現在、アメリカで進行中のBlack Lives Matter (BLM)運動は、一部の識者に文化大革命と例えられる程までに過激化している。もちろん大量虐殺をともなった文化大革命とBLMとを同一視するわけではなく、紅衛兵によるブルジョワ殲滅・伝統文化破壊の嵐が、BLM活動家による白人糾弾・偉人像破壊の運動に通じるのである。
BLMは米国のあらゆる個人・集団・組織に黒人尊重という価値観への同意を強制するものであり、わずかでも人種差別であるとBLM側が判断する者に対しては徹底して攻撃する事で人々を萎縮させている。差別をしているわけでもないのに、BLMに共感する声明を出さないというだけで人種差別主義者扱いされる風潮なのだ。
そのような中で、米国の言論界はちょっとした発言で糾弾されており、それには以下のような形態がある。
- 議論を呼ぶ内容を掲載したとして編集者が解雇される
- 内容が不正確という指摘で書籍が回収される
- ジャーナリストが特定の記事を書くことを妨害される
- 教授が授業で文学作品を引用したことで調査される
- 研究者が学術研究のピアレビューを回覧して解雇される
- 組織の責任者がわずかなミスを理由に追い出される
これらの事例は、反トランプ派の学者達が連名で出したレターに記載されているものである。
A Letter on Justice and Open Debate
この学者達はBLM運動に賛同するリベラル派であるが、一方で現実に起きている事に対して危機感を抱き、上記の声明を出した。リベラルな言論空間というのは、本来は自由な発言を認めたうえで議論を戦わせるものだ。BLMというリベラルには好ましいはずの動きが、現実にはリベラルの理念に反しているという状況に、反トランプ派も疑問を持っているのである。
アメリカでは赤狩りの歴史もあった。日本でも平成初期の頃までは戦後左翼による言論空間の支配が強力であり、今でも時折特定のテーマで言論封殺するケースもある事は注意しておくべきであろう。