左派系メディアの倒閣偏向報道がもたらす民主主義の危機

東京都議選が開始されたが、未だ加計学園騒動の話が続いている。騒動の原因となった加計学園の設立認可に関しては正しいルールに沿っており、政権側には全く落ち度はなく、野党やマスコミが情報の断片を都合の良いように組み合わせて「総理の友達に便宜を図るため、行政に不当に介入して加計学園の設立を認めさせた」というストーリーを垂れ流しているだけの事だ。

そのストーリーに追加されているのが、「正義感から勇気を出して告発する元官僚、前川喜平前文科省次官」である。違法な天下りを斡旋して停職処分を受け、森友学園問題の時には追加の政権批判にも利用されかけた前川氏が、加計学園問題では英雄扱いされているのだ。

聖人君子と言わんばかり扱いであるが、出会い系バー通いについて「貧困女性の調査のため」という前川氏の説明まで信じてしまう人がいるという異様な状況になっている。

アフターファイブの行動に関しては、どちらの陣営も黙っておくのが礼儀であるが、「貧困女性の調査」という説明が前川喜平という人物を評価する上で「出会い系バー」通いというものが重要な要素となってしまった。

マスコミや左翼の知識人達が前川氏の勇気を称えるたびに思い出す小話がある。阿刀田高が紹介した海外のジョークの一つで、私の文章力では今ひとつ面白みを伝えられないが、以下のようなものだ。

カトリック修道院の前に売春宿があり、二人の修道女が窓から興味津々に観察していた。

一人のプロテスタント牧師が、周囲に人がいない事を確認して中に入っていった。

修道女「見て、プロテスタントの牧師よ!何て穢らわしいのでしょう」

次にユダヤ教のラビが、きょろきょろしながら中に入っていった。

修道女「やっぱりユダヤ教徒ね。あれがラビの正体よ」

三人目の男はカトリックの神父で、やはり周囲をきょろきょろしながら中に入っていった。

修道女「あら大変!中でどなたかお亡くなりになられたのですわ!」

国民は左派メディアのダブルスタンダードに騙され続けている。ある行為や発言を180度違う意味として伝えるのは、倒閣プロパガンダを流し続けるマスコミの得意とするところである。

マスコミが政権批判をするのは当然であり、健全な姿である。しかし情報を都合良く組み立て、間違ったストーリーを大々的なキャンペーンとして繰り広げ、正当な反論を封殺するやり方は尋常ではなく、まるでナチスの宣伝手法だ。

左翼勢力が昨年末からの韓国の政変に多くを学んでいる事には間違いない。瑣末な事象を巧妙に利用し、「政治を私物化してやりたい放題の安倍政権」というイメージを徹底的に国民の意識に刷り込もうとしているのだ。

加計学園騒動では国家戦略特区というものが話題となった。実は、私自身は安倍政権が進める規制緩和路線には大反対であるが、政策で勝負しようとする野党はなく、スキャンダルで政権にダメージを与えただけで、結局は安倍政権の政策が次々に実現する結果となってしまった。

安倍政権下で、ひょっとしたら実施されるかもしれない憲法改正を睨み、今後ともマスコミの印象操作は続くだろう。現政権の倒閣を最も望んでいるのが中国である事を考えると、安倍政権にとっては厳しい一年になりそうである。

「共謀罪」に助けられる左派勢力

国会で6月15日に成立した組織犯罪処罰法は、「テロ等組織犯罪準備罪」を規定したもので、重大犯罪については準備段階で犯罪が成立するものである。重大犯罪は多岐にわたり、テロはその一つに過ぎないが、わざわざ「テロ等」と呼称しているくらいであり、テロの防止に一定の効果があると期待される。

テロが事前に防止される事で助けられるのは、実は法案に反対していた左派勢力である。テロが現実に発生した場合には、特殊な事情が無い限りは与党の支持率が上がり、野党、特に「リベラル派」と呼ばれる勢力の支持率が下がるからだ。不謹慎な発想ではあるが、一般論としてはそうなるだろう。

テロが全く発生しない平和な状況は、日本の平和が戦後70年以上もアメリカの軍事力で維持されてきた状況と同じで、空想的平和主義が蔓延し、「ヘイトよりラブ」と言った友愛思想が広がりやすい。

欧州では2015年のパリ同時多発テロ以降、イスラム系移民の大量流入にも拘らず同様なレベルの組織的なテロは発生していない。これは欧州がテロ対策を強化し、テロを計画段階で防止しているためだ。

時々ヨーロッパで「テロを計画したとしてテロリスト○名を逮捕した」というニュースが流れるが、これが共謀罪成立による逮捕なのかどうかはニュースだけでは不明だが、逮捕によってテロを未然に防止し、治安を維持している。

このため、これまで発生したテロは個人による突発的な通り魔事件ばかりである。結果として欧州では極右政党が伸び悩み、リベラル政党が政権を維持する傾向が続いている。同様に日本における平和の継続は野党にとって救いとなるだろう。

さて、上記に記載した「特殊な事情が無い限りは」の意味であるが、例えば右翼団体がテロを起した場合には、メディアが自民党政権と結びつける事は確実であり、その場合は野党の支持率が上昇するだろう。ただ我が国では右翼団体のテロは希少であり、可能性としては低い。

実際に起こり得る話としては、東京五輪などの国際舞台の場で、イスラム過激派など外国勢力によるテロが発生した場合は政権の不手際となり、与党側の打撃となるだろう。

テロ等準備罪は厳密な意味では共謀罪ではない。このため欧州のように「テロを計画しただけで」逮捕とはいかない。そもそもテロ防止が同法の最大の目的でもなく、これでテロが防止できるというわけではない。政府の説明が不十分であるため同法で国民が安心してしまっている恐れもある。政府は本法案成立で安堵する事なく、テロ防止に本格的に取り組むべきであろう。

 

映画「メッセージ(Arrival)」の本当のメッセージ

映画「メッセージ」を見た。ハリウッド映画で原題はArrival。原作は「あなたの人生の物語(Stories of Your Life and Others 2002)」で、その作者はChina系アメリカ人のTed Chaingである。

ポスターに登場する宇宙船?が菓子の「ばかうけ」そっくりというネタにつられて見にいったのだが、ポスターが伝える雰囲気を裏切らない内容で、十分に楽しめる佳作であった。

「メッセージ」では最近のハリウッド映画がそうであるように、中国が重要な役割を果す。これは原作者がChina系であるので自然であるし、そもそも原作がそうなのかもしれない。

近年におけるハリウッドの中国傾斜は顕著であり、最近では「オデッセイ」の中で近未来の宇宙開発では中国が米国と並ぶ地位を占めている描写が露骨であった。「ゼロ・グラビティ」も同様であり、「インデペンデンス・デイ」の続編でも中国の存在感が大きい。

日本人としてはあまり面白くない話ではあるが、ハリウッドが中国の巨大市場に媚を売っているのは仕方がない話であり、中国マネーがアメリカを蚕食している現状では、中国のプロパガンダと割り切って楽しむしかないだろう。

さて、「メッセージ」も同じように中国が登場するが、他の映画ほどには露骨な中国贔屓はなく、不自然なく鑑賞する事が出来た。むしろ中国が好戦的な姿勢を見せている点が物語の鍵ともなるもので、その意味ではバランスのとれたものだったと思う。

しかしながら、この「メッセージ」には、日本人には背筋が寒くなるような恐しい描写がある。映画の舞台は近未来というわけではなく、現在が舞台と言っても良いのだが、中国の軍事力が巨大に描かれているのだ。すくなくともロシアは中国の決定に従う立場であり、その他にキーとなる国は登場しない。それ自体は近年の軍拡路線からすると無理はないのかもしれない。

日本人にとって、この映画のポイントは、中国に登場した宇宙船が何故か上海沖であり、中国が宇宙人相手に中国領土から撤退しなければ攻撃を開始するという強い決意を表明している点であり、そして何よりも現時点では存在するはずのない中国空母打撃群が威風堂々と登場している点である。

日頃から中国の脅威に敏感でない人にはどうでも良い話で、しかも大半の日本人はそうであろう。しかし中国がウクライナから「カジノ施設のため」と偽って購入した空母「遼寧」に加え、国産空母を建造(1隻は今年4月に進水)し空母打撃群の形成を目指している事、そして中国海軍が九州から沖縄に至る第一列島線を突破する事を本気で目標とし、太平洋進出を目指している現実を見れば、中国が「メッセージ」を通して日本人に何を伝えたいかは明確である。

「太平洋は米国と中国で二分する。日本はその現実を受け入れよ」という事だ。映画「メッセージ」で描かれる米中蜜月と中国海軍の存在感が伝える本当のメッセージとはこういう事である。

この映画のアメリカでの公開は2016年11月である。そしてその12月には中国空母「遼寧」が沖縄と宮古島の間を通過し、太平洋に進出した。中国での公開は2017年1月。4月に中国初の国産空母進水。そして5月に日本公開である。

中国の意図を過少評価してはならない。目標を掲げる国家は、高い確率で目標を達成する。かつての日本がそうであったように。

「共謀罪」法案でも不完全なテロ対策

「共謀罪」法案に野党とマスコミが反対している。「テロ等組織犯罪準備罪」の事であるが、実際には適用要件が厳しく、野党らが妄想しているような乱用は不可能な法案である。

共謀罪に反対する際に挙げられる論理の一つとして、世界中の国で共謀罪が導入されていながら、テロが続発しているという現状がある。イギリスでは共謀罪がありながら、過去3ヶ月に3度もテロリストの襲撃で一般市民が犠牲となった。

ロンドンで6月3日に発生したテロでは、犯人が当局の監視対象であったらしい。ヨーロッパで発生するテロでは、当局が危険思想の持ち主と知っていた人物が、結局テロを決行したという例が多い。つまり、ある人物がイスラム過激主義に傾倒している事を知っていたとしても、事前にテロを防止する事が出来ない状況が続いているのである。

これは、共謀罪には限界がある事を示している。つまり、個人の思想信条だけでは、たとえテロを肯定するような過激な内容であっても、当局は逮捕できないのである。

日本で成立を目指している法案よりも、はるかに適用要件が緩いイギリスでもそのような状態である。共謀罪によってあたかも個人の思想を理由に逮捕されるかのように宣伝されているが、共謀罪を持つ欧米各国の現状を良く見るべきであろう。

野党やマスコミは、相変らず安保法案や秘密保護法案の時と同様に現実離れした妄想を撒き散らしている。

昨年7月26日、相模原市の障害者施設を一人の男が襲撃し、戦後最悪と言われる殺害事件が発生した。

犯人の男は、障害者は社会にとって害悪という特異な思想を有していたが、おそらく同じ考えを持つ人間は、日本に少なからず存在するであろう。

さて、そのような思想の持ち主達が一同に集まったとする。障害者は社会の不要物であり、除外しなければならない、という考えを持つ者達である。やがて酒の席で相模原事件の犯人を英雄として持ち上げ、自分達も同じ事を・・・などと異様な会話で盛り上がる。

ある者はメンバーが全員移動できるよう、ハイエースを購入した。ある者は日曜大工用にホームセンターでハンマーやチェーンソーを購入した。ある者は全国の障害者施設マップを作成し、経営主体やら定員などの情報を集めた。

土日は障害者施設の周辺でピクニックである。会話の中で正義感が高揚し、自らの命を賭けてでもやり遂げるという意志で結束する。

そして、襲撃の日。

さて、このようなテロ行為は、日本の国内法で一体どの時点で防ぐ事が出来るのだろうか。今回の共謀罪が適用できる可能性は低い。第一に組織犯罪ではない。計画内容は不明確で準備行為も日常の活動と区別がつかない。このケースでは、施設に侵入した段階でしか逮捕は出来ないのだ。

しかし計画段階での逮捕を諦めて良いというわけではない。テロ等組織犯罪準備罪の適用は困難ではあるが、条件が成立する可能性もある。

野党の反対やマスコミの宣伝、国会では浮世離れした妄想が蔓延しているが、現実に起き得る脅威についてもっと想像力を働かせて議論すべきであった。

半島危機の勝者は北朝鮮

朝鮮半島では今年4月から5月にかけ一触即発という緊張状態が続いた。北朝鮮が今年3月6日に日本海に向け4発の弾道ミサイルを発射したことから始まったもので、北朝鮮の挑発次第ではアメリカが軍事的手段に訴えるという姿勢を見せたためである。アメリカは実際に空母の派遣により圧力をかけ、北朝鮮による更なるミサイル実験や核実験を牽制した。

日本では、4月15日の金日成生誕記念日と4月25日の朝鮮人民軍創設記念日に北朝鮮がミサイル実験をするのかどうかが着目された。米軍の行動から、挑発に対しては本気で軍事的な制裁を加える可能性が濃厚であったからだ。

しかし北朝鮮は挑発内容に工夫を凝らし、アメリカもレッドラインを明確にしなかった事から結局軍事衝突は発生せず、北朝鮮がミサイル発射を継続する状態となった。

結果としては日本が過敏に反応し過ぎたという事だが、これを契機に防衛意識が高まるのは当然であり、今後は過剰反応しなくて済むよう、国防体制を万全にしておく必要がある。

とは言え、今回の半島危機では日本が直接攻撃を受けるという可能性は低い。アメリカも北朝鮮も戦争は望んでいないからだ。軍事衝突が発生する可能性が極めて低い理由は、各国の勝利条件を考えてみると明白である。

北朝鮮にとっての勝利条件は、「核兵器保有国としての地位確立とミサイル開発の継続、アメリカとの直接交渉、そして制裁解除と経済支援の獲得」である。

対するアメリカの勝利条件は「核実験の中止とアメリカ本土まで到達するミサイル開発の阻止」である。

中国は、とりあえず今回の半島危機に関しては「米軍の圧力緩和と日本の国防体制強化の阻止」であり、ロシアの勝利条件は「北朝鮮の脅威を口実とした米軍のミサイル迎撃体制強化の阻止」であろう。

これらの条件は、結局はアメリカと北朝鮮が取引をすれば全て決着する。双方が対話をして北朝鮮は核関連開発を中断し、経済制裁が緩和されるという所で主要国の勝利条件が満たされるのである。

勝利条件が最も厳しいのが日本である。日本にとっては大陸間弾道ミサイルだけではなく、短中距離のミサイル開発も中止されなければ意味がない。北朝鮮の実験の度に日本海にミサイルが着弾するような事態を許容するような決着では完全な敗北だ。しかも日本にとっては拉致問題の解決がうやむやにされない事が重要な条件なのである。
残念ながら、今回の半島危機の敗者は日本となりそうだ。日本海に向けてのミサイル発射が継続され、かつ拉致問題に進展がないまま北朝鮮への圧力緩和という方向で決着するだろう。

今回の件で鍵を握っているのは中国であり、日本が主体的に対応できる事は限定的だが、これを契機に国防体制を強化し、かつ朝鮮総連や国内のスパイ取り締まりを徹底すべきであろう。

もちろんトランプ大統領が常軌を逸する行動に出る可能性もあり、どういう結末となるかは不明だ。

なお、韓国の勝利条件は「北朝鮮のミサイルが日本に落ちて大勢の日本人が死ぬ事」であるが、気にする必要はない。

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