左傾化していた日本

昔、と言っても高々30年くらい前であるが、1000円札の肖像画は伊藤博文であった。同じ頃一番高価な1万円紙幣は聖徳太子であった。これらはごく自然に利用されていて、特に問題となった事はない。だが、現在これらの人物を日銀紙幣に復活させる事は可能であろうか。恐らく不可能であろう。朝鮮・韓国人との軋轢、そして左翼の反対に直面する事を政府が恐れるからだ。

戦後、日本が最も左傾化していた時代はいつなのだろう。アメリカ占領下の時代はメディアがアメリカの支配下だったので、当時の様子を当時の記録だけから判断する事は妥当ではない。しかしながら、日本が昭和27年に主権を回復する前後の報道はそれ程劇的な変化が見られるわけではないので、当時の様子は当時のメディアの記録である程度想像できある。

以下の写真は、サンフランシスコ講和条約が締結される前に朝日新聞に掲載されたものである。良く見ると軍艦の模型が見える。子供達がそれを見ている。「軍国主義」が徹底的に糾弾されていた時代でも、子供達が軍艦オモチャに憧れる自然な姿は、朝日新聞でさえ堂々と報じられていたのである。その後、日教組が戦争オモチャを問題にするようになり、朝日新聞はその記事を掲載するようになった。

1951-07-25 朝日新聞

1951年7月25日:朝日新聞

昭和30年以降、自民党政権が長く続く事になるが、左傾化は静かに、そして確実に進んでいく。それが一気に大きな流れとなったのは、1980年代である。 伊藤博文が夏目漱石に変った時代、中曽根康弘は首相在任中に靖国神社を合計10回訪問している。その前には鈴木善行元首相が計9回参拝した。その後は小泉純一郎元首相が6回参拝したが、近年そのハードルは恐ろしく上がり、安倍首相は1回参拝しただけで、2度目の参拝はほぼ絶望的な状況だ。

1980年代、日本は左翼の歴史攻勢に一方的に押されていた。韓国や中国の外圧を巻き込む手法により、日本は謝罪する必要のないものにまで謝罪を続け、反日左翼の攻撃に耐えていた、そういう時代であった。教科書問題や韓国併合の解釈問題、そして本多勝一ら反日記者による南京大虐殺の捏造報道が続くが、その頂点が従軍慰安婦問題であった。

その後、社会主義の崩壊や北朝鮮拉致問題によって日本の左翼勢力は打撃を受けるが、一方で隠れ社会主義・共産主義者たちが、こっそり反共リベラル派のふりをして歴史問題について反日報道を続ける。共産党は凋落したが、反日左翼は1980年代の戦果を着実に拡大させていった。そしてその頂点が2009年の民主党政権の登場であった。 左翼によるメデイア支配の頂点であったとも言えるが、実は歴史問題で日本の左傾化が確実になっていく1990年代以降、インターネットの普及により正しい歴史を、より身近に学べるような時代となってもいた。そして既成メディアが軽視していたネットの情報が、一部のオタクだけのものではなく、既成メディアと同等の権威を持つようにもなっていたのである。

だから、2009年における民主党の大勝利と、その後数年での転落は、メディアの力関係の劇的な変化だったのでもある。

まだまだ心配な福島の使用済み核燃料問題

今月(10月)になって、ようやく福島第一原発4号機の使用済み核燃料棒が残り11体となった。と言っても、もともとあった1331体のうち1320体が消えたのではなく、別のより安全な場所に移送された、というだけの話だ。「だけの話」ではあるが、水素爆発で無惨な姿を晒した4号機の建屋が余震か何かで崩壊する事の恐怖を思えば、安心する話ではある。

週に22体ずつしか移送できず、ここまで来るのに1年を要した。当初はUFOキャッチャーなどと揶揄され、不安をかきたてる報道もあったが、無事終了しそうで何よりである。

しかし使用済み核燃料の問題はまだ残されている。1号機から3号機まで、まだ取り出されずに残されているのだ。1号機には292、2号機には587、3号機には514体の使用済み燃料が放置されたままだ。その数1393体。苦労して移送した4号機の使用済燃料よりまだ多い数が残されている。

福島第一原発の中長期ロードマップによれば、3号機からの使用済燃料取り出しは2015年度、1号機と2号機は2017年(検討中)となっている。これらは4号機と違い、ガレキが燃料プールを覆い、しかも放射線量が高いため、なかなか作業にとりかかれない。3号機では9月に吊り上げようとしてた機材が落下してしまうという、まさにUFOキャッチャーのような出来事があって、作業が遅れているようだ。1、2号機については全く分からない状況。

マスコミは汚染水の問題ばかり話題にするが、冷却水を通しての放射性物質の外部への放出というのは、上記の使用済み燃料プールでの事故、例えばプールの水が流出・蒸発して消えるとか、地震でプールの底が抜けるなどの事態で引き起こされる事故に比べれば大きな問題ではない。もしこのような事故が起きれば、作業員が現場に近づくことも出来なくなる事も考えられるからだ。

冷静に考えれば、通常の建築物より耐震性の高い原発の建屋が地震で崩壊するという事はない。しかし水素爆発で屋根や壁が滅茶滅茶になった光景を見ている国民としては、その建物のほぼ最上階に使用済燃料がプールの水にいつまでも浸っている、という状態は感情的に受け入れる事が出来ないものである。地震には大丈夫とは言っても、通常の原発に比較して日常の維持管理が制約されている状況なのである。

1、2号機の燃料プールからの燃料取り出しが2017年という事は、全て終了するのは2018年か2019年であろう。そう順調に行くとは思えないから、全ての使用済み燃料が移送されるのは、恐らく2020年以降になるのではないか。そうすると、これから数年はまだまだ不安が継続するばかりか、東京五輪の時期も何かしら一抹の不安を引き摺りながら過ごさなければならない。

反原発の動きも、全ての使用済み燃料が移送完了するまで収まる事はないだろう。反原発は反日左翼の隠れ蓑だから、反日政権復活の可能性も無いわけではないのである。

子供のオモチャにも難癖つけた日教組

毎日新聞のネット記事によれば、自民党の山谷えり子が、衆院内閣委員会で「日教組組織率と学力テスト結果は相関関係がある場合もない場合もある」と、民主党の泉健太議員の質問に回答したそうだ。日教組は子供の教育はそっちのけで政治活動をしている団体である。今年の春先も集団的自衛権の議論に関連して、平日の昼休みに街頭演説とビラ配りに忙しかった。だから日教組が強い所ほど子供の学力が悪くなるのは当然だ。もちろん、学力には様々な要因があるから、1対1の因果関係はそれ程明確ではないだろう。

日教組はGHQの工作のもとに設立された団体である。GHQは、日教組を通して、戦前・戦中の日本は軍国主義の悪で、アメリカは正義であるという洗脳を日本で展開するつもりだったのだ。一方で、日本は戦前から民主国家であった。それを否定したのだから、行きつく先は共産主義である。日教組は偏向した思想の左翼集団に占められてしまい、以後、変てこりんな事ばかり主張するようになる。

昭和26年に日教組は子供のオモチャにも文句をつけるようになる。ピストルやら戦車、戦艦などの子供用オモチャを「戦争オモチャ」として、その追放活動を始めたのだ。「青少年の世界から好戦的傾向を一掃する」というのが理由であった。

一方、朝鮮戦争の勃発で売れるようになったのが「戦争オモチャ」である。買い手はアメリカで、日本の製造業者に大量の注文をするようになった。日教組は「外国に売ることも戦争をあおることに変りはない」と難癖をつけていた。下の写真のようなブリキのおもちゃが、果して目の敵にするようなものであったであろうか。

1952-06-30 朝日新聞

戦争おもちゃ騒動はしばらく続いたようで、昭和27年9月に日本で開催された第二回世界仏教徒大会では戦争オモチャ追放が決議されたそうだ。ただ、子供用おもちゃ批判も限界があったようで、戦争オモチャは普通に流通していく。そもそも同じ敗戦国の西ドイツでも戦争オモチャは製造されていた。日本は品質の良い西ドイツ製おもちゃとも競争し、製造業の実力を蓄えていったのである。

ところでネット記事のキャプションは、「山谷えりこ「学力低い」発言打ち消し」とあるが、一瞬、何か差別的な問題発言でもしたか、と思ってしまう。中身は読まずに、「山谷えり子が何か問題発言をした」という印象を受けただけ、という人も多いのではないか。反日左翼メディアの常套手段である。

河野洋平の慰安婦強制連行コメントを否定した安倍内閣の度胸

読売新聞のネット記事によれば、10月21日、菅官房長官は共産党議員の質問に答える形で河野談話後に河野洋平が記者会見で「強制連行があった」旨の発言について、「そこは否定する」と述べたそうだ。

1993年に出された河野談話自体は変な文章で解釈に困るところがあるのだが、河野氏の記者会見での解説によって、当時の日本政府が朝鮮人女性を強制的に連行して慰安婦にしたのだ、という事を日本国政府が認めた談話、という位置づけになっている。安倍内閣は河野談話の見直しはしないと明言しているが、その間違った解釈は認めない、という立場なのだろう。

河野談話から20年以上、政府の側から誰もこの問題には触れようとしなかったのだから、大きな進歩である。と同時に、前回記事で指摘した良い子路線が難しくなる事を予感させる。何よりもアメリカを初めとする戦勝国が許さないだろう。

アメリカは第二次世界大戦で大量の日本人一般市民を虐殺した。それを正当化するのは戦争の大義であり、朝鮮民族の解放もその中に含まれている。占領期間中、米軍は在日朝鮮人に厳しい対応を取る事もあったが、それは朝鮮人が共産主義に毒されて日共と組んで暴れまわったせいである。だが、アメリカの戦争によって朝鮮民族を日本の軍国主義から解放してやった、というのが彼らの本音であり、そのためには日本の朝鮮統治が実に酷いものであった、と主張するのがアメリカの立場だ。

だからアメリカとの友好関係を継続するためには慰安婦問題は政府としては放置しておくのが一番良い。長期的には日本の国益を損ねるものだと分っていても、アメリカに反旗を翻すのは危険だと政治家は十分理解している。一方で菅官房長官の発言は諸外国の注目を浴びるのに十分であり、下手に対応すると、いつものように安倍政権がアメリカの工作で潰される危険性すらある。

今回の共産党の意図は明らかだ。第二次安倍内閣が看板とした小渕、松島の女性大臣が辞任に追い込まれ、消費増税で難しい局面にある政権に対し、歴史問題で挑発する事で踏み込んだ発言を引き出し、外国に向って騒ぎたてる事で政権を弱体化させようとする、従来からの典型的なやり方である。

それでも安倍内閣は、あえて強制連行を否定する、と明言した。国民世論が支持すればアメリカの圧力もかわせると判断したのだろうか。朝日新聞の記事訂正で慰安婦問題の真実をかなりの国民が知るようにはなったが、まだまだ世論の支援は不足している。朝日新聞はまだ謝罪していない、慰安婦問題を捏造し広めた反日左翼も主張を変えていない。あと一撃が欲しいところである。

「良い子」路線に失敗する安倍政権

安倍政権が閣僚の問題で危機に晒されている。比較的高い支持率を維持している安倍政権も、今年の春先は集団的自衛権の行使容認の問題で左翼メディアのプロパガンダ型報道の影響で打撃を受けたが、最近は何とか持ち直してきた所だった。

安倍政権は、平成21年(2009年)から続いた民主党政権があまりにも酷かった事を理由として高い支持率を獲得していたのだが、民主党の登場で日本社会が反日左翼に汚染されていた事に愕然とした新規の保守派の支持も大きかった事を忘れてはならない。本来、安倍政権は戦後レジームの脱却を掲げて登場したはずであり、その路線を進むべきであった。

戦後レジームからの脱却には、中国・韓国からの反発だけではなく、アメリカはじめ国際社会からの批判も覚悟しなければならない。それを恐れていてはいつまでも改革は不可能であり、いつかは必ず通過しなければならないのだから、中国や韓国、そして反日左翼のオウンゴールが続いている安倍政権下でこそ実施すべきである。

ところが、この政権は発足早々に大きな間違いを犯してしまう。東京五輪の誘致を成功させてしまった事だ。東京五輪が開催される事になったため、日本は世界に向けて、仲が良く、行儀良く、嫌われないような振舞いが求められるようになってしまった。

政権発足当初の期待とは違い、安倍政権は良い子路線を選択する事で政権を維持する事を選択した。安倍首相は、靖国参拝については結局1度だけで封印してしまい、河野談話の見直しも実施しない方針を明確にした。中国の尖閣領海侵犯に対しても及び腰で、アメリカの介入には従っている節がある。

欧米で安倍首相について言われている、歴史修正主義者とか極右とかのイメージを払拭する事が優先してしまっているようだ。実際には海外のイメージは朝日新聞はじめとする反日左翼メディアがつくり出しているものだ。

安倍首相が内閣改造で女性を多数起用したのも、良い子路線の一つである。そもそも女性議員自体少ないのに、無理をして女性大臣を任命したため、本来は安倍カラーは外れる女性も大臣になってしまい、一体何をしたい内閣なのかが分からなくなってしまった。高市早苗はともかく、日中議連の松島みどり、親中派と噂される小渕優子は疑問だ。

そして良い子になろうとして組閣した内閣が、実は現政権にとって大きなリスクとなっている。うちわ問題はどうでも良いが、小渕経産相の政治資金問題は安倍政権にとっても大きな痛手となる。大臣を辞職する程の問題だったとすれば、どうして安倍首相は事前に把握できなかったのだろう。

この問題は、女に先を越された自民党議員の嫉妬からリークされたのかもしれないし、日中関係を潰したい勢力(韓国派議員?)が仕掛けたのかもしれないし、単に民主党の手柄だけなのかもしれない。消費税論議を邪魔して増税を実現させたい官僚が裏にいるのかもしれない。ひょっとしたら安倍政権を潰すための中国当局の深慮遠謀で、実は小渕氏自身共犯なのかもしれない。いずれにしても、安倍政権には良くない状況だ。

今後とも、安倍政権は良い子路線を進める可能性が高いが、その代償は大きい。今の日本にとっての良い子路線というのは反日勢力に対する政治的妥協でしかない。では、その目的は?

安倍首相があらゆる譲歩をしてでも実現させたい事。それが見えない。