ラジオ自由アジア(RFA)依存のウイグル報道

昨日(5月14日)、各紙でラジオ自由アジアの報道を引用する形で、以下のような報道がなされた。各紙似たようなものだったので、一つだけ掲載する。

中国・新疆で自爆、6人死亡か 検査所攻撃、2百人拘束
【北京共同】米政府系放送局、ラジオ自由アジアは14日までに、中国新疆ウイグル自治区のホータン地区ロプ県で11日夜と12日朝に連続して、同じ安全検査所を狙った自爆攻撃があり、容疑者3人と警察官3人の計6人が死亡したと伝えた。
容疑者は18〜20歳の地元住民。ウイグル族女性のスカーフ着用や、男性のひげなどを規制していた検査所に不満を募らせた可能性があるという。
警察は事件後、容疑者の親族など200人以上を拘束し「計画的かつ組織的な事件」として捜査しているという。
検査所近くには拘置所や病院があるが、一般市民にけが人はなかった。
2015/05/14 11:56 【共同通信】

朝日新聞や毎日新聞は、中国における民族弾圧のニュースは流さないようにしている印象があるが、最近では外国メディアの報道を引用する形で報道しているようだ。今回の報道に関しては、特に偏向という事はなく、淡々とラジオ自由アジアの報道を伝えている。産経新聞も似たようなものであった。

ラジオ自由アジア(Radio Free Asia)というのは、アメリカの対外宣伝のためのラジオ番組で、中国語、広東語、ウイグル語、チベット語、朝鮮語、ベトナム語、ラオス語、クメール語、ビルマ語で放送されている。インターネットニュースもある(www.rfa.org)が、日本語や他のアジア諸国の言語での報道はない。

これだけの言語による報道と、現地での取材力を見ると、情報分野におけるアメリカの国力を見せつけられているようであり、日本の取材能力の貧弱さと対比するとがっかりしてしまう。朝日新聞や毎日新聞ですら、ウイグルやチベットでの報道を流せないというのでは、日本が対中国外交で優位に立つのは難しい。それほど中国の情報統制が中国自身の国益となっているという事であるが、民主国家である日本ではそれに対抗する手段はなく、中国によるメディア操作にやられ放題である。

ウイグル情勢が、アメリカの傀儡放送機関に依存しなければならないというのは困った状況である。たとえ中共の監視下にある報道であったとしても、現地に行って映像を撮り、インタビューをして、現状を伝える勇気ある報道機関は日本には無いのだろうか。それが中共に都合の良い映像であったとしても、そこから真実が見えてくるはずだ。

ところで、BBC経由によるウイグル、チベット報道が少ないは、私の勘違いであろうか。最近の欧州は中共の軍門に降っており、かつて西側陣営として社会主義国の中国における人権批判を強め、対中弱腰の日本メディアとは際立った対称性を見せていたが、最近ではむしろラジオ自由アジアを引用する日本メディアの方がウイグルやチベットに着目しているような感じがする。あくまで個人的な印象なので、プロの判断は違うかもしれない。