今年に入り、欧米では中共によるウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と表現する政治家・活動家が増え、複数の国の議会でジェノサイドとして認定されるようになっている。
一方、日本国政府はジェノサイドとして認定していない。日本語ではジェノサイドを「虐殺」と訳される事から、強制収容所の存在でジェノサイドとは呼びにくいという事情もある。逆に言うと、多くのメディアが「大量虐殺」と訳しているのはジェノサイド認定させないための巧妙な世論操作であると言える。
そのような中、3月18日にyahooに掲載された田岡俊次の記事では「民族殲滅」と表現しており、Genocideの定義に近い。だが、その上で記事では中国共産党寄りの論を張り、米国はデマで戦争する国だから日本は慎重にしろ、という結論になっている。
記事ではウイグル人によるテロを強調し、収容者100万人という人数に疑問を呈し、強制収容所を就業教育だと言っている点など、よほどの親中派でなければ主張できないような内容を披露している。
同記事では「中国語を教える事が文化的ジェノサイドなら、米国が併合したハワイで英語を教えたのもジェノサイドだ」などと、相手の主張内容を勝手に変更して論じるという左翼得意の論法を展開している。一体全体、誰が「中国語を教えたからジェノサイド」などと主張しているのか。
後半ではアメリカが如何に偽情報で戦争ばかりしてきたか、という記述が続き、単にジェノサイドという表現を否定するだけではなく、ウイグル人弾圧という話自体を「デマ」と思わせるような構成となっている。ちなみに話の中でユーゴスラビア紛争の際の民族浄化を否定しているが、これが保守派論客の主張だったら、ちょっとした騒動になるだろう。
さて、現在ウイグルではアウシュビッツのような「虐殺」が発生しているわけでない。このため「大量虐殺」と訳されるような意味でのジェノサイドは発生していない。しかし国際社会は必ずしも物理的殺害ではない場合でも、ジェノサイドと見なす場合がある。事実、「ジェノサイド条約」では殺害以外でもジェノサイドと見なす場合を定義している。
中国によるウイグル弾圧は、アメリカが戦争準備のために創作したデマではない。田岡俊次はじめ、親中左翼はそのように印象づけたいのだろうが、ウイグルの実態は現地から命懸けで伝えられた様々な情報であり、衛星画像を根気強く調査した研究結果である。中国は当初強制収容所を否定していたが、様々な証拠を前にようやく再教育施設として存在している事を認めたのである。そしてウイグル問題を最初に取り上げた政権がトランプ政権であったが、その時には強制収容所を批判するだけの十分な証拠が揃っていたのである。
田岡俊次は、日本はアメリカに追従せず、「中国に対し中立的な調査団を受け入れるよう勧告することが得策」と述べているが、そもそも自由な取材が出来ない時点で隠蔽している事は明らかだし、調査団も行動が制限されて機能するはずがなく、結局は実現される事はなく、時間稼ぎに利用されるだけだ。