南アフリカでは1990年代から今日に至るまで農家襲撃事件が社会問題として続いている。90年代後半から2000年代前半にかけて頻発した。昨年(2019)には552件の襲撃事件が発生し、そのうち殺人は52件であった。襲撃の内容は、暴力、殺害、強姦をともなう強盗である。
南アでは歴史的に農場を保有する農家は白人が大半を占める。このため南アの農家襲撃事件とは、黒人が加害者で白人が被害者という構図になっている。アパルトヘイト廃止と1994年に成立した黒人政権成立以降、少数派でありながら裕福な白人層が黒人に狙われているのだ。
この問題は、欧米の白人達の間で取り上げられるようになったが、リベラル派は即座に対応し、南アで農業経営する白人が黒人に殺されているという話をする者を白人至上主義者呼ばわりし、「ファクトチェック」と称して人種は農家襲撃事件とは無関係と主張するようになった。
農家襲撃事件の被害者には黒人農場主も存在するし、そもそも農家襲撃に関して南アは人種別の統計を取っていない。だから人種差別は動機ではなく、強盗が目的だ、というのがリベラル派の主張のようだ。
確かに南アの犯罪は元々凶悪であり、人種的憎悪があろうがなかろうが残虐なやり方で強盗するのが普通なのだろう。たまたま裕福な農家には白人が多いというだけかもしれない。
しかし、この論法は立場が逆な場合は全く通用しない。白人が黒人を殺害した場合、それはすぐに人種差別が原因と主張され、デモ隊により糾弾され、人種差別はやめましょうという反省文や声明文が白人社会から出てくるのだ。