五輪で北方領土アピール、そして尖閣の危機

今日(4月6日)のニュースによれば、サーフィンのロシア代表チームが北方領土で合宿し、領土アピールをしたとの事である。東京五輪は7月に予定されており、日本は参加国とは友好ムードを維持する必要があるため、抗議は難しいだろう。

現在、国後島はじめ北方領土にはロシア人が居住しており、今回の件だけを取り上げて大騒ぎするというのは微妙な判断である。しかし、これは巧妙にも中国の尖閣における行動を正当化する要因となるだろう。

1960年の東京オリンピックでは、同年に中国が核実験を実施した。広島、長崎で多数の命を失なった被爆国日本は、オリンピック成功の観点から強い抗議も出来ず、その後、中国は核大国となっていく。

バイデン政権になってウイグル問題を中心に米国が対中強硬姿勢を示し、世界的にもウイグル人に対する中国共産党の弾圧をジェノサイドとして認定し非難する動きがある中、日本は東京五輪の成功のため周辺国との軋轢は避けたい状況である。日本のこのような姿勢は中国にとっては大チャンスであり、日本がぶち切れるギリギリの所を狙って、今後の既成事実化に有利となる行動を中国は取るであろう。

ウイグル問題で中国を批判する日本企業に対する制裁、嫌がらせは続くだろうし、日本人に対するスパイ容疑での逮捕も継続するかもしれない。香港での支配力強化、ウイグル人再教育施設の正当化、モンゴル人に対する漢化政策、チベット仏教への介入など、国際的に非難を浴びる行動も、日本が不問としてくれる程度を試す行動をするだろう。

そして、何よりも危険なのが尖閣情勢である。オリンピックの開催にあわせて尖閣で行動を起こされたら、日本はどう対応するのか。漁民が遭難したので一時上陸した、程度なら五輪の友好ムードを壊してまで日本は抗議しないのではないか、など中国は周到なシミュレーションをしているであろう。

日本は関係悪化を避けて中国を刺激しないようにしてきたが、日本側にとって事態は年々悪化しており、均衡状態が常に中国側に有利な方向に動いている。平和主義者の「相手を刺激しない事」や経済界の企業活動優先、そして親中派の中国共産党とのコネクション維持が、すぐにも起こると予想される日中戦争の素地を形成しているのである。