人の密入国者については、戦後5年間の特殊な時期は除き、概ね1950年代は毎年2,000人、1960年代は毎年約1,000人という数字だ。
これらの密入国者は、国内で犯罪を犯した者とともに母国に送還する事になっていたが、政府は特別在留許可という仕組みを利用し、昭和49年の例では、概ね8割程度の送還対象者に特別在留許可が与えられている。特別在留許可というのは、送還すべき人に対し、法務大臣の権限で例外的に出される許可である。
今日まで何人の朝鮮人に特別在留許可を出したのかというデータは見つけていない。昭和50年以降は密入国者の数も減り、昔の新聞を見ても情報がないのだ。しかし言える事は、昭和40年でもその対象者は17,400人で、50万人程度であった終戦前から日本にいた朝鮮人の数と比較すると、割合としては小さい。
ところで、終戦前から日本にいた朝鮮人は、どうして祖国に戻らなかったのだろう。昭和39年の出入国管理白書では以下のように分析している。
朝鮮人は、終戦後、解放された祖国へ、大きな期待をもって引き揚げたのであったが、国土が二分され、経済再建が思わしくなく、生活の見通しのたたないことから、これなら日本の方がまだよいとて、逆航するものが多くなった。一方、その当時に、日本において相当に自由にふるまえたことも、その引揚熱をさます一因となり、それまでに引揚を準備したもので思いとどまるものが多かった。
ところで昭和60年代に入り、密入国者の数は急激に増大し、戦後の朝鮮人密入国者をはるかに上回る人数が大挙して日本に押し寄せるようになった。特に平成に入ってからの密入国者数は膨大な人数で、10年前の平成17年(2005)には11,586人が不法入国で検挙されている。不法上陸(中国人が大半)も含めると、その数は12,276人であった。
戦後は朝鮮人問題が国家の重大課題であったら、密入国者の問題は大きく注目されていた。しかし平成の密入国(不正入国・不正上陸)の方がはるかに大規模であり、その主役は中国人だ。
嫌韓で盛り上がるのは結構だが、今日の最大の課題は在日中国人だ。嫌韓の陰で膨れ上がる在日中国人が及ぼす脅威に、もっと関心を寄せるべきではないだろうか。