北方領土問題は日本がスターリニズムを認めるかどうかの問題だ

日本が抱える領土問題は、単なる国境線のギブアンドテイクの話ではない。正義とけじめ、そして先人達の苦難に思いやる心の問題である。その中で北方領土問題は、スターリン独裁によるソ連の横暴を日本が認めるか否かの問題であり、外交上のカードでもなければ、時の政治家が後世に名を残すかどうかの点数稼ぎの代物でもない。

ソ連は1945年8月8日、日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦を布告、満州への電撃的な侵略を開始した。支えきれなかった関東軍も問題ではあったが、ソ連軍は満州と朝鮮半島北部の日本人民間人に対し、虐殺、強制監禁、強姦などの罪を犯し、罪のない多数の日本人に地獄の苦しみを与えたのである。

日本は同年8月14日にポツダム宣言を受諾したが、ソ連はその後も侵略を続け、8月18日、停戦命令を受けていた千島列島の日本軍に攻撃を開始、その後9月1日までに北方四島を占領した。連合国軍が日本への攻撃を停止している中でも、ソ連は狂ったように日本の領土を侵し続けたのである。

東京裁判において、ソ連は解決済みだった1938年の張鼓峰事件と1939年のノ モンハン事件を取り上げ、「平和に対する罪」すなわちA級戦犯の訴追事項の一つとなった。

戦後、ソ連との間ではシベリア抑留というのが大きな問題であった。満州及び朝鮮半島でソ連軍の捕虜となった日本軍兵士の多く、何十万人という人々はシベリアに抑留され、強制労働に従事させられた。これについては1993年、エリツィン大統領が謝罪をしている。

ソ連の対日宣戦布告とその後の野蛮な侵略行為は、スターリンの卑劣・残虐な姿勢そのものだ。日ソ中立条約の一方的破棄は、ロシアという国が隣国として付き合える国ではないという事を意味する。北方領土はそのシンボルなのであり、後世の我々がビジネスライクなギブアンドテイクで解決するような問題ではない。

我が国政府は未だにプーチン大統領の訪日について言明していない。彼が訪日したところで日ソ中立条約破棄と、満州における非人道的な行為について謝罪するとは思えないし、謝罪したところで北方領土が返還されない限り無意味である。

前世紀の悪はファシズムである。その代表はナチスとスターリンのソ連だ。北方領土返還はファシズムとの闘いでもあるのだ。

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