左翼経由の反ユダヤ

冷戦時代の頃、サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)のオルテガ議長は左翼の憧れだった。もう少し時代は古いが、一般にはチェ・ゲバラの方が有名かもしれない。時代は共産主義対資本主義の対立。日本の左翼達は米帝国主義に立ち向かう闘士達に傾倒していった。

その流れは自然とパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の傾倒へと向う。米国と密接な関係にあるイスラエルに対抗するゲリラ組織である。日本の左翼は、国内では憲法9条を守れだの戦争反対だの叫んでいたが、心情的にはこれらゲリラ組織を応援していた。当時赤旗の愛読者だった私がそうだったのだから間違いない。

当時は、左翼の側にいれば、イスラエルのユダヤ人は米帝国主義の助けを借りてパレスチナ人を弾圧している許せない連中だ、という考えに至るのは当然であった。そしてその発想は反ユダヤの思想に結びついていくのである。

これは思考経路は奇妙である。左翼というのは、反ナチスのはずだ。それが反米を経由して反ユダヤになるのである。思えば、これも時代は古いが、イスラエルを敵に回した日本赤軍というのは、そういう左翼思考が陥いる当然の結論に行きついた連中だったのだろう。

今日では左翼による反ユダヤは顕著ではない。これは過激派が衰退した事が原因であるが、左翼側の戦略も影響している。それは、韓国や中国の利益になるように、ナチスのホロコーストと旧日本軍の戦争を結びつける事である。

今年、図書館にある「アンネの日記」の頁が多数破り取られるという事件が発生した。左翼メディアや左翼評論家、韓国などは、これを日本の右傾化と結びつけるような論陣を張った。韓国は何としてでも自民党政権を打倒したいため、特にナチスやネオナチと日本の保守層を同一視するような世論形成に必死である。

現在、イスラエルによるガザ地区の攻撃が続き、多くの人命が失なわれている。ところが日本のメディアでは日本で抗議のデモが発生しているというニュースを伝えていない。集団自衛権の議論の時に散々戦争反対を叫んでいた左翼はどこに行ったのだろう。現在、ガザ地区で進行中の事態こそ、左翼が最も恐れている出来事ではないのか。

ひょっとすると、国内の反日勢力が目指しているユダヤ人社会と自称従軍慰安婦との連携が崩れる事を恐れているからではないのか。安倍政権はじめ保守派にナチスのレッテルを貼るために、反イスラエルに躊躇しているのではないか。

集団的自衛権の行使容認に反対していた左翼は、パレスチナ人の命を守るためにアラブ諸国が軍を動かす事には賛成できないはずだ。だとすれば、日本の左翼は今こそイスラエルに抗議すべきなのではないだろうか。

アイルランドの言葉を奪ったイングランド

日本の歴史教科書では、かつてアイルランドで大飢饉が発生して、それがアメリカ大陸への移民を促進した事になっている。それは事実なのだが、当時のアイルランドの政治情勢については、あまり詳細には教えられていない。

アイルランドは17世紀にイングランド王国総司令官クロムウェルの侵略を受けイングランドの植民地となった。その後1801年にはイギリスとアイルランドが合併し、長くイギリスの統治が続く事になる。その後、アイルランドは20世紀に入ってからの独立戦争を経て、1922年には一応、独立する事になった。

アイルランドは100年以上もの間、イギリスの支配下に置かれる事になったのであるが、その間の顕著な出来事としては、ジャガイモ飢饉による人口減が挙げられる。アイルランドは18世紀後半から、じゃがいもによる栄養改善により人口が増加していた。しかしながら、食事がジャガイモに偏っていたため、1845年からの4年間にわたるジャガイモ不作により、約100万人が命を落した。ジャガイモ不作は欧州各国でも発生したが、それがアイルランドでは大飢饉となったのはイギリスの統治に責任があったと言われている。

さて、アイルランドではもともとアイルランド語というものが話されていた。ところが、現代においてアイルランド人は主に英語を使用している。アイルランド語に加え、英語も公用語だからである。アイルランド語はイギリスがアイルランドを統治していた約100年の間にほぼ消滅してしまっていたのである。イギリスによる統治下において学校教育の場でアイルランド語が禁止されていた事と、英語を話す方が社会生活の中で有利だった事が原因である。

韓国人は、日本による統治時代、ハングル文字と朝鮮語を奪ったと主張している。第二次世界大戦終了時に日本語を理解できる朝鮮人の割合が3割程度に過ぎなかったにもかかわらず、である。一方、アイルランドとは異なり、現在の朝鮮・韓国では日本語は使用されていない。朝鮮語が公用語である。韓国において日本語の使用が優先されるようになったのは終戦直前のわずかな期間であり、朝鮮総督府は基本的にハングル語の普及に尽力し、教育水準を向上させてきたのである。

左翼の先生達は、「日本は植民地支配で言葉まで奪った」などと韓国の主張を一方的に教育しているようだが、もっと世界史を隅々まで見て、広い視野で歴史を教えるべきであろう。

となり町戦争~ウイグルの悲劇

中国の新疆ウイグル自治区は、日本人にとっては中国の西の辺境の地というイメージが大半であろう。私の子供の頃は、「中国は多民族国家で、チベットやウイグルなどの民族は各自治区で民族自決権が与えられ、民族と文化が尊重されている」と理解していたものだ。

最近では「チャンネル桜」などの報道により、中国政府のウイグル族に対する弾圧が知られるようになってきている。例えば、学校ではウイグル語教育が禁止されている。また、ウイグル族はイスラム教徒が大半であるが、18歳以下のウイグル人がモスクに入る事を禁止するなど、宗教弾圧も進めている。

中国ではウイグル人女性を出稼ぎという形でウイグル自治区から中国の諸都市に移住させ、漢民族の男性と結婚させているそうである。他民族を男を弾圧し、その民族の女性を娶って自民族の混血を進めるというのは、征服王朝がやってきた侵略と同じだ。ウイグルの文化や誇りを消し去っていこうとする中国の政策に、日本の左翼は何も危機感を感じないのだろうか。

2009年にウイグルでは大規模なデモが発生し、中国共産党により弾圧される事件が発生、多くのウイグル人が犠牲となった。その後、ウイグル人に対する弾圧が継続しているが、当局の情報統制のため詳細は伝わらない。

日本共産党は、巧妙にもウイグル族の抵抗をイスラム・テロに結びつけようとしている。もちろん、露骨な形ではないが、赤旗では今年(2014年)発生した昆明駅の殺傷事件について、「ウイグル族のテロ」という中国側の発表を報道している。あくまで中国側の発表を正確に伝えたというだけで、日本共産党の主張は見られないが、ウイグルの問題はテロリストの問題という印象を与えようとしているようだ。

しかしウイグル人のテロリスト扱い赤旗だけではない。多くの一般紙が中国側の発表を引用する形式の報道により、そのような印象操作に結果として協力している。

そもそも、ウイグル問題については、集会や言論の自由がなく、西側ジャーナリストの取材が制約されている、というだけでも糾弾に値するはずだ。ところが、情報が絞られている事を良い事に、マスコミは中国批判は抑えている状況だ。

ウイグルでの出来事は、どこか他人事のように思える。「となり町戦争」といった雰囲気である。

朴槿恵大統領を苦しめる日本の弱腰外交

韓国の朴槿恵大統領が安倍首相との会談から逃げ回っている。舛添東京都知事とは会談したが強硬姿勢を崩さず、安倍首相と会談する可能性は遠退くばかりだ。

朴大統領が安倍首相との会談を忌避する理由は、従軍慰安婦問題で背水の陣を敷いているからだ。日本側が絶対に飲めない条件を突き付けているため、身動きが出来ないのである。

日本側の方針はどうか。前提条件は設けず、ただ会談だけをしたい、というものである。日本側のドアは開かれており、ボールは韓国側にあるというのだ。冷静な、大人の対応であるが、果してこのやり方は正しいのか。

残念ながら、ボールは従軍慰安婦問題のただ一つであり、全く返す事が出来ない状況である。安倍政権は、本音では朴大統領との会談を望んでいないと判断されても仕方がない。

外交が停滞してしまているのは、日本が何も主張しないため韓国側に何もボールが届かない点にある。朴大統にとって、外交的勝利を日本から勝ち取るためのエサが何もないのである。これは、日本の外交が事勿れ主義の、弱腰外交が根本的な原因だ。

ではどうすべきなのか。韓国側に勝利を宣伝出来るような条件を突き付ける事である。具体的には以下のようなものだ。

  • 日韓漁業協定で暫定水域とさた竹島近辺を、漁業資源の保護のため日本側の水域とする事
  • 韓国漁船の不法操業の取締り
  • 竹島に駐在する警備隊の撤退
  • 日本で窃盗し韓国に持ち込んだ仏像の即時返還
  • 刑期終了の在日韓国人の引き取り
  • 歴史教科書における事実と異なる記述の修正
  • 大使館前に設置された慰安婦像の撤去

等である。

もちろん、現在の状況で日本側が上記のような主張すれば、それは日韓関係の一層の冷え込みにつながる。しかし、こちらが何も主張しなければ、相手側も交渉の手掛りを掴めないのである。上記に列挙した日本側の主張のうち、いくつかでも拒絶して交渉の場から消し去れば、それが朴大統領の勝利になるのである。これにより、従軍慰安婦問題が膠着しても日韓首脳会談が可能となる道が開かれるのだ。

明治の外交官は、このような外交を展開して、国際情勢を動かしてきた。今日の外務省はあまりにもおとなし過ぎて、諸外国とは冷たく疎遠な外交関係しか結べないのである。

舛添の訪韓で東京五輪はハングルだらけに?

舛添東京都知事は7月23日に韓国を訪問し、ソウル市との間で合意書を締結した。合意書では幅広い範囲で東京都とソウル特別市との間で交流を進める事が約束された。

合意書にはオリンピックでの協力が含まれている。東京五輪が対象で、1988年のソウル五輪の経験共有とスポーツ交流という点が記載されているが、ソウル五輪の経験共有が具体的に何を差しているのかは不明だ。

このため想像を働かすしかないのだが、交流の過程で韓国人旅行客をもてなすため、と称して東京都内の標識や五輪会場、交通機関のあちこちにハングル文字を多く採用する事になるのではないか。また通訳が必要だという事で、韓国語の分かる在日韓国人を東京都が採用する、という可能性もある。世界中の人たちに在日も日本の一部だと紹介するため、日本の中の韓国というテーマを随所に盛り込んでくる事もありうるのではないだろうか。

東京五輪をあたかもソウル市との協力で実現させたかのように演出する可能性もあり、また日本の文化を紹介する中で実は韓国を売り込む事になっていた、という結果になるとも考えられる。

合意書には観光についても触れており、東京都が韓国人観光客の重視に偏向するおそれがあると共に、日本から韓国への観光宣伝まで東京都がやらされる可能性がある。

ところで、平昌冬季五輪については今回の合意書では触れられていない。合意したのは、あくまで東京五輪である。しかしながら、都知事外交に浮かれている舛添知事の事である。平昌オリンピックについても何らかの協力関係を結びたいと考えている事だろう。

それより問題なのは、地下鉄の安全対策まで交流を進めようとする点だろう。今後、東京都交通局や、東京都が株主となっている東京メトロでは、安全対策の中枢となる指令所を韓国からの視察団に公開する事になる。またテロ対策関係の情報提供も行なわれるが、韓国からはソウルの地下鉄関係者だけなく、治安当局からも情報収集に来るだろう。韓国に提供される地下鉄のテロ対策情報が、第三者に渡る心配は無いのだろうか。

韓国だけが世界ではない。2020年の東京五輪は、日本人の世界に対する視野を広げる良い機会であり、日頃馴染みの無い国々との交流を深めるべきである。「おもてなし」の受益者が特亜であってはならないのである。