日本人の正義感と共謀罪

今国会における共謀罪をめぐる政局騒乱は、自民党の支持率を大きく下げる要因となったが、同時に日本人の正義感がどの辺りにあるのか、というのを明確にした出来事であった。

アメリカでは共謀の事をConsipiracyと言う。これは日本語だと共謀と訳される他に、「陰謀」という意味もあり、実際アメリカでも二つの意味がある。後者はうさんくさい文脈で語られるが、前者の「共謀」は、アメリカでは許すべからざる犯罪の一つだ。

アメリカでは永く国内麻薬戦争の状態にある。麻薬との闘いのために強力な武器の一つが共謀罪である。武器とは言っても完璧ではないので、トランプがメキシコとの国境に壁をつくると言っている。だが、壁を作ったとしても共謀罪は残る。麻薬に関する共謀は、それだけで悪とするのがアメリカの正義だからだ。

マフィアが麻薬工場を建設する事を共謀し、実際に土地を購入したとする。アメリカ人の感覚では、それ自体が犯罪であり、実際に共謀罪に該当し、法に触れるケースである。

一方で日本の正義感はどうだろう。同じく暴力団員が麻薬工場を建設する事を共謀し、合法的にその準備を進めたとする。この場合、まだ麻薬を製造していない段階では犯罪とすべきではない、逮捕すべきではない、というのが日本人の正義感、より正確に言うと、共謀罪に反対していた人達の正義感である。

「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。」という伝えの影響だろうか。あるいは性善説を誇りに思う心情の影響だろうか。懲罰より更生を重視する思想なのか、とにかく今回の共謀罪を巡る騒動では、日本人の正義感というものの特徴が見えたと言える。

アメリカでは嘘ですら共謀罪の対象となる。日本の左翼の表現を借りれば、「アメリカ政府に嘘をつく相談をしただけで逮捕される」のだ。もちろん、これはテロ等準備罪に反対していた左翼の言い方を真似た極論であり、「居酒屋で冗談で言っただけで」逮捕されるという低レベルの法律ではない。連邦法第371条では、連邦政府に対する詐欺の共謀が犯罪となる。

Volkswagenの燃費不正では今年1月に幹部が逮捕されたが、その罪状は共謀罪であった。他に5人の元幹部も共謀罪で起訴されている。

アメリカでは日本人もConspiracyで逮捕されているケースがある。主として独占禁止法違反などの経済犯である。

アメリカの共謀罪はちょっと過激するぎるかもしれないが、彼等から見れば日本の対応は甘すぎるであろう。例えば、今回の法整備では、賄賂が共謀罪の対象となっていない。欧米人は、日本の企業は不正なやり方で儲けていると思っている。最低でもヨーロッパ並の厳しさにはしておく必要があるだろう。

また、テロに対する正義感を見れば、日米の違いは明白であろう。

北朝鮮の核実験に憤慨し、朝鮮学校を襲撃する計画を立てたとする。お前は一階、俺は二階、などだ。もちろん酒の席でつい興奮して計画したというレベルのものではない。共謀罪に反対する日本人の正義感としては、その程度の事で犯罪扱いにしてはいけない、という事であろう。もちろん監視対象にもすべきではないというのが彼等の正義だ。しかしこの場合は最低でも監視対象にはすべきであろう。

日本以外の国の正義感は違う。既に多くのテロが共謀段階で阻止されている。日本がわずかでも国際標準に近付いたという点で、今回のテロ等準備罪はある程度は評価できる。

なお、善人の正義感だけではなく、悪人の感覚も日本は異なる。暴力団が任侠と言われるように、日本の文化は国際感覚からは、ずれている。したがって、日本から在日朝鮮人、中国人を追い出し、外国人の流入を阻止して純粋な日本人だけの国土にすれば、共謀罪も不要となるだろう。

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