The LINEの実験が目指す新しい都市の形態と宇宙開発

今、THE LINEが注目を浴びている。と言っても例の韓国人が純国産と偽って日本でサービス展開しているSNSの事ではない。サウジアラビアが建設を計画している170kmにわたる線形都市の事だ。人口は不明だが、従業人口は37万人としている。

THE LINEでは自動車は利用されず、線形の公共交通機関が主要な移動手段であり、駅の周辺は徒歩で5分以内の圏域に施設が集約された歩行者優先都市である。また再生可能エネルギーを利用しAIによる物流管理などを行なう環境都市である。

鉄道沿線に街を建設するのは、昔からの都市計画手法であり、日本でも私鉄が宅地開発と一体的に公共交通中心の市街地を形成してきた。しかしTHE LINEは自動車を完全に排除し、生活に必要な施設を徒歩圏内に配置するとともに、エネルギー供給の調整や物流をAI機能で実現するという、いわゆるスマートシティを目指すという点で野心的かつユニークな事業である。

THE LINEはサウジアラビアの砂漠に建設される。日本のように狭い国土ではなかなか新都市建設というのは難しい。国土の制約という点では、現在の日本はスマートシティだけでなく新幹線開発でも中国との競争で不利な状況だ。

人工的な線形都市というと、SFに登場する宇宙ステーションが思い浮ぶ。宇宙ステーションの場合は線の端と端が結ばれている円形となる訳だが、おそらく自動車は存在せず、円周沿いに循環する乗り物で移動し、降車後は徒歩での移動になるはずだ。THE LINEの成果は未来の宇宙ステーション設計に参考となるだろう。

日本は都市を舞台にした先駆的な実験が難しいのだから、宇宙開発分野に投資して、未来の宇宙空間での街建設へのビジョンを描いて欲しいものだ。