80年代でも社会主義を礼賛していた日本共産党

1985年1月、赤旗は「社会主義みたまま 東ドイツ/ハンガリー/ルーマニア」という連載記事を掲載した。今から30年前のことである。東ドイツを訪問した佐々木一司赤旗編集局次長、ハンガリーを訪問した河邑重光赤旗編集局次長、ルーマニアで4年間赤旗特派員をしていた白井友和ブカレスト特派員の座談会形式である。

全部で10回もあるので、ブログのネタとして紹介してきたい。ここでは、タイトルのみ一覧で掲載する。当時は社会主義の問題が露呈していた時期であったが、それでも共産党は社会主義を礼賛しつづけてきた。ベルリンの壁が崩壊したのは1989年のことであり、まだ4年の猶予があったころである。

日付 サブタイトル
1月1日
  • ゆったりした生活
  • 豊かさに努力の跡
  • 西側から買い物客
1月3日
  • 住宅建設に力注ぐ
  • 湯もでる中央暖房
  • 別荘持つのも普通
1月4日
  • 生活必需品は安く
  • 困難下も価格保障
  • 基礎に農業の成功
1月5日
  • 年金も仕事も保障
  • 外国旅行も盛んに
  • 物価上昇分に手当
1月6日
  • 物価の安定に驚く
  • 基本的に失業なし
  • 経済効率考えつつ
1月7日
  • 軍費より児童手当
  • 大学まで教育無料
  • 全員入れる幼稚園
1月8日
  • 独自の音楽教育法
  • 落ちこぼれなはい
  • 成人教育も盛んに
1月12日
  • 民族的伝統を発展
  • 芸術家を国が保護
  • 入場料、西欧の20%
1月13日
  • 生活に根張る宗教
  • 戦争おこさぬ教育
  • 外国の放送自由に
1月14日
  • リアルにみる必要
  • すぐれた社会保障
  • 明日への希望もち

ニカラグア内戦に学ぶ祖国防衛

下の写真は、ニカラグア内戦も終結間近なころのサンディニスタ人民軍に属する女性兵士の姿である。ニカラグア内戦は1979年の革命から始まった内戦で、サンディニスタ人民軍は、アメリカが支援していた反政府軍コントラと戦闘を続けていた。一見すると軍国主義調に見える写真だが、武器を持つ女性の姿は凛々しく、ニカラグアの革命を守った英雄たちである。

赤旗ニカラグア記事

この写真は、昭和61年11月23日付の赤旗新聞に掲載された記事の写真である。記事のタイトルは「アメリカは一歩も通さない たたかうニカラグア」である。

記事によれば、ニカラグアでは18歳から40歳までの男性全員に対する徴兵登録を実施し、女性予備軍の組織、訓練も進めていたとの事である。大東亜戦争で日本は祖国防衛のために戦争末期には総力戦となったが、それでも女性は兵士とはならなかった。大戦末期の日本以上に国を挙げて戦争していたのがニカラグアなのである。そして、それを日本で最も礼賛したのが日本共産党であった。

ニカラグア内戦は、アメリカの介入が露骨であったこともあり、当時の反米親ソ勢力にとってサンディニスタ政権を支持し、アメリカを非難する事は重要なテーマであった。日本共産党は赤旗で繰り返しニカラグアでの戦争を伝え、サンディニスタ支援を主張してきた。

アメリカの介入は冷戦終結でソ連が中米から手を引くまで続くが、コントラはニカラグア国民を支持を受ける事なく、サンディニスタ民族解放戦線との戦闘終結に応じ、1988年に和平が成立する。総力を挙げて闘ったニカラグア国民の勝利であった。

他国の介入を女性まで兵士にして退けたニカラグアは立派なもので、日本の左翼にとってサンディニスタ人民解放戦線というのは憧憬を感じる存在だ。しかし、一方で日本の左翼は、戦争に正しい戦争はなく、戦争すること自体が駄目だと論じている。アメリカなど西側諸国との戦争に武器をとることは正義で、それ以外は悪であるという不思議な発想はどこから来るのであろうか。

当時は、というより今でもそうだが、非武装中立を貫き、帝国主義の介入に対しては人民の力で祖国を防衛する、というのが左翼の理想であった。そして、ニカラグアはその理想の具体的なモデルであった。

しかし、非武装国家が侵略を受けた場合、ニカラグアのように泥沼の総力戦を覚悟しなければならない。女性兵士の活躍は美談かもしれないが、実際には女性が戦争に参加するというのは大きな悲劇である。

強力な正規軍が存在し、他国からの侵略を事前に防いでいる状況と、いざ侵略を受ければ女性まで戦争に参加しなればならない状況の、どちらが平和であると言えるか。戦争になった場合には正規軍が戦闘を行ない、国民は後方で支えるのが正しい祖国防衛だ。

日本の左翼は、「そもそも戦争が起きないように隣国と友好関係を築けばよいのだ」と言うが、それをニカラグアの例にあてはめれば、何を言っているのか明きらかである。つまり、ニカラグア国民は戦争回避のため、アメリカの望む政権を作ればよかったのだ。

もちろん、私はそうは思わない。サンディニスタ政権が正しかったとは言わないが、内戦を闘い、アメリカの介入から祖国の主権を守った姿勢は素晴らしいと思う。しかし、それは日本のモデルではない。日本は、正規軍の存在によって、戦わずして国家の主権を守るべきなのだ。

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日本のAIIB不参加に正体を現わす媚中派

中国主導で設立される予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、日本は参加しない方針であるが、これに不満のある参加賛成派が焦って正体を現わし始めているようだ。

当初、AIIB参加に対して中立的であるように偽装していた評論家や専門家も、反対派の正しい意見に対して説得力のある論調を維持できなくなってきている。AIIB参加が日本の国益になることを説明できず、また不参加による不利益も上手に説明できないのだ。結果として「中国とは仲良くすべきだから」という本音の論調が目立つようになってきた。

すこし参加賛成派の意見についてコメントしてみよう。

(1)参加しなければアジアのインフラ事業に日本が参加する機会が減る

これまで何度か指摘したように、インフラ分野で日本企業が受注できるチャンスは、そもそも非常に低い。日本の円借款事業でさえ日本企業は受注できないのである。インドはニューデリーの地下鉄建設に円借款を利用したが、採用されたのは韓国の車両である。ちなみに日本の高い技術が必要な事業であれば、何もAIIBを経由する必要は全くない。

(2)日本がメンバーとなって内部から正しいルールをつくるべきだ

AIIBをまともな機関にする義務が、どうして日本にあるというのか。暴力団から市民を守るため、暴力団の企業に出資して監視しようと言っているようなものだ。そもそも中国主体の組織に日本の意見が反映されるはずがない。

(3)世界で日本が孤立する

日本が参加していない国際組織はいくらでもある。孤立と言えば、アジアで孤立しているウイグル、チベット民族のために何かしてあげるべきではないのか。イジメに加わらない事は孤立とは言わない。

(4)手続きが煩雑で硬直的なADBなどの国際機関の代わりとなる

日本の円借款やADB、その他の国際機関が手続きに時間がかかるのは、環境重視、透明性確保、民主主義、投資効果、貧困解消への貢献など、審査すべき事が多いためだ。これらは現在の日本の価値観を反映させているものであり、これを放棄する事はできない。審査が甘くてもインフラ開発のスピードを重視すべきという主張が左翼の側から出る事には驚きである。

(5)アメリカ型の押し付けでないアジア型の国際金融機関が必要

ここまで来ると正体が見えてくる。要するに西側の開発援助は大企業優先・国民いじめの間違った援助であり、中国による開発援助はアジアの国情にあった本物の援助、という発想だ。まともな人間なら相手にしない論理であるが、左翼は本当にこのように考えている人達がいる。

(6)日中関係改善のために参加すべきだ

そう、これがAIIB参加賛成派の本音である。日本の国益を考えた場合、AIIBに参加する意義はない。AIIBが何のための組織なのか、海外におけるインフラ投資とは何なのか、開発援助の仕組みはどうなっているのか、など知らないが、とにかく中国を喜ばして日中関係を良好なものにしたい、というのが賛成派の大きな動機なのである。

(7)安倍政権に打撃となるから参加すべきだ

露骨な形では出ていないが、このような発想をしている人達もいるだろう。

(8)日本の国力を削ぎ、中国の覇権を確立させるために参加すべきだ

最近の反日政治家、反日評論家の無理筋と言える「バスに乗り遅れるな」論を見ていると、本当は中国の対日工作が深刻な状況にまで到達しているという事なのかもしれない。

「コンクリートから人へ」の民主党がAIIB参加を主張する不可解

ニカラグアはコスタリカを挟んでパナマの北にある国である。ニカラグアはパナマ運河に対抗して中国系企業(香港ニカラグア運河開発投資:HKND)にニカラグア湖を通り太平洋と大西洋を結ぶニカラグア運河の建設に関する権利を与えた。全長278km(パナマ運河の3.5倍)に及ぶ大規模事業である。産経新聞の記事によると、現地では反対運動が起きているとの事である。

ニカラグア運河事業は、既存の国際機関による融資では実現困難であろう。何より環境審査が大変だ。HKNDは一応、環境調査を実施しているがニカラグア政府が真面目に評価したとは思えない。少なくともADBや世界銀行などの国際基準からすれば、環境調査の結果が審査を通る事はなかっただろう。

このような事業にADBなどが融資するには、住民説明会を実施し民主的な手続きを経る必要がある。また、事業によって移転を余儀無くされる住民への対策が十分である事も証明しなければならない。これは日本が円借款を供与する場合も同じであり、大規模なインフラ整備には長い準備期間と、準備のための十分な資金が必要だ。

発展途上国は、そのインフラ需要を満たすため、先進国や国際機関による融資に期待しているのだが、一方でやたらと時間がかかり、環境問題に加え民主化やら透明性やら腐敗防止など、色々と余計な事を言われるので不満もある。そこに、彗星のように登場したのが希望の赤い星、アジアインフラ投資銀行(AIIB)なのである。

日本の経済界の中でAIIBに参加すべきという意見があるのは、何かと制約の多い先進国の融資と比較して、中国がやれば迅速な融資実行が可能と思っているからであろう。しかし、それは先進国の左派勢力の努力で環境や人権を重視するようになってきたADBや円借款などのあり方を否定する事でもある。

日本共産党は、かつて日本のODAがリベートを通してアジアの独裁国を支援してきたと批判していたが、中国主導のAIIBでそのような事が起きるとは全く想定していないようで、共産党委員長の志井和夫は日本も参加すべきと主張している。

滑稽なのは民主党の岡田代表で、アメリカが参加しなくても日本は参加すべきだと主張している。もちろん、岡田代表だけではなく、民主党の有力な政治家もAIIBに参加したがっているようで、国会の場でもその方向で政府と対峙している。

民主党は「コンクリートから人へ」という立場であるはずだが、今後アジア諸国でコンクリート構造物をどんどん作っていこうというAIIBの主旨に賛同するとは、一体どういう事なのだろう。むしろADBの機能を強化し、初等教育の充実や制度改革、人材育成などソフト面での貢献を主張すべきなのではないのか。

日本のリベラル派は、「インフラ整備による経済成長が貧困を解消する」という理屈を、インフラで大企業が儲けるだけの国民いじめ、として批判してきたのではないか。日本において、どれだけ多くの都市開発プロジェクトがこのような批判を浴びてきたことか。

AIIB参加派の滑稽な主張の一つに、「日本が参加する事で内部から正しいものにしていく」というようなものがある。そもそも中国が主導する組織に日本が入っていって日本の主張が通ると思っていること自体がお花畑の発想であるが、その論法が成立するなら、そう主張する人達は是非とも自民党に入党して、自民党の横暴を内部から止めて欲しいものだ。

「AIIBの融資案件に日本が参加できない」というのもバカな主張の一つで、そもそもインフラ関係で日本企業は価格競争には勝てない。また中国が収集した情報を日本に与えるとも考えられない。

ラジオ自由アジア(RFA)依存のウイグル報道

昨日(5月14日)、各紙でラジオ自由アジアの報道を引用する形で、以下のような報道がなされた。各紙似たようなものだったので、一つだけ掲載する。

中国・新疆で自爆、6人死亡か 検査所攻撃、2百人拘束
【北京共同】米政府系放送局、ラジオ自由アジアは14日までに、中国新疆ウイグル自治区のホータン地区ロプ県で11日夜と12日朝に連続して、同じ安全検査所を狙った自爆攻撃があり、容疑者3人と警察官3人の計6人が死亡したと伝えた。
容疑者は18〜20歳の地元住民。ウイグル族女性のスカーフ着用や、男性のひげなどを規制していた検査所に不満を募らせた可能性があるという。
警察は事件後、容疑者の親族など200人以上を拘束し「計画的かつ組織的な事件」として捜査しているという。
検査所近くには拘置所や病院があるが、一般市民にけが人はなかった。
2015/05/14 11:56 【共同通信】

朝日新聞や毎日新聞は、中国における民族弾圧のニュースは流さないようにしている印象があるが、最近では外国メディアの報道を引用する形で報道しているようだ。今回の報道に関しては、特に偏向という事はなく、淡々とラジオ自由アジアの報道を伝えている。産経新聞も似たようなものであった。

ラジオ自由アジア(Radio Free Asia)というのは、アメリカの対外宣伝のためのラジオ番組で、中国語、広東語、ウイグル語、チベット語、朝鮮語、ベトナム語、ラオス語、クメール語、ビルマ語で放送されている。インターネットニュースもある(www.rfa.org)が、日本語や他のアジア諸国の言語での報道はない。

これだけの言語による報道と、現地での取材力を見ると、情報分野におけるアメリカの国力を見せつけられているようであり、日本の取材能力の貧弱さと対比するとがっかりしてしまう。朝日新聞や毎日新聞ですら、ウイグルやチベットでの報道を流せないというのでは、日本が対中国外交で優位に立つのは難しい。それほど中国の情報統制が中国自身の国益となっているという事であるが、民主国家である日本ではそれに対抗する手段はなく、中国によるメディア操作にやられ放題である。

ウイグル情勢が、アメリカの傀儡放送機関に依存しなければならないというのは困った状況である。たとえ中共の監視下にある報道であったとしても、現地に行って映像を撮り、インタビューをして、現状を伝える勇気ある報道機関は日本には無いのだろうか。それが中共に都合の良い映像であったとしても、そこから真実が見えてくるはずだ。

ところで、BBC経由によるウイグル、チベット報道が少ないは、私の勘違いであろうか。最近の欧州は中共の軍門に降っており、かつて西側陣営として社会主義国の中国における人権批判を強め、対中弱腰の日本メディアとは際立った対称性を見せていたが、最近ではむしろラジオ自由アジアを引用する日本メディアの方がウイグルやチベットに着目しているような感じがする。あくまで個人的な印象なので、プロの判断は違うかもしれない。