ミャンマー国軍クーデターとアジア人差別の背後にあるキリスト教の西欧主義

ミャンマー国軍がどうして国民に銃を向けてまで権力に固執するのかを理解するためには、彼等の立場になって、そのイデオロギーを理解する必要がある。

ミャンマーにおける国家権力の正当性はイギリスによる植民地支配からの独立運動にある。これを主導したのがミャンマー国軍であり、軍人らが国政を握ってきた根拠である。

イギリスはイスラム教徒をビルマの地に流入させ、カレン族をキリスト教に改宗させるなどミャンマーを多民族・多文化させ、民族分断による植民地支配を進める。多数派民族を悪者にし、その文化を破壊する一方で、少数民族を重用して多様性を強制するという西欧の植民地主義である。

ミャンマーは1948年にビルマ連邦として独立するが、イギリスは植民地時代の圧政は無視してビルマの軍事政権を非難するようになる。国際社会は英国人と結婚したアウン・サン・スー・チーを英雄として持ち上げたが、独立の歴史を知る者からすれば西欧社会の一貫したビルマ族敵視としか見えない。

おそらくミャンマー国軍のイデオロギーにあるのは、植民地時代の屈辱と闘争の歴史観であり、国家の軍隊というよりは、被害者妄想が原動力となっている宗教集団となっている。

植民地時代に支配地における多数派民族を弾圧し、少数派育成による民族分断と多民族化、そして白人男性と現地女性の混血による民族浄化、これらを進めてきたのは西欧キリスト教社会であり、そして第二次世界大戦以降、今度は人権を語って旧植民地における後進性や野蛮性を非難しているのも西欧キリスト教社会である。

現在、アメリカで問題となっているアジア人差別も、西欧キリスト教の価値観に源流がある。彼等はイスラム教社会を変革させる事は出来なかったが、アジア社会(ミャンマーより東)についてはキリスト教化する事で植民地支配を可能とした。朝鮮半島におけるキリスト教の布教もその一貫であり、日本人と朝鮮人の分断を図る西欧キリスト教の侵略方法なのである。

アジアの黄色人種は、彫りの深い顔付きの白人やアラブ人、アフリカ北部の黒人の集団から見れば異質な存在であり、生理的に差別の対象であるだけでなく、見た目は劣等であるのに頭脳がそこそこ優秀という点で西欧キリスト教社会には不快な存在だ。

アジア人社会では前近代的な倫理観に支配され、女性差別が横行していて、個人より集団で行動するという近代西欧価値観とは乖離している、というのが西欧キリスト教社会の偏見であり、差別意識である。この思想はアメリカの黒人にも伝播し、同国のアジア人差別にも影響している。

BBCなど欧米メディアが日本を差別主義者扱いする時のリベラル視点は、アメリカで白人や黒人がアジア人を差別する時の感情と根が同じなのだ。そしてミャンマー国軍はキリスト教社会の偽善性を知っており、被害者意識のイデオロギーで内部を思想統制しているのである。