広島・長崎の悲劇を政治利用する者たち

7月24日の「朝まで生テレビ」は広島を会場にして核廃絶と安保法制について議論された。この中で広島の平和祈念公園にある原爆慰霊碑の文面が話題となった。『安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから』と刻んでいる、有名な碑である。

亀井静香が冒頭にこの碑を取り上げ、あたかも原爆の加害者が日本であるかのような文言に対して批判すると、左翼の参加者から、日本が行なった戦争が原因になっているのだから、原爆の被害は日本の責任である、とのいつもの主張が出された。

広島や長崎の平和団体と称する集団は、原爆被害者への祈りの場を、これまでGHQ史観の維持と左翼視点での政府批判に利用してきた。日本政府こそ原爆の加害者であり、国民はその被害者であって、天皇制がその根源である、という主張である。これを、原爆被害者への慰霊の機会に利用し続けてきた。今年の8月6日、9日もまた、慰霊に借りた反安保法制・反政府・反日宣伝がなされる事になるだろう。

昭和20年のあの日、身を焦がす熱線と強烈な爆風、燃えさかる炎が人々を襲い、痛くて、熱くて、渇いて、苦しくて死んでいった人々。彼らにとっては、その日で時間が止まっていて、その後の東京裁判も知らなければ、日本の復興も知らない。大日本帝国の国民として生きていた、あの日のままなのである。

そのような彼らの魂に対し、「苦しんだのはあなた方の祖父や父が戦争を始めたせいです。あなた方の息子達が戦争で人殺しをしたからです。」などと、毎年のように、左翼だけではなく、広島や長崎の市長、政治家までが語っているのである。これが慰霊を言えるのだろうか。

だから、亀井静香が指摘したように原爆慰霊碑の言葉は間違っている。「過ちは 繰返しませぬから」という文言は、削除しなければならない。慰霊の言葉にも政治的・思想的な主張を除く必要がある。

ところで、今回の「朝まで生テレビ」では、田原総一郎も、原爆を日本側に責任があるとする意見に反対している。安保法制の議論を、わざわざ広島の地で、しかも「平和」団体の関係者が出席する中で開催したのには意図があったはずだが、あえて左翼の反発を招くような主張をしたのはなぜだろう。

意識しているかどうかは不明だが、原爆慰霊碑の問題は、実は反米宣伝となっている。左翼に反対する意見を言っているふりをして、実は安保法制による日米同盟の強化に対して、「アメリカは原爆投下に対して謝罪すべきだ」とか「アメリカは許せない」という意見を引き出すための巧妙な仕掛けとなっているのである。つまりここでもまた政治利用しているのだ。

アメリカの謝罪には、あと30年は時の経過が必要であろう。それまでは、政治や思想を排除した祈りを続ける事だ。『苦しかったでしょう。つらかったでしょう。でも、許して下さい。あなた方の仇を討つことは出来ません。』

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