「犯人は韓国人」の米国バージョン「犯人は白人男性」

日本では犯罪報道の初期段階で匿名ネットを中心に「犯人は韓国人」という書き込みが恒例のように登場する。通常は犯人特定によりデマ情報として消えていくものの、犯人が不明であったり詳細が報じられないままだと情報が拡散し続ける事になる。

これは、マスコミが在日朝鮮人の犯罪報道をタブー視し、通名報道による国籍隠しが横行してきた過去が、ネット普及期に広く認知されたためであり、幸いな事に最近ではマスコミが犯罪報道で国籍を明記するようになって「犯人は韓国人」というデマ情報は拡散しないようになってきた。

さて、アメリカでは3月22日、コロラド州ボルダー市の食料品で銃乱射事件が発生した。当初犯人の詳細は不明であったが、テレビ映像から「犯人は白人男性」と断定するリベラル派のツイートが溢れ、中には「暴力的な白人男性は最も危険なテロリストで国の脅威だ」などという過激な発言もあった。

実際の犯人は「アフマド・アル・アリウィ・アル・イッサ」というシリア系アメリカ人で、確かに肌の色は白いのだが中東系のイスラム教徒であった事から「犯人は白人男性」というデマ情報は早々に消滅する事となった。

事件直後は白人男性による有色人種への攻撃を止めようという話だったのだが、犯人が白人男性でないと判明すると、リベラル派は即座に銃規制の問題へと話題を変え、メディアでの扱いは急速に低調となった。

一方で、3月16日にアトランタで発生したマッサージ店連続銃撃事件では、加害者が白人男性で、アジア系女性が6名死亡したという事で大きなニュースとなり、事件の真相が不明な段階にも関わらずアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムと決めつけた報道と抗議活動がしばらくの間続いた。

銃撃事件と比較すれば小さなニュースであるが、翌日には韓国系の化粧品店で韓国系の女性店長が黒人女性に殴打される事件が発生している。これは殴打の場面がビデオに撮られており、非常にショッキングな映像なのだが主要メディアでの扱いは小さい。アジア人ヘイト、特にアジア系女性に対するヘイトクライムに対する抗議活動が大きな盛り上がりを見せるなか、黒人女性による韓国系女性殴打事件は全く注目を浴びなかったのである。

「犯人は韓国人」というデマ情報を拡散すれば、それはヘイト行為である。同時に「犯人は白人男性」というデマ情報の拡散もヘイト行為である。米大統領選で不正選挙の情報をフェイクニュースであるという事で徹底的に削除したSNS企業は、「犯人は白人男性」というツイートは削除しなかった。

ある民族の男を悪く言い、女を持ち上げるのは、その民族に対する心理戦の一つであり、民族の自尊心や結束を破壊し、やがては自分の民族が優位に立つための工作である。左翼やリベラル派が日本人男性を蔑む一方で日本人女性を称えるのは、背後に外国人の存在があるからだ。

ヘイト感情はリベラルであろうと保守であろうと同じく心の中に持っているのが現実なのだ。一方でリベラル派は自分達のヘイトは正当な理由があると固く信じている分、よりやっかいなのである。

「武漢ウィルス」表現の拒絶が招いた対アジア人イトクライム

アメリカではアジア系に対するヘイトクライムが多発しているが、この原因をトランプ元大統領の発言にあるとする主張が繰り返されている。武漢コロナウィルスの事を「チャイナウイルス」と呼んだ事が、アジア系へのヘイトを招いたというのである。中には「武漢ウイルス」という表現すら差別と主張する者もいる。

昨年、というより2019年の12月から発生したパンデミックは、武漢を震源としており、病気については武漢肺炎、ウィルスについては武漢ウィルス、あるいは武漢コロナウィルスと表現するのが理にかなっている。ところが中国共産党とWHOが発生当初の不手際について批判を避けるため、武漢の名称を冠しないようプロパガンダ工作を行い、それに世界が屈してCOVID-19という、不可思議な表現となってしまった。

ウイルスの名称に武漢をつける事が差別的でも何でもない事は、水俣病やら日本脳炎、アフリカ豚熱などの例を出すまでもなく当然の事である。ところが世界中の人々が中国のプロパガンダに流され、武漢ウイルスという表現が人種差別であるという嘘を広めてしまった。

武漢ウイルスが中国で収束し、欧州で感染が急拡大すると、中国共産党は武漢ウイルスに関するフェイクニュースを流し始める。そして3月12日には中国報道官が「ウイルスは米国起源」と発言。2019年10月に武漢で開催された軍人オリンピックに参加した米軍がウイルスを持ち込んだとする米国起源説がその根拠だ。

トランプ大統領が「チャイニーズウイルス」とツイートしたのは3月17日で、中国による責任転嫁に業を煮やした反応である。その後、中国は情報戦を強化し、プロパガンダを展開、一方で欧米、特に米国による中国批判が激しさを増す。その中には修飾語のトリックを使って「日本新型肺炎」と表現した大使館による印象操作も含まれ、官製メディアを通して、武漢ウィルスの中国起源を直接否定するような報道も繰り返される。

武漢コロナウイルスが世界的に蔓延する中、アジア人に対するヘイト感情が高まる。これはごく自然の事であり、日本でも当初は中国人排斥の世論があったし、変なところではインドネシアで日本人がウイルスを持ち込んだという事で日本人排斥の声が挙がった。ちなみに日本では中国人よりも海外からウイルスを持ち込んだ日本人へのヘイトが目立った。

一方で一旦ウイルスが国内で拡散すると、その後は国内の問題となり、感染が全世界に広がると、発生源がどこかという問題は重要では無くなる。

中国人に対する国際的なヘイト感情が高まった直接の原因は、欧米各国による中国への賠償請求である。それも元を正せば中国がウイルス発生時の情報隠蔽や初動ミスを頑なに認めない傲慢な姿勢と、中国こそウイルス対策に貢献しているとする自己礼賛が原因である。

こうして見ると、「武漢ウイルス」という表現を認めず、差別問題扱いにした中国の態度が、当初から中国共産党の無謬性と自己礼賛、そして世論を従わせようとする意図の一部であった事が明白である。

武漢肺炎、武漢コロナウイルス、あるいは武漢ウイルスという表現を早期に確定し、中国政府が感染拡大防止に誠意をもって真摯な態度で対応していれば、世界対中国という図式は生じなかっただろうし、WHOも中国共産党に忖度なく客観的かつ中立的な対応が可能だったろう。

また、早期に武漢ウイルスという表現で決着していれば、後に政治的な意味での「チャイナウイルス」という表現が利用される事もなかっただろう。

今回のパンデミックは武漢から世界に広まった歴史に残る大事件であり、後世にWuhan Coronavirusとして語り継がれるものだ。スペイン風邪でスペイン人を悪く言うバカはいない。日本脳炎で反日運動が盛んになるものでもない。アフリカ豚熱でアフリカ人は豚だと言うアホもいない。「武漢」を隠蔽し、傲慢な態度でプロパガンダを続ける中国の姿勢が対立を招いているのである。

中国共産党が韓国に仕掛ける意地悪な歴史戦

最近、キムチや韓服の起源を巡って漢人社会が韓国人を挑発し、両国の間で議論が交わされている。漢人は韓国人とは違い、それほど起源主張には熱心ではなかったが、ここ数年はChina起源の主張が目立つ。

約20年前に中共は「東北工程」という歴史研究事業の成果として「高句麗はChinaの一部」と発表し、韓国が反発、政府間の論争まで発展した。その影響は甚大で、韓国は歴史ドラマを次々に制作して歴史戦を展開する事になる。日本では韓流ドラマとして人気となり、韓国の歴史観は韓国人だけでなく、外国にまで広げる事に成功した。

しかしながら、中韓の歴史戦ではChina側が圧倒的に有利である。韓国が「朱蒙」などのファンタジーで宣伝しようとも、高句麗が朝鮮民族の直系の先祖国であると断定する事は出来ないし、Chinaが主張するように満州民族の歴史であるからだ。

漢人との歴史戦になると、韓国は気の毒である。そもそも朝鮮半島に最初に成立した王朝は殷の箕子が建国した箕子朝鮮である。つまり漢人国家である。その次の王朝は衛氏朝鮮であるが、これも前漢の時代に燕の衛満が建国した漢人の国である。

朝鮮人の国家はその後に登場する事になるが、それでも楽浪郡や帯方郡という漢の出先機関に支配される期間が続き、その後ようやく朝鮮半島は高句麗、百済、新羅といった非漢人の国に支配されるようになる。

だが、その高句麗でさえ実態は満州に広がる国であり、現代韓国と同一民族である証拠はない。高句麗を韓国史とするのは、モンゴル人の元を中国の歴史として扱う例と似ている。

更に言えば、高麗王も出自は漢人であり、李氏朝鮮の李成桂は女真族との説がある。朝鮮半島を統一した国家で、純粋に朝鮮人が建国したと言えるのは新羅だけであるのだ。

大陸の歴史は混血の歴史だ。韓国人が民族としての純粋性、連続性を主張しようとすればするほど過去の歴史に無理な解釈が生じる。

かつて朝鮮の歴代王朝は自らを「小華」と称して小国は大国に従うという事大主義を信奉してきた。特に李氏朝鮮は、最初は明に、三田渡の盟約以降は清に属国扱いされ、それを受け入れてきた。そのような過去があるのに、民族主義的な立場で過去の歴史を独自解釈しても中国共産党には簡単に論破されてしまう。

さて、キムチや韓服の起源については、さすがに中国側の主張に無理がある。しかし韓国人がサムライ、茶道、剣道、日本刀など日本文化の起源を主張する際の論法に比べれば遥かに説得力はある。韓国の歴史を良く見せようと藻掻けばもがくほど、ボロが出ているのだ。

現在、対外プロパガンダについては、韓流コンテンツがある分、韓国に有利であるが、最近の中国はアニメ、映画、ゲームなど西側諸国が得意としてきたソフトパワーで力をつけてきており、事実を土台にした歴史の宣伝戦で、韓国人のプライドを完膚なまで叩き潰す事が出来るようになるだろう。その匙加減は韓国の姿勢次第であり、我々は韓国が再び小華に安住するようになる様を目撃することになるだろう。

「黒人サムライ」の弥助、ポリコレにより過去の歴史が創造される瞬間

歴史に登場する人物の物語は、多かれ少なかれ後生の人々の想像力によって形成される。遺された資料で確定できる事実は限られているし、まして性格などの特徴は同時代人でも正確に把握されない事があり、日本では特に明治維新以前の歴史人物は後生の歴史家や民衆の願望で人物像が決定されてきたと言って良い。

既に人物像が定まった歴史人物であっても、その時代に創作された物語の影響を受け、変化する事もある。戦国時代の武将などは、ライトノベルやアニメ、漫画、ゲームの影響により、世代間で違ったイメージを持つ場合もあるだろう。個人的には「今川氏真は無能」など戦国武将のイメージはコーエイの「信長の野望」による影響が強い。

さて、戦国時代の黒人奴隷、弥助(ヤスケ)は、史料がわずかしかないが、信長に仕えた黒人武士という事で漫画や小説など過去の創作物に登場しており、既に史実とは無関係な人物像が形成されつつある。近年では「日本スゴイ」系の人達が「日本では黒人も活躍していた」という自己満足、そして海外をマーケットと考え黒人社会に媚を売る会社による宣伝などで、ヤスケが英雄化されている。

それがついにハリウッド映画にまで進出する事になるのだが、黒人やポリコレ界隈から「日本で活躍した黒人サムライ」という虚像が史実のように語られるようになっている。

戦国時代の黒人奴隷、ヤスケの人物像については、史料だけでは決定できず、現代では上記のように黒人社会の願望とポリコレによる黒人善人化、そして日本ホルホルと海外マーケトによる宣伝が大きく影響した人物像が固まりつつある状況だ。しかし、現存する史料からは他の解釈も可能だ。

例えば、『弥助は残忍な性格であり、戦場では捕虜であっても容赦はなく、殺害を楽しんでいた。剛腕で周囲と喧嘩が絶えず、また農民を襲い若い女を犯す強姦魔であったが、見世物としての価値を重視していた信長の保護もあり、他の家臣からは恐れられていた』という仮説も、弥助が信長に忠義を尽したサムライ精神を持った英傑であった、などという虚像と同じくらい成立するのである。

また、逆に『弥助は奴隷意識が抜け切れず、いつも主人を恐れ、おどおどした性格であった。その異様な外見から、信長の行く先々で南蛮の珍しい動物とともに鎧を着た黒人武者として自慢され、奇妙な存在として注目されていた。刀もまともに使えなかった弥助は、本能寺の変で処刑される事もなく、南蛮人に奴隷として返却された』という説も同じ程度に成立する。

これまで日本の歴史キャラは日本人の想いだけで人物像が形成されてきた。ところが国内コンテンツの海外進出に伴い海外ファンの嗜好も影響するようになった。結果、白人受けするためにウィリアム(三浦按針)を主人公にしたり、黒人受けするためにヤスケを登場させたりするようになる。そして近年のポリコレ旋風の影響で、日本の歴史に登場した黒人奴隷が、黒人サムライとしてヒーロー扱いされている。

現代ポリコレが、証明できない過去の歴史を創造する過程を我々は目撃しているのである。

ウイグルでの「ジェノサイド」をデマ扱いする元朝日新聞の田岡俊次

今年に入り、欧米では中共によるウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と表現する政治家・活動家が増え、複数の国の議会でジェノサイドとして認定されるようになっている。

一方、日本国政府はジェノサイドとして認定していない。日本語ではジェノサイドを「虐殺」と訳される事から、強制収容所の存在でジェノサイドとは呼びにくいという事情もある。逆に言うと、多くのメディアが「大量虐殺」と訳しているのはジェノサイド認定させないための巧妙な世論操作であると言える。

そのような中、3月18日にyahooに掲載された田岡俊次の記事では「民族殲滅」と表現しており、Genocideの定義に近い。だが、その上で記事では中国共産党寄りの論を張り、米国はデマで戦争する国だから日本は慎重にしろ、という結論になっている。

記事ではウイグル人によるテロを強調し、収容者100万人という人数に疑問を呈し、強制収容所を就業教育だと言っている点など、よほどの親中派でなければ主張できないような内容を披露している。

同記事では「中国語を教える事が文化的ジェノサイドなら、米国が併合したハワイで英語を教えたのもジェノサイドだ」などと、相手の主張内容を勝手に変更して論じるという左翼得意の論法を展開している。一体全体、誰が「中国語を教えたからジェノサイド」などと主張しているのか。

後半ではアメリカが如何に偽情報で戦争ばかりしてきたか、という記述が続き、単にジェノサイドという表現を否定するだけではなく、ウイグル人弾圧という話自体を「デマ」と思わせるような構成となっている。ちなみに話の中でユーゴスラビア紛争の際の民族浄化を否定しているが、これが保守派論客の主張だったら、ちょっとした騒動になるだろう。

さて、現在ウイグルではアウシュビッツのような「虐殺」が発生しているわけでない。このため「大量虐殺」と訳されるような意味でのジェノサイドは発生していない。しかし国際社会は必ずしも物理的殺害ではない場合でも、ジェノサイドと見なす場合がある。事実、「ジェノサイド条約」では殺害以外でもジェノサイドと見なす場合を定義している。

中国によるウイグル弾圧は、アメリカが戦争準備のために創作したデマではない。田岡俊次はじめ、親中左翼はそのように印象づけたいのだろうが、ウイグルの実態は現地から命懸けで伝えられた様々な情報であり、衛星画像を根気強く調査した研究結果である。中国は当初強制収容所を否定していたが、様々な証拠を前にようやく再教育施設として存在している事を認めたのである。そしてウイグル問題を最初に取り上げた政権がトランプ政権であったが、その時には強制収容所を批判するだけの十分な証拠が揃っていたのである。

田岡俊次は、日本はアメリカに追従せず、「中国に対し中立的な調査団を受け入れるよう勧告することが得策」と述べているが、そもそも自由な取材が出来ない時点で隠蔽している事は明らかだし、調査団も行動が制限されて機能するはずがなく、結局は実現される事はなく、時間稼ぎに利用されるだけだ。