4月5日に王毅外相と茂木外相が電話会談した。日本国内では日本側がウイグル問題などで「深刻な懸念」を伝達した事を中心に報じられたが、海外メディアは中国側が「大国間の対立に関わるな」と日本側に警告した事に注目している。
日本でもyahooニュースを通して、Wow! Koreaの『中国外相「日本よ、“大国の対立”に関わるな」』、朝鮮日報が『中国・王毅外相、日本の茂木氏に「米中の大国対決に干渉するな」』と報じている。
今回のニュースに関しては、海外メディア、特に韓国メディアの対応が核心を突いている。冷戦構造の崩壊後、中国は急成長し、現在の世界は米中の二大覇権国によって世界が二分されている状況にある。それは中国が目指していた世界であるし、残念ながらそれが実現している。
しかし、アメリカと中国では、その勢力圏の形成に大きな違いがある。アメリカは確かにリーダー国ではあるが、同盟国や同じ価値観を有する国家との間に上下の概念はない。一方で中国が念頭にあるのはかつての中華思想、すなわち小国はその分際を弁え、大国に尽せという上下関係に基づく秩序である。
この意味で韓国が今回のニュースで王毅外相の発言に着目したのには十分な理由がある。かつて李氏朝鮮は事大主義に染まり、大国である清王朝に対し、小国として逆らわず、属国としての立場で振る舞う事が正義であった。いわゆる「東方礼儀之国」としての誇りであり、明治の日本政府を悩ませた思想であった。
清と朝鮮の大国・小国関係を終わらせたのは日清戦争であり、日本が中華秩序を破壊した成果として朝鮮は大韓民国として、国際社会で対等な地位を持つ国となった。
「大国間の対立に関わるな」というのは、つまり小国は大国のやる事に口出しするな、それが礼儀だぞ、という事である。日本はこの発言に対して抗議すべきであった。
中国は、一方では「中国外交は一貫して、国の大小を問わず、すべての国が平等である原則を実行している。(2021/1/12、王毅)」と宣伝しているが、真っ赤な嘘である。小国は大国に従えというのが日中外相電話会談でのメッセージであり、茂木外相はその事に気がついていなかったのだ。
習近平が目指すのは、中華秩序の形成であり、それは周辺の小国は大国である中国の言動に口出しを許さず、国際社会のルールを中国が決定し、小国がそれに従う世界である。また中国国内の問題には干渉させないが、宗主国として周辺国の内政には関与していくのがその姿である。
日本国内にいる100万人の中国人は、その一人一人が中華秩序形成のために存在している尖兵であり、現在日本が最も警戒すべき危機でもある。