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水1リットルに557000000個のトリチウムが含まれる

福島第一原発に貯蔵されている処理水には現在1000兆ベクレルのトリチウムが含まれている。その濃度は100万ベクレル/Lであり、通常の水の100万倍だ。これを、年間22兆ベクレル放出するのだから、一日あたり603万ベクレルの放出である。

つまり603万リットルの水に薄めれば、もとからある1Bqと加えて2Bq/Lの濃度となる。603万リットルは6,030m3だから、水深10mで25m四方の水量があれば良い。

ただし、同条件で1000兆ベクレルの量を一度に放出するには、水深1000mで1,000km四方のエリアが必要だ。結構な領域であるが、時間をかけて放出すれば約12年の半減期で減少していくので問題はない。

1980年、中国は大気圏内核実験を実施した。威力1メガトンの水爆実験であったとされるが、この場合は74京ベクレルのトリチウムが大気中に放出されたと推計される。福島第一原発に存在するトリチウム量の740倍の量である。ちなみに核実験によるトリチウムの総排出量は2.4垓ベクレルである。

大気圏内の核実験は1980年の中国による実験以降は実施されていないが、当時の雨の中には今の10倍から100倍の濃度のトリチウムが含まれ、また河川での濃度も3Bq/L程度はあった。その後は環境中のトリチウムの量は減少を続けている。

大気上空では宇宙線により年間約7.2京ベクレルのトリチウムが生成されている。通常運転時の原子力発電所からも排出されており、韓国の古里原発では年間52兆Bq、月城原発では年間136兆Bqとなっている。フランスとイギリスにある再処理施設は、更に大量のトリチウムを排出している。

福島第一原発の処理水は、トリチウムの濃度が1500Bq/Lとなるまで希釈して排出する。これはWHOの飲料水水質ガイドラインの7分の1という事であるから、飲めるのであろう。政治家がパフォーマンスとして、同濃度の水を飲むのが良いであろう。

【福島原発トリチウム放出】科学が必要な時に役に立たない日本学術会議

4月14日、政府は福島原発の処理水放出を決定した。科学的見地から問題がないとの判断であるが、反対派は政府の説明は無視して徒らに非科学的な不安を煽っている。

今回のような科学的な判断が必要となる政策決定では、常に似非科学が広まり、場合によっては大きな政治勢力となって冷静な判断が出来なくなるケースが多い。その直近の例は武漢コロナウイルスである。

欧米、特にアメリカでは武漢ウイルスへの対応を巡って政治的主張が優勢を占め、科学的な観点からの理解が浸透せず、似非科学どころか陰謀論まで蔓延する事態を招いた。これはトランプ政権の対応にも原因があり、米国学術会議は反トランプとも言える声明まで発表し、科学的対応を取るよう主張した(なお、私は基本的にはトランプ支持派である)。

武漢コロナウイルスの場合は、まだ解明されていない事も多く、「科学的」とは言っても確実なものは僅かしかなく、「マスクが有効か否か」という点でさえ学者の間で意見が分かれていたため、仕方が無かったかもしれない。

一方、トリチウムが残された処理水放出については、韓国やフランスが垂れ流している処理水より遥かに安全な基準であるので全く問題は無いはずであるが、それでも一般の人はマスコミや反対派の主張と政府の主張のどちらが正しいか、判断するだけの科学的知識はない。このような場合、一般国民の大半が信頼する科学者集団があれば、その鶴の一声で帰趨は定まるだろう。そして、本来であれば、学術会議こそが、その信頼できる科学者集団の役割を果たせるのだ。

今回のケースで言えば、政府が日本学術会議に調査業務を発注し、各国原発の処理水濃度を調べ、韓国の原発から出る処理水の影響を日本近海で調査し、更にはトリチウムの拡散シミュレーション、生態系へのインパクトなどを精査し、公表する事が出来たはずだ。あの311から10年も経過しているのである。それ位の時間はあったであろう。

しかし、残念ながら日本学術会議にはその能力もなければ、国民からの信頼もない。どうせ左翼が牛耳って偏向した結果しか出さないと分かっているから、結局意思決定には何の役にも立たないだろう。

ちなみに米国学術会議は武漢コロナウイルス関連で様々な報告書やガイドラインを公表している。予算の規模が違うので比較はできないが、日本学術会議とは天と地の差ほどもある。

とりあえず低予算でも出来る事。日本学術会議は、韓国の月城原発などからの年間や月間のトリチウム放出量と、福島原発で予定している同じ期間の放出量をきちんと比較したグラフや地図を作成して公表する。そうすれば日本学術会議の信頼もある程度は回復できるであろう。

The LINEの実験が目指す新しい都市の形態と宇宙開発

今、THE LINEが注目を浴びている。と言っても例の韓国人が純国産と偽って日本でサービス展開しているSNSの事ではない。サウジアラビアが建設を計画している170kmにわたる線形都市の事だ。人口は不明だが、従業人口は37万人としている。

THE LINEでは自動車は利用されず、線形の公共交通機関が主要な移動手段であり、駅の周辺は徒歩で5分以内の圏域に施設が集約された歩行者優先都市である。また再生可能エネルギーを利用しAIによる物流管理などを行なう環境都市である。

鉄道沿線に街を建設するのは、昔からの都市計画手法であり、日本でも私鉄が宅地開発と一体的に公共交通中心の市街地を形成してきた。しかしTHE LINEは自動車を完全に排除し、生活に必要な施設を徒歩圏内に配置するとともに、エネルギー供給の調整や物流をAI機能で実現するという、いわゆるスマートシティを目指すという点で野心的かつユニークな事業である。

THE LINEはサウジアラビアの砂漠に建設される。日本のように狭い国土ではなかなか新都市建設というのは難しい。国土の制約という点では、現在の日本はスマートシティだけでなく新幹線開発でも中国との競争で不利な状況だ。

人工的な線形都市というと、SFに登場する宇宙ステーションが思い浮ぶ。宇宙ステーションの場合は線の端と端が結ばれている円形となる訳だが、おそらく自動車は存在せず、円周沿いに循環する乗り物で移動し、降車後は徒歩での移動になるはずだ。THE LINEの成果は未来の宇宙ステーション設計に参考となるだろう。

日本は都市を舞台にした先駆的な実験が難しいのだから、宇宙開発分野に投資して、未来の宇宙空間での街建設へのビジョンを描いて欲しいものだ。