【福島原発トリチウム放出】科学が必要な時に役に立たない日本学術会議

4月14日、政府は福島原発の処理水放出を決定した。科学的見地から問題がないとの判断であるが、反対派は政府の説明は無視して徒らに非科学的な不安を煽っている。

今回のような科学的な判断が必要となる政策決定では、常に似非科学が広まり、場合によっては大きな政治勢力となって冷静な判断が出来なくなるケースが多い。その直近の例は武漢コロナウイルスである。

欧米、特にアメリカでは武漢ウイルスへの対応を巡って政治的主張が優勢を占め、科学的な観点からの理解が浸透せず、似非科学どころか陰謀論まで蔓延する事態を招いた。これはトランプ政権の対応にも原因があり、米国学術会議は反トランプとも言える声明まで発表し、科学的対応を取るよう主張した(なお、私は基本的にはトランプ支持派である)。

武漢コロナウイルスの場合は、まだ解明されていない事も多く、「科学的」とは言っても確実なものは僅かしかなく、「マスクが有効か否か」という点でさえ学者の間で意見が分かれていたため、仕方が無かったかもしれない。

一方、トリチウムが残された処理水放出については、韓国やフランスが垂れ流している処理水より遥かに安全な基準であるので全く問題は無いはずであるが、それでも一般の人はマスコミや反対派の主張と政府の主張のどちらが正しいか、判断するだけの科学的知識はない。このような場合、一般国民の大半が信頼する科学者集団があれば、その鶴の一声で帰趨は定まるだろう。そして、本来であれば、学術会議こそが、その信頼できる科学者集団の役割を果たせるのだ。

今回のケースで言えば、政府が日本学術会議に調査業務を発注し、各国原発の処理水濃度を調べ、韓国の原発から出る処理水の影響を日本近海で調査し、更にはトリチウムの拡散シミュレーション、生態系へのインパクトなどを精査し、公表する事が出来たはずだ。あの311から10年も経過しているのである。それ位の時間はあったであろう。

しかし、残念ながら日本学術会議にはその能力もなければ、国民からの信頼もない。どうせ左翼が牛耳って偏向した結果しか出さないと分かっているから、結局意思決定には何の役にも立たないだろう。

ちなみに米国学術会議は武漢コロナウイルス関連で様々な報告書やガイドラインを公表している。予算の規模が違うので比較はできないが、日本学術会議とは天と地の差ほどもある。

とりあえず低予算でも出来る事。日本学術会議は、韓国の月城原発などからの年間や月間のトリチウム放出量と、福島原発で予定している同じ期間の放出量をきちんと比較したグラフや地図を作成して公表する。そうすれば日本学術会議の信頼もある程度は回復できるであろう。