安倍政権のインフラ輸出が失敗する理由

インフラ輸出とは、海外のインフラ事業を日本企業が受注し、日本製品の輸出するもので、安倍政権の日本再興戦略でも柱となっている。

日本製品の輸出促進には誰も反対しないので、インフラ輸出が批判されることは殆どなく、インドの高速鉄道を日本が受注したニュースに見られるように、好意的に伝えられている。さすがに原発輸出には反対派の声が伝えられるが、インフラ輸出自体に反対する声は主流ではない。

本来政権を批判する側にある民主党も安倍政権のインフラ輸出を取り上げる事はない。そもそもインフラ輸出を国家戦略の一つとして位置づけたのは民主党政権であったからだ。

さて、本ブログが安倍政権のインフラ輸出に反対である理由を列挙する。

1. 官民の温度差が顕著である

インンフラ輸出に関しては、前のめりの政府に対し、民間は及び腰である。政府の官僚は政権の圧力下で何とか実績を作ろうと必死である。一方、民間は商売になるかどうかが判断基準であり、儲かりそうにない事業には消極的だ。特に近年の企業は確実に儲かる事業にしか進出しない。実績づくりに焦る政府に言われて、渋々協力しているというのが実態である。

2. 資金調達の仕組みが変化している

インフラというものは、伝統的には政府が金を出し、民間企業に発注して整備される。しかし、近年は民間資金による整備手法が広まっており、インフラによる利益を見込んで民間がインフラ事業の主体となる例が増えている。資金調達の仕組みが発達し、高リスクでも投資家を集める事が可能となっているため、税金投入を減らす事が出来るようになっている。単純に円借款で資金を貸しつけて日本製のものを売りつける時代ではないのである。

3. 国際競争が激しく価格競争に勝てない

日本製のシステムが他国のものに対して優れている事は事実であるが、インフラ輸出の市場となっている新興国では費用対効果の面での優位性はない。ヨーロッパ企業に加え中国や韓国も競争に参入しており、日本にインフラの輸出競争力があるとは言えない。これでインフラ輸出を成功させるために日本がしている事は、破格の融資条件の提示だ。

4. インフラ輸出は儲からない

インフラ費用の大半は用地買収や土木工事費であり、日本が期待している日本製品が占める割合は低い。また、受注条件には技術移転が含まれる事が多く、製品は現地生産となるため、国内雇用には貢献しない。

インフラ輸出は、損得勘定ではマイナスである。やがて政権がごり押しして成約した事業の問題が表面化してくるであろう。そのころは安倍首相も引退後であろうが、トップセールスで大車輪の活躍をしている岸田外相にとっては政治家として不利な歴史となっている事であろう。

 

時計の針を30年前に戻した日韓慰安婦合意

慰安婦問題が世に出たのは、今から四半世紀前である。平成3年にはじまる朝日新聞の捏造記事と、河野談話により日本軍が慰安婦を強制連行したとの認識が広まった。初期の慰安婦証言は、日本軍による強制連行ではなく、単なる身売り話であったが、やがて証言内容はグロテスク化し、日本国内ではその真偽について議論が繰り返された。

その結果、慰安婦証言は信憑性に欠け、旧日本軍が強制連行したという証拠は何一つ存在せず、逆に慰安婦は募集であって、しかも高額の給料が支払われてきたという証拠ばかりが登場し、やがて議論は収束した。

例を挙げると、文玉珠は強制連行については客観的資料は出せなかったが、ビルマで預けた巨額の軍事貯金については証拠があった。慰安婦募集の証拠は多数発見されたが、朝鮮人の女性を軍が強制連行したという話については、何一つ客観的証拠が見つかっていないのである。

関連記事: 犯人を誰一人特定出来ない従軍慰安婦問題

何としても旧日本軍を貶めたい左翼ですら、上記の事実は認めつつ、「強制性が問題なのではない」として、慰安所すなわち売春宿の経営自体が女性の人権を犯すものだったという主張に変化していったたのだった。

関連記事: 強制連行の有無こそ従軍慰安婦問題の核心だ

しかし、今回に日韓合意で、これまで日本国内で議論を繰り返し、到着しつつあった共通認識が一挙に破壊され、「20万人の少女が旧日本軍によって強制連行され、性奴隷とされた」という韓国側の主張が国際的に固定してしまう事態となってしまった。

日本側は当然ながら嘘の歴史に対しては反論しなければならないが、「不可逆的」という言葉に縛られ、正論を主張する事すら封じられ、逆に言論弾圧されている。自民党の桜田義孝が「慰安婦は娼婦であった」という歴史的事実の指摘すら抑え込まれてしまったのだ。

早い話が、過去30年間、日本の社会を分断し、人々の心を傷つけながら、右も左もようやく歩み寄って収束してきた問題が、全部水に流れてしまったという事だ。

日韓の間で、この問題が収束するのは束の間である。韓国は日本から経済援助などを引き出したら自由な立場になる。困ったら、また蒸し返す事は、過去の歴史を見れば明きらかだ。そして、また過去30年と同じような歴史戦を繰り返す事になるのである。

関連記事: 嫌韓を再着火させた慰安婦日韓合意

安倍トップセールスは裸の王様

Diamond Onlineに、「豪潜水艦受注レースの障壁となる官民の“温度差”」という記事が掲載されている(1月13日)。タイトルが示す通り、官民の間でオーストラリアの潜水艦受注に向けての情熱が違うという内容だ。

オーストラリア側が、潜水艦は現地生産として国内雇用を増やすべきという姿勢を明確にしてきたため、ドイツとフランスが現地生産を売りに営業を強化し、焦った日本も現地生産を提案している。

しかし、これは日本政府による提案であり、機密情報の塊である そうりゅう型潜水艦のどの部分を技術提供するのか、民間側は全く把握できていないという。「とにかく受注」という官側の姿勢に、製造を担当する民間企業は全く戸惑っている様子だ。

このブログでは、もともと日本の潜水艦の対オーストラリア輸出には反対だったが、今回のDiamond Onlineの記事には本当にあきれてしまった。日本政府がインフラ輸出で犯している間違いを、こんな所でも犯しているのだ。

関連記事: 反日リスク豪州への潜水艦売却はブーメランとして返ってくる

インドネシアのジャカルタ、バンドン間の新幹線輸出でも同じように官側が熱心で、採算性に疑問を持つ民間は冷やかであった。結局この話は中国が受注するという、日本にとっては表面上は悔しいが内面はホッとする所に落ち着いた。もちろん、安倍政権にとってはショックだったろう。しかし、事情を知る者たちには胸を撫で下ろす結末であった。

関連記事: 共産主義者と新興国の参入で傷む資本主義

安倍政権は、トップセールスの成功のため、湯水のように日本の資金を受注のために浪費している。ムンバイ・アーメダバード間インド新幹線はその極地であり、1兆円の資金を、ほぼゼロ金利で50年返済という、金銭感覚が麻痺したとしか思えない条件で与えている。今年貸し付ける1兆円と、50年後に戻ってくる1兆円では価値が全く違うのである。

関連記事: 日中対立を利用する第三国

通常、首相や大統領のトップセールスでは、企業が裏で画策していて、場合によっては多額の資金が政府サイドに流れるという、政治と民間企業の癒着がある場合が多い。しかし安倍政権のトップセールは全く異質のものだ。つまり、政権側が一所懸命に受注を目指し、民間や本当の事を知っている官僚は渋々従っているのである。民間にとっては儲けにならないどころか、国にあれこれ介入されて迷惑なのである。

原発輸出でも同様の現象が起きている。ネット情報だと原発輸出については左翼系の記事ばかりなのでバイアスがかかるが、それでも企業側が及び腰になっているのは確かだろう。東芝は米国で受注した事業が塩漬け状態であり、三菱重工はアメリカで9300億円の賠償を請求されてしまった。政府が笛吹けど、易々とはリスクを引き受ける状況ではないのである。

安倍首相の無理筋トップセールスに腰が引けているのは、民間企業だけではなく、官僚たちもそうであろう。彼等は民間と直接接して情報を入手する事が多く、本当はストップさせたいと思っている事業もあるはずだ。

残念ながら、今の安倍政権には声高に国会デモをするような反対派の存在は知っていても、周囲の物言わぬ紳士たちの意見を聞くことはないようだ。裸の王様になったと言える。

日本の税金による中国植林・緑化の利権団体

前回記事(日本の森林を買い漁る中国の緑化を日本の税金で進める奇怪)の続きである。日中緑化交流基金では、支那大陸で緑化事業を実施している団体に補助金を支出している。これは日本国政府が税金から出した基金である。基金といいながら、これは食い潰し型であり、運用益はない。そして、今回また税金から90億円支出する事になった。

補助金の額は、一つの事業につき2000万円までである。緑化のNGOがもらうには贅沢な額であるが、実際にこの補助金を利用している団体は限定的だ。そして、その中でも目立つのが一般社団法人 海外林業コンサルタンツ協会である。

この協会の会長は林野庁の出身だ。構成企業は、以下の通りである。

  • 一般社団法人 林業機械化協会
  • 一般社団法人 海外産業植林センター
  • 公益財団法人 国際緑化推進センター
  • 一般財団法人 日本緑化センター
  • 朝日航洋株式会社
  • 公益社団法人 国際農林業協働協会(JAICAF)
  • 一般社団法人 国際開発機構(FASiD)

一般社団法人と公益法人で占められているが、それぞれの法人の下には林業関連の団体が会員となっており、おそらく日本の林業関連はこの集団で牛耳られているのだろう。もちろん、個々の企業や団体を悪く言うつもりはない。

ただ、支那大陸における植林を通した人材交流で、日本の森林の情報が中国共産党に伝わる効果に貢献しているとは言えるだろう。そして中共の息のかかった中国企業が日本の森林を買収するのだ。

さて、一般社団法人 海外林業コンサルタンツ協会は、日中緑化交流基金の補助金を受けて多数の活動をしている。幸い、そのWebページに実績が記載されていたので、以下にまとめてみた。

事業名称 時期
中国寧夏回族自治区青少年教育・普及治砂防護林造成 2001-2003, 2006
中国河北省住民参加治砂防風林造成 2003 -2005
中国河北省漕河上流水土保持林造成 2007-2013
中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成 2005-2011
中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成(保育、育苗、普及) 2011-2013
中国新疆トルパン黄砂抑制生活環境保全林造成 2006-2009
中国新疆吐魯番黄砂防止林造成計画 2009-2013
中国陝西省靖辺覆砂黄土地生態林造成 2007-2010
タクラマカン砂漠周辺ゴビ砂漠地における生態環境モデル林造成 2011-2013

これを見ると、毎年別々の場所で植林を実施しているのではなく、ある所での事業を数年にわたって継続している事がわかる。例えば、「中国新疆北部砂漠化地域生活環境モデル林造成」なるものは、6年間継続し、その後は(保育、育苗、普及)という括弧を追加した事業を継続している。一件あたり2000万円とすると、この事業にはこれまで2億円が我々の税金から使われた事になる。

補助事業では上限まで使い切ることはないから、毎回2000万円という事はない。領収書を紛失するとか、安い航空会社を使うとか、そういう事があるから申請の時よりは安くなる。だから、上記で計算した2億円よりも実際は少ないだろうが、問題の本質ではない。多額の税金が、この社団法人の活動継続に投入されているという事実だ。

普通に考えると、この補助金は苗木と現地の人件費そして航空運賃が主たる内容と想像できるが、その実態は、残念ながら私には分からない。ただ、現地で購入した苗木と、現地で作業した労働者の人件費の領収書が信用できるものであるとは、とても思えない。

対中国ODAが国民の理解を得られないなか、その抜け道として利用されているのが日中緑化交流基金である。円借款と比較すれば金額は小さいが、一応返済義務のある円借款とは違い、中国側には返済の義務はない。当然ながら感謝の義務もない。利権の継続と日本における親中派人脈の形成に利用されているのが実態なのである。

 

論理的に骨抜き確実な日韓慰安婦合意

1月12日の国会で、安倍首相から驚きの発言があった。ソウル大使館前の慰安婦像は「移転されると理解している」と言ったのだ。「撤去」ではない。「移転」だ。

大使館前から、隣の敷地の前に移すのも移転だ。街区を挟んで別の通りに移すのも移転だ。そんな事が大袈裟な日韓合意の成果なのか。政府の頭は大丈夫なのだろうか。

慰安婦像は単なる金ピカの奇妙な像ではない。像に付随する銘文が問題なのだ。日本を貶めるために捏造された嘘の物語が銘打たれているのである。慰安婦像が残る限り、慰安婦捏造話は常に蒸し返されている。

今回の合意は論理的に破綻している。歴史的な出来事に「蒸し返さない」ことなど絶対に有り得ないからだ。少し考えれば分かる事だ。アメリカ大統領が広島・長崎の原爆投下を謝罪したら、原爆ドームと平和の像は撤去するのか。教科書から原爆投下の歴史を抹殺するのか。もちろん、出来るはずがない。歴史は後世に伝えていくものだからだ。

関連記事: 歴史の転換期の大きなミス。靖国参拝も不可能に

韓国人が慰安婦の捏造話を信じている限り、政府間合意とは関係なく、嘘の歴史で日本人を攻撃するのを止める事はあり得ない。慰安婦問題で苦しんでいるのは一般の日本人だ。政府間合意で外務省の役人は楽になったかもしれないが、国民の苦悩は続くのである。

この問題を終らせるには、韓国や反日左翼の捏造話を根気強く否定し続ける事だ。「旧日本軍が20万人の少女が性奴隷にした」という事実無根の捏造話を徹底的に否定し続ける以外に解決する方法はないのである。

関連記事: 嫌韓を再着火させた慰安婦日韓合意

戦後の日韓外交では、韓国側が実利を得た後に裏切るという事を繰り返してきた。今回の日韓合意も全く同じであり、日韓スワップ再開をはじめ、日本側から合意の果実を取れるだけ取った後に、難癖つけて破棄するであろう。

関連記事: 政府は慰安婦日韓合意の果実を示せ