ミャンマー経由で支那の一路一帯に貢献する日本のODA(政府開発援助)

日本政府は、現在のところミャンマー軍に対する制裁を実施していない。国を対象とする経済制裁は、軍事政権を同国の政府と認める事になってしまうので判断が難しいと思うが、新規ODAは見送るとの事である。一方で実施中の案件については動静不明だ。

日本の円借款で進められている同国の大型事業として、「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業」がある。読売新聞によれば、円借款額1422億円だ。マンダレーはミャンマー第二の都市であり、ヤンゴンとの間には首都ネピドーが位置している。延長は約620kmで、旅客だけはなく貨物も走る。

この鉄道がミャンマーの経済発展に寄与する事は間違いないのだが、マンダレーは別の重要な路線の拠点都市である。すなわち、中国が建設支援を予定している、雲南省の昆明とベンガル湾に面するチャウピュ港を結ぶ鉄道の中間地点であるのだ。これは、「中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)」構想の一つである。

鉄道建設には一定の輸送需要が必要である。このため、第一段階としてマンダレーと国境のムセを結ぶ路線(431km)の調査が先行して実施されている。マンダレーからヤンゴンまでは円借款で整備されているから、ある程度の輸送量は見込めるであろう。

そして重要なのは、中国本土とベンガル湾を鉄道で結ぶ事になるマンダレー・チャウピュ港区間であるが、これは今年の1月10日に、ミャンマー・中国間で事業化調査実施についての覚書(MoU)が交わされている。

この動きはクーデター前の話である。ミャンマー国軍と中国の関係が論じられているが、軍事政権であろうが民主主義政権であろうが、ミャンマーが一路一帯に組込まれてしまう事は時間の問題であったのだ。日本が経済支援によってミャンマーの中国傾倒を止めさせる事には失敗していたのである。

地政学的に、東南アジアで鉄道や道路の建設は必然的に一路一帯の一部となる。日本は中国と競争して日本の影響力を確保しようとして、かえって中国に利益になるような事をしていると言える。

日本の円借款で、多くの鉄道技術者が育つだろう。そして彼等は一路一帯鉄道でその技術を発揮する事になるのだ。