前回記事(日本の森林を買い漁る中国の緑化を日本の税金で進める奇怪)の続きである。日中緑化交流基金では、支那大陸で緑化事業を実施している団体に補助金を支出している。これは日本国政府が税金から出した基金である。基金といいながら、これは食い潰し型であり、運用益はない。そして、今回また税金から90億円支出する事になった。
補助金の額は、一つの事業につき2000万円までである。緑化のNGOがもらうには贅沢な額であるが、実際にこの補助金を利用している団体は限定的だ。そして、その中でも目立つのが一般社団法人 海外林業コンサルタンツ協会である。
この協会の会長は林野庁の出身だ。構成企業は、以下の通りである。
- 一般社団法人 林業機械化協会
- 一般社団法人 海外産業植林センター
- 公益財団法人 国際緑化推進センター
- 一般財団法人 日本緑化センター
- 朝日航洋株式会社
- 公益社団法人 国際農林業協働協会(JAICAF)
- 一般社団法人 国際開発機構(FASiD)
一般社団法人と公益法人で占められているが、それぞれの法人の下には林業関連の団体が会員となっており、おそらく日本の林業関連はこの集団で牛耳られているのだろう。もちろん、個々の企業や団体を悪く言うつもりはない。
ただ、支那大陸における植林を通した人材交流で、日本の森林の情報が中国共産党に伝わる効果に貢献しているとは言えるだろう。そして中共の息のかかった中国企業が日本の森林を買収するのだ。
さて、一般社団法人 海外林業コンサルタンツ協会は、日中緑化交流基金の補助金を受けて多数の活動をしている。幸い、そのWebページに実績が記載されていたので、以下にまとめてみた。
事業名称 | 時期 |
---|---|
中国寧夏回族自治区青少年教育・普及治砂防護林造成 | 2001-2003, 2006 |
中国河北省住民参加治砂防風林造成 | 2003 -2005 |
中国河北省漕河上流水土保持林造成 | 2007-2013 |
中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成 | 2005-2011 |
中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成(保育、育苗、普及) | 2011-2013 |
中国新疆トルパン黄砂抑制生活環境保全林造成 | 2006-2009 |
中国新疆吐魯番黄砂防止林造成計画 | 2009-2013 |
中国陝西省靖辺覆砂黄土地生態林造成 | 2007-2010 |
タクラマカン砂漠周辺ゴビ砂漠地における生態環境モデル林造成 | 2011-2013 |
これを見ると、毎年別々の場所で植林を実施しているのではなく、ある所での事業を数年にわたって継続している事がわかる。例えば、「中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成」なるものは、6年間継続し、その後は(保育、育苗、普及)という括弧を追加した事業を継続している。一件あたり2000万円とすると、この事業にはこれまで2億円が我々の税金から使われた事になる。
補助事業では上限まで使い切ることはないから、毎回2000万円という事はない。領収書を紛失するとか、安い航空会社を使うとか、そういう事があるから申請の時よりは安くなる。だから、上記で計算した2億円よりも実際は少ないだろうが、問題の本質ではない。多額の税金が、この社団法人の活動継続に投入されているという事実だ。
普通に考えると、この補助金は苗木と現地の人件費そして航空運賃が主たる内容と想像できるが、その実態は、残念ながら私には分からない。ただ、現地で購入した苗木と、現地で作業した労働者の人件費の領収書が信用できるものであるとは、とても思えない。
対中国ODAが国民の理解を得られないなか、その抜け道として利用されているのが日中緑化交流基金である。円借款と比較すれば金額は小さいが、一応返済義務のある円借款とは違い、中国側には返済の義務はない。当然ながら感謝の義務もない。利権の継続と日本における親中派人脈の形成に利用されているのが実態なのである。