ラマダンに断食禁止という宗教弾圧、トルコに逃れるウイグル民族

今年もイスラム諸国ではラマダンの季節が訪れた。ラマダン(断食月)はイスラム教徒にとっては大切な宗教上の行ないで、今年(2015年)のラマダン入りは6月18日だった。断食とは言っても、昼間だけであり、日の出前と日没後は食事をする。

ラマダン期間中はタバコも吸えない。だからイスラム教徒でない人にとっては迷惑な習慣であるが、普通の国ではラマダンを禁止するようなこともなく、今のところイスラム教徒が多く移民したヨーロッパでも何とかラマダンもできるようだ。

ただし、中国では事情が異なる。中国政府は、イスラム教徒のウイグル人が多く住む新疆で、ラマダン中の断食を禁止している。これは昨年のラマダンの時にはニュースになったものであるが、今年もやはりラマダンを禁止したようだ。と言っても英語のサイトで発見したものであり、日本語のニュースサイトでは報じられていない。

禁止とは言っても適用範囲があるのだが、これは毎年のように強化されているようだ。今年は、すくなくとも党員と公務員、そして先生と生徒はラマダンには参加していはいけない。生徒というのは奇妙だが、中国政府はすでに18歳未満の宗教への参加を禁止している。ラマダン期間中、レストランは昼間は休業であるが、中国政府は飲食店に対してラマダン期間中でも開業する事を強要している。

これに先立ち、中国政府はウイグル人の小売店に対し、酒とタバコを販売するよう命令した。昼間に断食しようがしまいが、自分の店で酒・タバコを売ろうが売るまいが本来自由であるはずだ(売る場合にはしかるべきライセンスが必要だが)。中国共産党は、ウイグル人社会から宗教を少しずつ削り取っていき、民族としての一体性を葬り去ろうとしているのである。

イスラム教徒にラマダン中の断食を禁止する、というだけでもウイグル人に対する弾圧がいかに厳しいかが分かるが、事態ははるかに深刻である。絶望したウイグル人が次々に国外に亡命しているのである。監視の厳しい新疆からどうやって亡命するのかというと、漢民族の警官に賄賂を渡して何とかベトナムやラオスなどの国境まで辿りつき、そこから何とかしてマレーシアまで移動し、そしてトルコを目指すのである。トルコ人はもともと中央アジアから西に進んできた人達であり、民族的に非常に近いからである。

ところが、途中でベトナムやカンボジアで密入国者として逮捕されると、中国に送還されてしまうのである。目指す国がトルコであり、トルコが受け入れる準備があるなら、中国に送還する必要はないはずだ。理由は不明だが、一旦中継国となると亡命者が殺到するようになる事を恐れてではないだろう。中国を恐れているのである。

現在、タイには何百人というウイグル人が収容されたままの状態にある。ラジオ自由アジアは、無事トルコ入りした少女が、タイで拘束された家族を自由にして欲しいというメッセージを掲載しているが、日本のメディアではまだ注目されていない。最近ではロヒンギャ族がミャンマーから迫害されてタイに流れつくニュースが多いが、ウイグル亡命者のことが注目される事はない。途中でウイグル人だという事が分かると祖国の家族に危害が及ぶため、彼等はメディアを通じての同情に訴える事も出来ないのである。

中国政府は、ウイグル人にはパスポートを発給しない。新疆から東南アジアを経てトルコに辿りつくのは途方もない冒険であり、途中で捕まったり死亡したりする危険はかなり高いだろう。それだけ漢民族のウイグル支配が苛烈である証拠であるのだが、日本のメディアは中国政府の取材統制を口実にウイグル問題については黙殺している。特に最近は左翼メディアにとって安倍政権打倒の重要局面であり、わざわざ中国共産党の危険性を伝えるような事はしないのである。